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デリー伯爵家との婚姻理由

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「ロゼ、はしたないわよ?」
「あら、失礼」

子供みたいに笑った事を母にの指摘に、ロザリアはちょっと恥ずかしそうに眉を下げる。

「でも、なるほど、私達婚姻理由を知らないから、あんなに堂々と不貞行為を働けた訳ですね。納得がいきました」
「な、なんだ何が言いたい!?」
「貴方が自身の置かれている立場の理解が出来ていない、お馬鹿さん、と言いたいんです」
「なっ!?」

子供の様にクスクス笑うロザリアにファーガスは怒りで眉をつり上げる。

「その様子では6年前の事もお忘れではないでしょうか?」
「は?6年前??」
「え、本当に覚えていないんですか?自身の生家の一大事だったんですよ」
「は?」

本当に何を言っているのか分からないと言う顔をするファーガスに、

「自身がしでかした事さえも記憶に残っていないとは」
「デリー伯爵卿は良いお人なのに、御子息がこれでは・・・・」
「仕方ありませんわ。お父様。この人は人に取り入るのが上手ですけど、自分の興味が無いものには無関心なお人ですから。私も結婚して半年間は歳上の大人として、とても優しくしてくれましたから。まぁ、デリー夫人が屋敷に入り浸る様になってからはどんどん遠慮がなくなって来ましたけど」

呆れた様子でファーガスに冷ややかな目をする両親に溜息をつきながら困った様に話すロザリア。

「6年前、デリー伯爵家が没落の危機に陥った事、本当に覚えていらっしゃらないのですか?」
「6年前・・・・・・・・・あ!!」
「やっと思い出せましたか」

何かを思い出した様な表情をするファーガスにロザリアは呆れたと溜息を吐く。

「そうです、貴方がデリー伯爵の忠告を無視して自称、古くからの御友人、に騙され、ある投資に手を出してその資金を御友人に持ち逃げされ、更に多額の負債を作り、何の成果も上げる事なく投資が大暴落した、6年前です」

淡々と説明をするロザリアにファーガスの口元はヒクついている。

「そ、そんな昔の事と、お前と何の関係があると、」
「まだ、分かりませんか?その様な事があったのに、6年たった今でも貴方の御実家が伯爵の地位位に着いていられるのは、我がアークライド公爵家が援助したからです。私の父とデリー伯爵卿は学生時代の級友、その繋がりでデリー伯爵卿はアークライド公爵家に援助を願ったのです」
「だが、結果的に、父上がちゃんと危機を脱して、」

自分が引き起こした御実家没落の危機だと言うのに、随分と他人事ですね、この人は。
貴方のお父様信じられないと言う顔をしていますよ?

「危機を脱して、はい終わり、な訳ある訳無いじゃないですか」
「は??」
「デリー伯爵卿は伯爵家没落の危機を脱する為に我がアークライド公爵家に借金までして貴方の作った負債を工面したのです」
「は??借金??」
「はい。そして、その借金の担保に家家財共に貴方も担保にされたんですよ、ファーガスさん」
「そ、そんな事、初めて聞いたぞ!?そ、それに、私が借金の担保だと!?私はお前と結婚したんだぞ!!」
「ええ、貴方のお義母様のごり押しで私の婚約まで漕ぎ着けたんですから」
「は?母上の、ごり押し??」

私の言葉にポカンとアホな顔をするファーガスさん。

「デリー夫人は伯爵家の危機に御自分と貴方を連れて遠方の別荘に避難し、伯爵家に干渉しようとはせず、一年近く身を隠していました。ですが、アークライド公爵家の援助により御家がなんとか持ち直した頃合いを見て伯爵家に戻り、アークライド公爵家の娘である私に御子息を婿としてそして、借金の担保としてアークライド公爵家に差し出したのです」

ロザリアの説明に、理解が出来ず自分の母親を見るが夫人は顔を俯かせ顔が見えない。

「は?何、言ってんだ?は?」

ロザリアの説明に理解が追いつけないのか、間抜けな顔をするファーガス。

「私の結婚相手への条件が少々特殊でして、そのせいか、当時17歳だった私は結婚相手を見つける事が出来なかったのです」
「条件??」
「ええ、私が結婚相手に求めた条件は、
『アークライド公爵家が営むライド商会の、私の仕事に一切の手出し、口出し、邪魔を禁ずる事』です。
貴方は私の条件を全て承諾しました。ですが、流石に急な婚約だったので本来ならもう少し婚約期間を設ける筈でしたが、貴方の御両親が早く結婚をと急かし、一年足らずで私達は夫婦になったんです」
「は?わ、私は、な、何も知らない!!」
「誓約書があります」
「へ?」
「結婚する前に両家立ち合いの元、誓約書を書いてもらいました」
「は!?だ、誰が!?」
「貴方ですよ。その誓約書がこちらです」

そう言いながら、ロザリアは一枚の紙を机の上に出す。
その瞬間、ファーガスの両親は青い顔を通り過ぎて顔面蒼白になった。

その紙には、

『私、ファーガス・シーザー・デリーは、アークライド公爵家長女、ロザリア・ミラ・アークライド嬢と婚姻におき、以下の誓約を誓います。

1、アークライド公爵家の婿養子になる事。
2、妻であるロザリアの仕事に於いて一切の手出し、口出し、業務の支障と成り得る邪魔をしない。
3、公爵家から与えられた仕事を全うする事。
4、与えられた仕事で伯爵家の借金を公爵家に返済する事。
5、妻であるロザリアに迷惑をかけない。
6、以上の誓を破った場合、慰謝料としてロザリアに5,000,000Gをお支払い致します。

以上、この6の誓約を此処に誓います。


ファーガス・シーザー・デリー』

と、書かれていた 。

「誓約書2、3、4、5の誓約違反で5,000,000Gお支払いを要求します」
「な、な、な!?!?」

ロザリアの言葉に、顔を歪めた青い顔をするファーガス。

「御自分で書いたのに、お忘れですか?ファーガスさん」
「こ、こんな物、私は知らない!書いた覚えがない!!」

青い顔で子供の様に否定するファーガスをロザリアもロザリアの両親も使用人の2人も冷ややかな目になる。

恐らく思い当たる事が多すぎるのでしょう。
車椅子に拘束されていいなければ、今すぐにでもこの誓約書を破り捨て、この場から逃亡を図ったでしょう。
本当に愚かなお人。

「知らない、覚えていないじゃ通らないんですよ」
「う、煩い!!!そ、そうだ!!わ、私がいつお前に迷惑をかけた!?私は仕事もしていたし、お前は何も言わなかったでわないか!!お前が何も言わないから、お前が悪い!!私は悪くない!!」

声を上げ、言い訳を叫ぶファーガスに部屋の温度が数度下がったのをロザリアは密かに感じた。

本当に救いようの無い人。
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