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マルシュス公爵
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不敵な笑みを浮かべ、マルシュス公爵は語り出した。
「実は、今ライド商会で手掛けているブランド肉の事業、アレを是非我がマルシュス公爵家にも欲しいのですよ。出来れば、その利権そのものを」
「それはそれは」
予想通りの答えだった。
マルシュス公爵が収める領地もワイルドピッグの被害が大きい。
今までは狩猟で数を減らして来たが、ワイルドピッグの数が増え、人件費やコストが例年増加。
しかも狩ったワイルドピッグは身が固く匂いもキツい。とても売り物にはならない代物。
そんな悩みの種の一つだったワイルドピッグが今回、ライド商会がブランド肉として売り出した。
それを見て、マルシュス公爵は黙って見ていられなかったのだろう。
「ですが、公爵家の娘である私を攫ってもあまり意味が無いのでは?」
「またまたご謙遜を。あのブランド肉の事業の発端者はロザリア嬢、貴女だというのは周知の事実。
それ程の商才が貴女にはある。是が非にでも我がマルシュス公爵家に嫁に来てもらいたいのです。我がマルシュス公爵家の繁栄の為に」
「そこまで言われるといっそのこと清々しいですわ」
不敵な笑みを浮かべるマルシュス公爵に対しクスクスと楽しそうに笑うロザリア。
「先程も言った様にアークライド公爵家には貴女が前夫と離縁してから何度も結婚の申し出をしているのだが、一度、『不可』と言う返事が来てから、それ以降一向に返事がこないものでね。貴女のお父上もなかなか頑固なお人だ」
マルシュス公爵はため息をつきやれやれとわざとらしく首を振る。
「・・・・・そう言えば、」
その時、ロザリアがふと話し出す。
「マルシュス公爵は昔、若い頃の私のお母様に惚れ込みかなり強引に結婚を迫り、当時婚約者だったお父様に物理的に返り討ちにあった、と聞いた事がありますけど、もしかして、それが関係しているのでは?」
「ッッ、な、なんの、事で??」
ロザリアがふと思い出したかの様に話した内容にあからさまに同様の顔色を見せるマルシュス公爵。
「もしかして、若い頃のお母様とよく似た私を御子息の嫁にし、手元に置く事が目的ですか?そして、あわよくば、ライド商会のような商才をマルシュス公爵家が営む事業で大いに貢献させようと、そういう事でしょうか?」
「ッッ、」
「それとも、私がマルシュス公爵家に嫁いだ事で、アークライド公爵家の後ろ盾を得て、嫁の生家だという事を理由にライド商会の事業の利権や利益を横流しさせるつもりでしょか?」
「ぅぅぅ・・・・・、」
ロザリアの言葉に側から見ても分かるくらいに動揺を隠しきれていないマルシュス公爵。
この様子だと私が言った事はほぼ全部当てはまってしまったのだろう。
「生憎、私は私の為に仕事をするのが好きなので、強制的に仕事をやらされるのは嫌いです」
子供の様に頬を膨らませ、不愉快だとばかりにキッパリと言い放つロザリア。
「それに、貴方方の考えは、あからさまにお粗末です」
「何??」
不機嫌そうなロザリアの言葉に、マルシュス公爵の顔が険しくなる。
「誘拐も事も、御子息との結婚の事も、私がマルシュス公爵家に嫁げば事業が発展するという考えの全てが浅はかだと申しているのです」
後ろ手で縛られているにも関わらず、背筋を伸ばし4人の男をまっすぐ見据える。
「少なくとも、この事は、私の両親が許さない事でしょ。きっと、アークライド公爵家、そしてライド商会の総力を上げてこの事件の真相を探り出します。私も身に起きたことは包み隠さず証言します。そうなれば、いくら公爵の爵位を持つマルシュス公爵でもタダではすみません」
目の前でソファに座っている公爵令嬢は明らかに不利な状況のはずなのに、それを思わせないほど堂々としている。
「これ以上罪を重ねない為にも、私の身柄の即時解放と貴方達の自首をおすすめします」
「ッ、・・・・・、」
「・・・・・公爵様、」
そんなロザリアの姿を見て、手下の男達が不安気にマルシュス公爵の様子を伺う。
だが、
「ククク、フハハハハ!!!!!」
何故かマルシュス公爵はいきなり大声で笑い出した。
「ち、父上??」
いきなり笑い出した自分の父親にフィリップと手下の男が思わず慄く。
「顔だけでは無く、気の強さもアイリスに似ているのだな」
お母様の名を出しニヤリと舐める様な視線に、背筋にぞわりと悪寒が走る。
「悪いが、貴女をご両親の元へ帰すつもりは無い」
「・・・・・どう言う事ですか」
「貴女には、身一つで我が家に来て貰う。拒否権はもちろん貴女には無い・・・・・・・。おい、やれ」
「し、しかし、」
マルシュス公爵が手下の男に指示を出すが、男は不貞行為からの不安なのか罪悪感なのか、指示を受けるのを躊躇する。
「いいから、やれ!!」
「ッ、はい」
「・・・・・、はい」
主人に一喝され、手下の男達はズボンのポケットから小型のナイフを取り出す。
そして、そのままソファに座っているロザリアに近づく。
「・・・・ご自身が、非道徳的な行いをしていると承知の上で?」
「ッ、」
「・・・・・・・・」
ロザリアが手下の男の目を見て言うが、男達は気まずそうに視線を逸らし、2人がかりでロザリアの体をソファに押し付ける。
そして、持っているナイフで、
ビ、ジィィィィィ!!!!
ロザリアのオアシスカラーのドレスの裾を大きく引き裂いた。
「ッ!、」
引き裂かれたドレスの裾からロザリアの白くて滑まかしい脚が太腿まで露わになった。
その光景を見て手下の男達は思わず息を呑んだ。
「どんなに気丈な女でも、恐怖で支配すれば従順になると言うものだ。男と言う恐怖をな、」
「最低、ですね」
「褒め言葉だと受け取っておこう」
ロザリアの軽蔑の言葉にマルシュス公爵はクククと愉快そうに笑う。
「実は、今ライド商会で手掛けているブランド肉の事業、アレを是非我がマルシュス公爵家にも欲しいのですよ。出来れば、その利権そのものを」
「それはそれは」
予想通りの答えだった。
マルシュス公爵が収める領地もワイルドピッグの被害が大きい。
今までは狩猟で数を減らして来たが、ワイルドピッグの数が増え、人件費やコストが例年増加。
しかも狩ったワイルドピッグは身が固く匂いもキツい。とても売り物にはならない代物。
そんな悩みの種の一つだったワイルドピッグが今回、ライド商会がブランド肉として売り出した。
それを見て、マルシュス公爵は黙って見ていられなかったのだろう。
「ですが、公爵家の娘である私を攫ってもあまり意味が無いのでは?」
「またまたご謙遜を。あのブランド肉の事業の発端者はロザリア嬢、貴女だというのは周知の事実。
それ程の商才が貴女にはある。是が非にでも我がマルシュス公爵家に嫁に来てもらいたいのです。我がマルシュス公爵家の繁栄の為に」
「そこまで言われるといっそのこと清々しいですわ」
不敵な笑みを浮かべるマルシュス公爵に対しクスクスと楽しそうに笑うロザリア。
「先程も言った様にアークライド公爵家には貴女が前夫と離縁してから何度も結婚の申し出をしているのだが、一度、『不可』と言う返事が来てから、それ以降一向に返事がこないものでね。貴女のお父上もなかなか頑固なお人だ」
マルシュス公爵はため息をつきやれやれとわざとらしく首を振る。
「・・・・・そう言えば、」
その時、ロザリアがふと話し出す。
「マルシュス公爵は昔、若い頃の私のお母様に惚れ込みかなり強引に結婚を迫り、当時婚約者だったお父様に物理的に返り討ちにあった、と聞いた事がありますけど、もしかして、それが関係しているのでは?」
「ッッ、な、なんの、事で??」
ロザリアがふと思い出したかの様に話した内容にあからさまに同様の顔色を見せるマルシュス公爵。
「もしかして、若い頃のお母様とよく似た私を御子息の嫁にし、手元に置く事が目的ですか?そして、あわよくば、ライド商会のような商才をマルシュス公爵家が営む事業で大いに貢献させようと、そういう事でしょうか?」
「ッッ、」
「それとも、私がマルシュス公爵家に嫁いだ事で、アークライド公爵家の後ろ盾を得て、嫁の生家だという事を理由にライド商会の事業の利権や利益を横流しさせるつもりでしょか?」
「ぅぅぅ・・・・・、」
ロザリアの言葉に側から見ても分かるくらいに動揺を隠しきれていないマルシュス公爵。
この様子だと私が言った事はほぼ全部当てはまってしまったのだろう。
「生憎、私は私の為に仕事をするのが好きなので、強制的に仕事をやらされるのは嫌いです」
子供の様に頬を膨らませ、不愉快だとばかりにキッパリと言い放つロザリア。
「それに、貴方方の考えは、あからさまにお粗末です」
「何??」
不機嫌そうなロザリアの言葉に、マルシュス公爵の顔が険しくなる。
「誘拐も事も、御子息との結婚の事も、私がマルシュス公爵家に嫁げば事業が発展するという考えの全てが浅はかだと申しているのです」
後ろ手で縛られているにも関わらず、背筋を伸ばし4人の男をまっすぐ見据える。
「少なくとも、この事は、私の両親が許さない事でしょ。きっと、アークライド公爵家、そしてライド商会の総力を上げてこの事件の真相を探り出します。私も身に起きたことは包み隠さず証言します。そうなれば、いくら公爵の爵位を持つマルシュス公爵でもタダではすみません」
目の前でソファに座っている公爵令嬢は明らかに不利な状況のはずなのに、それを思わせないほど堂々としている。
「これ以上罪を重ねない為にも、私の身柄の即時解放と貴方達の自首をおすすめします」
「ッ、・・・・・、」
「・・・・・公爵様、」
そんなロザリアの姿を見て、手下の男達が不安気にマルシュス公爵の様子を伺う。
だが、
「ククク、フハハハハ!!!!!」
何故かマルシュス公爵はいきなり大声で笑い出した。
「ち、父上??」
いきなり笑い出した自分の父親にフィリップと手下の男が思わず慄く。
「顔だけでは無く、気の強さもアイリスに似ているのだな」
お母様の名を出しニヤリと舐める様な視線に、背筋にぞわりと悪寒が走る。
「悪いが、貴女をご両親の元へ帰すつもりは無い」
「・・・・・どう言う事ですか」
「貴女には、身一つで我が家に来て貰う。拒否権はもちろん貴女には無い・・・・・・・。おい、やれ」
「し、しかし、」
マルシュス公爵が手下の男に指示を出すが、男は不貞行為からの不安なのか罪悪感なのか、指示を受けるのを躊躇する。
「いいから、やれ!!」
「ッ、はい」
「・・・・・、はい」
主人に一喝され、手下の男達はズボンのポケットから小型のナイフを取り出す。
そして、そのままソファに座っているロザリアに近づく。
「・・・・ご自身が、非道徳的な行いをしていると承知の上で?」
「ッ、」
「・・・・・・・・」
ロザリアが手下の男の目を見て言うが、男達は気まずそうに視線を逸らし、2人がかりでロザリアの体をソファに押し付ける。
そして、持っているナイフで、
ビ、ジィィィィィ!!!!
ロザリアのオアシスカラーのドレスの裾を大きく引き裂いた。
「ッ!、」
引き裂かれたドレスの裾からロザリアの白くて滑まかしい脚が太腿まで露わになった。
その光景を見て手下の男達は思わず息を呑んだ。
「どんなに気丈な女でも、恐怖で支配すれば従順になると言うものだ。男と言う恐怖をな、」
「最低、ですね」
「褒め言葉だと受け取っておこう」
ロザリアの軽蔑の言葉にマルシュス公爵はクククと愉快そうに笑う。
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