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半端エルフ

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人で賑わう朝の市場。
幼い頃から母、ルリコに手を引かれて連れてこられた市場だ。
だから、ここに店を出す人達は、大抵顔見知りだ。

「あら、シェナ!!どっかにお出かけかい?」
「おはよう、おばさん。ちょっとギルドに用事」
「おう!シェナ、また今度、畑仕事手伝ってくれよ」
「今度ね」
「シェナちゃん。焼きたてのパンがあるんだけど、どうだい?」
「ありがとう、おじさん。用事が済んだら寄らせもらうよ」

買い物がてら市場を通ると、市場で店を出している、おばさんやおじさんがシェナに声をかけてくる。

ギルド『龍の宿り木』の前に着く。
だが、ギルドから出て来た人達の何人かは、シェナを見て訝しむような顔をする。
気にしないフリをしてギルドに入ると、何人かの若者がシェナを見て訝しむような顔をする。
こっちを見ては周りとヒソヒソ話し。
あまり気分の良いものではない。

「おい、半端エルフだ」
「ギルド辞めんじゃなかったのか」

と、言うか、ヒソヒソ話し聞こえているんですけど。
『半端エルフ』
その言葉がシェナの耳に届く。
強い魔力を持つはずのエルフの血を引きながら、並の魔力しかない中途半端なエルフ。
シェナを軽蔑するあだ名だ。

「いや、確か、パーティーで問題を起こしてギルドも辞めさせられそうになったのを、ギルドに泣き寝入りしたらしいぜ?」
「え、マジで?」
「らしいぜ?マリリちゃんがそう言っていたぜ」

また、あの受付嬢か。
しかも、随分話しがねじ曲がっている。
身の周りを整える為に2日ギルドに顔を出さなかったのが不味かったみたいだ。
市場ではそんなに変わった様子は無かったが、ギルド内でのシェナの視線が大分変わっている。
特にギルドに入って間もない新入りからの、蔑みや見下すような目でシェナを見ている。

まぁ、Aランクのパーティーに所属する前から、母親繋がりでギルドマスターやギルドの古株であるアーシアさんやロベルトさんやエマさんに何かと可愛がられている自分を面白く思わない輩も少なくは無かった。

だから、無視するか。
蔑みや妬みの目は不本意ながら慣れている。
こっちに直接的な被害は今のところは無い。
 ギルドマスターが帰って来るまでの辛抱だと、割り切る。
ヒソヒソ話しと視線を無視して、受付に向かう。

「あれぇ?なんでここに居るんですかぁ?」

受付を陣取る受付嬢マリリ。

「・・・・・」

日、改めようかな。
思わず遠い目をしてしまうシェナだった。
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