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『梟屋』の朝食

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台所を出て、食卓のある隣のリビングに向かうシェナとココロ。

「ゼノン。朝ゴハンできましたよ」

大きな窓から朝日の光が満ちるリビング。その中で、無愛想なゼノンがせっせとテーブルセッティングしていた。

「・・・・ああ」

ピンクの花が活けられた可愛らしい花瓶を両手で持ったゼノンが妙にミスマッチしてシェナとココロは笑ってしまった。

「ふふふ、さぁ、朝ゴハンにしましょう」

セッティングされたテーブルの上にナイフとフォーク。瑞々しい葉野菜のサラダと白くトロッとしたスープ。まだ湯気が立ち上る『パンケーキ』。バターを分けた小皿。
そして、朝日を受けて黄金色に輝く小瓶、『梟屋』で養蜂した魔蟲『シルクビー』の蜂蜜を3つ。
飲み物のお茶をカップに注ぐ。
ゼノン、ココロ、そしてシェナは席に着き手を胸の前であわせる。

「我の糧になる尊き命よ  命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」

食材に対する感謝の祈りを捧げる。

「いただきます」
 
各々に目の前の食事に手を付けていく。

最初はスープから。
スープを入れたマグカップはまだ温かく、スプーンでゆっくりかき混ぜると、湯気と共に小さな角切りにされた白、オレンジ、黄色の野菜が顔を出す。
スプーンで野菜と共に口に入れる。
トロッとしたスープは野菜の甘みが優しい。
小さな角切りにされた野菜はよく煮込まれている。
口の中でホロリと溶けるモノも有れば、サクっとした歯触りのモノ。プチプチとした食感で噛むと甘味を感じるモノ。
口の中で様々な食感が楽しめる。
一通り食感を楽しんで飲み込んだら、温かいスープが喉を伝い、お腹の中を暖かくする。

次はお待ちかねの『パンケーキ』。
温かい『パンケーキ』にフォークを当てるとパフンと軽い弾力でフォークを押し返す。
軽い感触で難なく入るナイフとフォークで切り分け、『パンケーキ』の断面をみる。
きめ細かで、まるで雲のよう。
一口サイズに切り分け、『シルクビー』の蜂蜜をかけ、バターを乗せる。
ふんわりとした生地にキラキラとした蜂蜜の照り。そして、『パンケーキ』の温かさでトロリと溶け出す作りたてのバター。
フォークで持ち上げた時、蜂蜜が垂れ落ちる前に口の中に入れる。
ふんわりとして、少しもちっとした食感。
『シルクビー』の蜂蜜のクセが無くスッキリとした強い甘味。
蜂蜜だけでは甘過ぎるように思うが、バターの塩っ気とまろやかさが味を引き締めている。
今度は、蜂蜜を少し浸して食べてみる。
ふんわりとした生地が蜂蜜を吸ってしっとり、もっちりとした食感に。
だが、少し口の中が甘くなってきたかな?

そう思って今度はサラダに手を伸ばす。
今朝採れたばかりの鮮やかな緑色の葉野菜と赤い小粒の野菜。
食べやすい大きさにカットされ、上に何かがかけられている。
食べると、瑞々しい葉野菜は生特有の青臭さを全く感じない。
シャキシャキっとした歯触りが気持ちいい。
そして、上にかけられているものは、酸味を感じる。
だが、強い酸味では無く、爽やかで少しピリっと刺激的で、サラダがいくらでも食べられる気がする。

「ああ、美味しい」
ココロは右手を頬に当て幸せそうに呟いた。
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