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今日の用事
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「シェナちゃんのゴハンとっても美味しいわ」
「ありがとうございます」
幸せそうに、『パンケーキ』を頬張るココロ。
「ふんわりして、もっちりして『シルクビー』の蜂蜜がよく合うわ」
「『シルクビー』の蜂蜜がとても質がいいですから」
小瓶からキラキラ輝く蜂蜜をスプーンで掬い『パンケーキ』に垂らす。
魔蟲『シルクビー』
森や林、野原などの花畑に生息する蟲型モンスター。
だが、性格は大人しく、よっぽど危害を加えようとしない限り、攻撃してくることは無い魔蟲だ。
また、『シルクビー』が作る蜂蜜は花によって味が異なり、花によって上質なものが採れる。
『梟屋』の裏手にココロさんが丹精込めて育てた花畑があり、そこで『シルクビー』を養蜂している。
他にも、家庭菜園で採れる野菜に上質なミルクを出してくれる牛山羊。
『梟屋』の夫婦は副収入として、蜂蜜や野菜ミルクを市場に卸しているらしい。
しかし、ココロさんもそうだが、ゼノンさんも『パンケーキ』を気に入ってくれたようだった。
シェナはチラリとゼノンの方を見る。
相変わらず、無愛想で威圧感があるのに、
「・・・・」
蜂蜜たっぷりかけた二枚目の『パンケーキ』を頬張り、少し目尻を下げ、
「・・・・フッ」
幸せそうに笑う。
ココロさんが言うには意外にも甘いもの好きだそうだ。
なんだか、無愛想で威圧感半端無い初老の男性が『パンケーキ』を幸せそう食べているのを見ると妙にムズムズするな。
食事を終えお茶を飲み、食べ終わった食器を片付けようとすると、ココロさんが洗い物を引き受けてくれたので、お礼を言い部屋に戻り、今日の準備をする。
今日はポーションの材料とアイテムを探しに森に入る。
そろそろ、生活費を稼がないと。
パーティーを抜けた時持っていた銀貨3枚の内2枚は入居金に残りの銀貨1枚は服や必需品の購入に使ってしまった為、ただ今シェナは金欠状態だ。
なので森でポーションの材料とアイテムを探しに行く事に。
服を部屋着から動きやすい服装に着替える。
頭には青いターバンを巻き、両手には戦闘用のグローブをはめる。
ベッドの上に置いてある肩掛けの鞄を肩にかけ、鞄の中を確認する。
ギルドの証明書と銅貨数枚入った財布。ナイフと小鍋。最低限の調味料一通り。小さな皿とフォーク。毛布1枚。レシピ本は一冊だけ持っていこう。
森に入る最低限の準備は出来た。
食料は森に入って何か狩ろう。
火や水は魔法で出せるから大丈夫。
「やっぱ、一人身だと準備が楽だね」
パーティーに所属していた頃は、雑用係だからと言って、パーティーメンバーの武器や予備の装備。食料に食器や調理器具。着替えの服。簡易テント。更には筋トレ道具や研究道具やら化粧品やら餌やら。
本当に要るのかと聞きたくなるくらいの荷物の荷物持ちをさせた。
それに比べたら、シェナの装備は随分軽装だ。
忘れ物がないか確認して、部屋を出て、鍵をかける。
外出する時は部屋の鍵を管理人に預けるのが決まり。
玄関に向かうと、丁度洗い物を終えたココロさんに声をかける。
「ココロさん。外出するので、鍵をお願いします」
「あら、シェナちゃん。今日は何処かにお出かけ?」
「はい。今日はポーションの材料を採取に『ネルの森』に行くつもりです」
「森に行くの?帰り遅くなりそう?」
「はい。月花の花を採りに行くので森で一晩過ごします」
「あらあら、大丈夫?危なくない?」
「野宿は慣れてますから。それに、『ネルの森』は何度も入っていますから」
「そう?ならいいけど」
まだ少し心配そうな顔をするココロさん。
「じゃあ、行ってきます」
「待ちなさい」
「ふえ?」
ココロさんに背を向け、出掛けようとしたら、ー突然、背後から声を掛けられる。
振り向くと、ゼノンさんが立っていた。
「これを持って行きなさい」
そう言って、シェナに何かを差し出す。
それは、手の平サイズの球体型の銀網細工だった。
銀色の細かい植物の蔦の様な網細工は美しく、上部に茶色の革製紐が付いている。
中心から上下に開く様になっているのか中心には緑の石で出来た小さな錠が付いている。
銀網細工の中に何かいる。
よく見ると、白い体の蜂、魔蟲『シルクビー』だ。
「ゼノンさん、これって?」
「うちで世話している『シルクビー』だ。『シルクビー』には帰省本能がある。何かあった時にその『シルクビー』を放てば、『梟屋』まで戻ってくる」
「え、でも」
「持って行きなさい。何かあった時の連絡手段だ」
そう言って ゼノンは戸惑うシェナの手を取り銀網細工をシェナの手に乗せる。
ソレを見てココロがクスクス笑い出す。
「もう、ゼノンたら、心配なら心配って言えばいいのに」
「・・・・・」
ココロさんから言われてゼノンさんの顔が微かに赤く染まる。
「・・・・美味い食事の礼だ」
ボソリと小さく呟いた声がシェナの耳に届いた。
ぶっきらぼうな口調だが、ゼノンの心遣いと優しさがじんわり伝わってくる。
シェナは少し迷って、受け取った銀網細工の紐を鞄の肩掛け紐に結び付ける。
肩掛け紐に付けた丸い銀網細工はちょっとしたアクセサリーに見える。
「ありがとうございます。ゼノンさん」
「・・・・ああ」
「うふふ、似合うわよ。シェナちゃん」
素直にお礼を言うシェナと無愛想だが照れ臭そうに顔をそらすゼノン。それを微笑ましそうに見て笑うココロだった。
「じゃあ、改めて、行ってきます」
「気をつけてね」
「・・・・・」
笑顔のココロと無愛想なゼノンに見送られ、シェナは『梟屋』の扉をあけた。
少し肌寒いが、日差しは暖かく、空は快晴。
シェナは鞄を肩にかけ直し、まずはギルドに向かう。
「ありがとうございます」
幸せそうに、『パンケーキ』を頬張るココロ。
「ふんわりして、もっちりして『シルクビー』の蜂蜜がよく合うわ」
「『シルクビー』の蜂蜜がとても質がいいですから」
小瓶からキラキラ輝く蜂蜜をスプーンで掬い『パンケーキ』に垂らす。
魔蟲『シルクビー』
森や林、野原などの花畑に生息する蟲型モンスター。
だが、性格は大人しく、よっぽど危害を加えようとしない限り、攻撃してくることは無い魔蟲だ。
また、『シルクビー』が作る蜂蜜は花によって味が異なり、花によって上質なものが採れる。
『梟屋』の裏手にココロさんが丹精込めて育てた花畑があり、そこで『シルクビー』を養蜂している。
他にも、家庭菜園で採れる野菜に上質なミルクを出してくれる牛山羊。
『梟屋』の夫婦は副収入として、蜂蜜や野菜ミルクを市場に卸しているらしい。
しかし、ココロさんもそうだが、ゼノンさんも『パンケーキ』を気に入ってくれたようだった。
シェナはチラリとゼノンの方を見る。
相変わらず、無愛想で威圧感があるのに、
「・・・・」
蜂蜜たっぷりかけた二枚目の『パンケーキ』を頬張り、少し目尻を下げ、
「・・・・フッ」
幸せそうに笑う。
ココロさんが言うには意外にも甘いもの好きだそうだ。
なんだか、無愛想で威圧感半端無い初老の男性が『パンケーキ』を幸せそう食べているのを見ると妙にムズムズするな。
食事を終えお茶を飲み、食べ終わった食器を片付けようとすると、ココロさんが洗い物を引き受けてくれたので、お礼を言い部屋に戻り、今日の準備をする。
今日はポーションの材料とアイテムを探しに森に入る。
そろそろ、生活費を稼がないと。
パーティーを抜けた時持っていた銀貨3枚の内2枚は入居金に残りの銀貨1枚は服や必需品の購入に使ってしまった為、ただ今シェナは金欠状態だ。
なので森でポーションの材料とアイテムを探しに行く事に。
服を部屋着から動きやすい服装に着替える。
頭には青いターバンを巻き、両手には戦闘用のグローブをはめる。
ベッドの上に置いてある肩掛けの鞄を肩にかけ、鞄の中を確認する。
ギルドの証明書と銅貨数枚入った財布。ナイフと小鍋。最低限の調味料一通り。小さな皿とフォーク。毛布1枚。レシピ本は一冊だけ持っていこう。
森に入る最低限の準備は出来た。
食料は森に入って何か狩ろう。
火や水は魔法で出せるから大丈夫。
「やっぱ、一人身だと準備が楽だね」
パーティーに所属していた頃は、雑用係だからと言って、パーティーメンバーの武器や予備の装備。食料に食器や調理器具。着替えの服。簡易テント。更には筋トレ道具や研究道具やら化粧品やら餌やら。
本当に要るのかと聞きたくなるくらいの荷物の荷物持ちをさせた。
それに比べたら、シェナの装備は随分軽装だ。
忘れ物がないか確認して、部屋を出て、鍵をかける。
外出する時は部屋の鍵を管理人に預けるのが決まり。
玄関に向かうと、丁度洗い物を終えたココロさんに声をかける。
「ココロさん。外出するので、鍵をお願いします」
「あら、シェナちゃん。今日は何処かにお出かけ?」
「はい。今日はポーションの材料を採取に『ネルの森』に行くつもりです」
「森に行くの?帰り遅くなりそう?」
「はい。月花の花を採りに行くので森で一晩過ごします」
「あらあら、大丈夫?危なくない?」
「野宿は慣れてますから。それに、『ネルの森』は何度も入っていますから」
「そう?ならいいけど」
まだ少し心配そうな顔をするココロさん。
「じゃあ、行ってきます」
「待ちなさい」
「ふえ?」
ココロさんに背を向け、出掛けようとしたら、ー突然、背後から声を掛けられる。
振り向くと、ゼノンさんが立っていた。
「これを持って行きなさい」
そう言って、シェナに何かを差し出す。
それは、手の平サイズの球体型の銀網細工だった。
銀色の細かい植物の蔦の様な網細工は美しく、上部に茶色の革製紐が付いている。
中心から上下に開く様になっているのか中心には緑の石で出来た小さな錠が付いている。
銀網細工の中に何かいる。
よく見ると、白い体の蜂、魔蟲『シルクビー』だ。
「ゼノンさん、これって?」
「うちで世話している『シルクビー』だ。『シルクビー』には帰省本能がある。何かあった時にその『シルクビー』を放てば、『梟屋』まで戻ってくる」
「え、でも」
「持って行きなさい。何かあった時の連絡手段だ」
そう言って ゼノンは戸惑うシェナの手を取り銀網細工をシェナの手に乗せる。
ソレを見てココロがクスクス笑い出す。
「もう、ゼノンたら、心配なら心配って言えばいいのに」
「・・・・・」
ココロさんから言われてゼノンさんの顔が微かに赤く染まる。
「・・・・美味い食事の礼だ」
ボソリと小さく呟いた声がシェナの耳に届いた。
ぶっきらぼうな口調だが、ゼノンの心遣いと優しさがじんわり伝わってくる。
シェナは少し迷って、受け取った銀網細工の紐を鞄の肩掛け紐に結び付ける。
肩掛け紐に付けた丸い銀網細工はちょっとしたアクセサリーに見える。
「ありがとうございます。ゼノンさん」
「・・・・ああ」
「うふふ、似合うわよ。シェナちゃん」
素直にお礼を言うシェナと無愛想だが照れ臭そうに顔をそらすゼノン。それを微笑ましそうに見て笑うココロだった。
「じゃあ、改めて、行ってきます」
「気をつけてね」
「・・・・・」
笑顔のココロと無愛想なゼノンに見送られ、シェナは『梟屋』の扉をあけた。
少し肌寒いが、日差しは暖かく、空は快晴。
シェナは鞄を肩にかけ直し、まずはギルドに向かう。
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