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みんなで食べる夜食
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シェナは料理が好きだ。
それはシェナの母ルリコの影響だった。
シェナが5歳の時に夫を亡くしそれから女手一つでシェナを育てたルリコは料理上手で、幼いシェナに色んな料理を作り食べさせてくれ。
シェナは料理をするルリコの背中を見て育った。美味しい料理を作る母の笑顔がシェナは好きだった。
ロベルトが部屋のドアを開けると、アーシアとエマが飲み物を用意したりテーブルの上を片付けていた。
「ん?あ!!来た!」
料理を運んで来たシェナとロベルトに気付いたアーシアは自慢の鼻に『ブシ』の香りが届く。
「いい匂い!!」
待ちきれないとばかりに尻尾を振るアーシア。
「お待たせしました」
アーシアとエマとロベルトが席に着き早速料理をテーブルの上に並べていく。
大きな底の深い器に盛られた麺料理。
立ち上る『ブシ』の香り。少し太めで真っ白な麺に黄金色スープ。
その上には煮られてしんなりした油揚げに最後に割り入れた卵はスープの熱で白身が半熟状態に。
上に散らされた香草の深緑が彩りを添えている。
小皿に盛られた和えものは『ブシ』の茶色に葉物野菜の緑が映える。
「シェナ!これって」
料理を見て興奮気味になるアーシアさん。
「はい。キツネ月見うどんと『ブシ』と葉野菜の和え物です」
「キツネうどん!!!」
「アーシア、油揚げ好きですものね」
可笑しそうに言うエマにアーシアはキツネ月見うどんを見つめながら大きく何度も頷く。
尻尾がバフバフと振りまくる。
よっぽど嬉しいんだろうけど、このままだと埃が立ちそう。
「アーシアさん、嬉しいのは分かりますけど、いい加減に尻尾押さえないとアーシアさんの油揚げ取り上げますよ」
シェナのその言葉にアーシアはぴたりと尻尾を止める。
それを見てシェナも席に着く。
そして、誰が言うでもなく手を胸の前で合わせ暫しの沈黙。
「我の糧になる尊き命よ 命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」
食材に対しての感謝の祈りを捧げる。
「それでは、頂きましょう」
ロベルトの言葉を皮切りに4人それぞれに箸やフォークに手を伸ばす。
まずは麺から。箸でそっと持ち上げるとふわりと『ブシ』の香りが際立つ。
まだ湯気が立つほど熱い麺をふぅ、ふぅと少し息で冷まし口に入れ麺を啜る。
薄味な『ブシ』の味と共にツルツルとした口当たり。スープで柔らかくなった麺は少しもっちりとした食感。数回噛んでつるんとした喉越しで喉の奥に入ってしまう。
次に油揚げ。
『ブシ』スープと共に調味料で煮込まれた油揚げはしっとりとしている。油揚げに齧り付くと少し濃い汁が染み染み。噛みちぎると甘辛い味がジュワリと染み出し広がる。
時折、器ごと持ち上げスープを飲む。元々薄味だったスープに油揚げの甘辛い味が加わっている。『ブシ』の味に中に微かにピリリとした辛味がスープの味を引き締めている。
半分ほど麺を食べ進めると、今度は卵。真ん丸の黄身をプツリと箸で割るとトロリとした黄身がスープに溶け出す。
トロリとした黄身と半熟プルプルの白身を麺に絡める。白い麺に黄身の黄色が映える。
食べると卵が薄味だったスープをまろやかにする。少し濃い油揚げ。薄味のスープ。
卵、麺と合わせて食べるのと薄味のスープが丁度いい塩梅になる。
小皿に盛られた和え物にも箸を伸ばす。
『ブシ』の濃い味と香り、葉物野菜のシャキっとした歯ざわりと微かな苦味がとても合っている。
「うん。美味しい」
至福のため息交じりに満足そうにシェナが呟いた。
それはシェナの母ルリコの影響だった。
シェナが5歳の時に夫を亡くしそれから女手一つでシェナを育てたルリコは料理上手で、幼いシェナに色んな料理を作り食べさせてくれ。
シェナは料理をするルリコの背中を見て育った。美味しい料理を作る母の笑顔がシェナは好きだった。
ロベルトが部屋のドアを開けると、アーシアとエマが飲み物を用意したりテーブルの上を片付けていた。
「ん?あ!!来た!」
料理を運んで来たシェナとロベルトに気付いたアーシアは自慢の鼻に『ブシ』の香りが届く。
「いい匂い!!」
待ちきれないとばかりに尻尾を振るアーシア。
「お待たせしました」
アーシアとエマとロベルトが席に着き早速料理をテーブルの上に並べていく。
大きな底の深い器に盛られた麺料理。
立ち上る『ブシ』の香り。少し太めで真っ白な麺に黄金色スープ。
その上には煮られてしんなりした油揚げに最後に割り入れた卵はスープの熱で白身が半熟状態に。
上に散らされた香草の深緑が彩りを添えている。
小皿に盛られた和えものは『ブシ』の茶色に葉物野菜の緑が映える。
「シェナ!これって」
料理を見て興奮気味になるアーシアさん。
「はい。キツネ月見うどんと『ブシ』と葉野菜の和え物です」
「キツネうどん!!!」
「アーシア、油揚げ好きですものね」
可笑しそうに言うエマにアーシアはキツネ月見うどんを見つめながら大きく何度も頷く。
尻尾がバフバフと振りまくる。
よっぽど嬉しいんだろうけど、このままだと埃が立ちそう。
「アーシアさん、嬉しいのは分かりますけど、いい加減に尻尾押さえないとアーシアさんの油揚げ取り上げますよ」
シェナのその言葉にアーシアはぴたりと尻尾を止める。
それを見てシェナも席に着く。
そして、誰が言うでもなく手を胸の前で合わせ暫しの沈黙。
「我の糧になる尊き命よ 命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」
食材に対しての感謝の祈りを捧げる。
「それでは、頂きましょう」
ロベルトの言葉を皮切りに4人それぞれに箸やフォークに手を伸ばす。
まずは麺から。箸でそっと持ち上げるとふわりと『ブシ』の香りが際立つ。
まだ湯気が立つほど熱い麺をふぅ、ふぅと少し息で冷まし口に入れ麺を啜る。
薄味な『ブシ』の味と共にツルツルとした口当たり。スープで柔らかくなった麺は少しもっちりとした食感。数回噛んでつるんとした喉越しで喉の奥に入ってしまう。
次に油揚げ。
『ブシ』スープと共に調味料で煮込まれた油揚げはしっとりとしている。油揚げに齧り付くと少し濃い汁が染み染み。噛みちぎると甘辛い味がジュワリと染み出し広がる。
時折、器ごと持ち上げスープを飲む。元々薄味だったスープに油揚げの甘辛い味が加わっている。『ブシ』の味に中に微かにピリリとした辛味がスープの味を引き締めている。
半分ほど麺を食べ進めると、今度は卵。真ん丸の黄身をプツリと箸で割るとトロリとした黄身がスープに溶け出す。
トロリとした黄身と半熟プルプルの白身を麺に絡める。白い麺に黄身の黄色が映える。
食べると卵が薄味だったスープをまろやかにする。少し濃い油揚げ。薄味のスープ。
卵、麺と合わせて食べるのと薄味のスープが丁度いい塩梅になる。
小皿に盛られた和え物にも箸を伸ばす。
『ブシ』の濃い味と香り、葉物野菜のシャキっとした歯ざわりと微かな苦味がとても合っている。
「うん。美味しい」
至福のため息交じりに満足そうにシェナが呟いた。
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