莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千

文字の大きさ
上 下
19 / 27

異常発生

しおりを挟む
「えっと、皆さん、落ち着きましたか?」

 しばらくして、私が問いかける。

「ええ、身内の内輪喧嘩を晒してしまい、申し訳ないね。紅音」

 レイ様が申し訳なさそうにそう言うが、どっちかと言うとパルアドルフ様の四面楚歌のように見えたな・・・・。
 いや、いらん事は考えない。
 ちゃんと言いたい事を言おう。

「いえ、大丈夫です。それに、皆様のご厚意はとても嬉しく感じているんです」

 気を取り直し、神様達に向き合う。

「あ、紅音さん・・・・」
「ドルーネ様は私のわがままを叶えてくれました。ロディ様やルカ様達は、私に加護を与えてくれました。そして、パルアドルフ様は私の身を案じて考えてくれている。
 ただの異世界から来た一人の人間にここまで気を掛けてくれて、嬉しい反面、少し申し訳なくも感じています」

 私は、キチンと正座に座り直し、深く頭を下げる。

「だけど、これだけは、言わせて下さい。皆様、私を助けいただき、ありがとうございます」

 この亜空間プライベートルームに入って頭を下げられて、今度は私がお礼を言っている。
 ちょっと、可笑しな事だけど、ここに居る神様達がこの世界に召喚された私を救ってくれた。
 感謝しかない。

「うん。やっぱり、僕は紅音の事好きだな」
「へ?」

 レイ様の突拍子の無い言葉に、驚いて下げていた頭を上げてしまった。

「はい。私も紅音さんの事、大好きです」
 
 満足そうに笑うレイ様にルカ様が同意する。

「え?え?」

 突然の好意の言葉に驚いて戸惑ってしまった紅音。

「レイガン兄さん、ルカ。その言い方は誤解を招く」
「あくまで、我々目線での人間としての好意だ」
「いやん、双子ちゃんツンデレ~」
「あはは、双子ちゃんは素直やあらへんからな~。ホンマは、お嬢ちゃんの事気に入ってるんに、意地張ってもうて、」
「「ロディ!!兄さん!!」」

 ロディ様とドルーネ様に揶揄われ息ぴったりに声を上げるアディーダ様とレニックス様。
 
「え?」

 目の前の光景にポカンとする紅音。

「うふふ、紅音ちゃんは、とっても良い子って事よ」
「え?ええ??」

 にっこりと優しく紅音に微笑むロディーメイア。

「言葉だけの上部な謝罪や謝礼は、我々には何も意味を成さない。兄妹のなかには、逆に反感を買う事がある。寧ろ、神である我等に媚びを売りたいと言う魂胆はレイガンの兄で無くても透けて見えてしまう。
 だからこそ、紅音殿の心からの感謝の言葉は、我々に好ましいモノという事だ」
「もう、お兄ちゃんも素直じゃ無いんだから」
「うむ・・・・」
「紅音が、少しでも邪な人間だったら、僕達兄妹は謝罪をして直ぐに消えるつもりだったんだよ」

 そう言いながら、レイ様がスッと私に近く。

「!?」

 私は、思わず、体をのけ反らせる。

「だけど、何故だろうね?紅音の側はなんだか居心地がいいんだよね」
「あ、あの、レイ様、御尊顔が近い・・・」

 か、顔が良すぎて、直視出来ない!!

「ふふふ、ありがとう」
「だから、心読まないで!!」
「お嬢ちゃん、完成に、レイ兄やに遊ばれとるなぁ」
「でも、分かるわ~。紅音ちゃんいい子で可愛いもの~」

 そう言いながら、ロディ様がスルリと右腕を絡ませくる。

「わわわわ!?」
「ついつい構いたくなっちゃうわ~」
「・・・・・揶揄いがいは、あるわね」
「お姉様達ズルイです。私も!」
「!?!?」

 猫の様に甘えてくるロディといつの間にか左隣に近づいていたアディーダ、そして、正面から抱きついて来るルカに慌てる紅音。

「おーおー。お嬢ちゃん、レイ兄、ルカやロディだけやのうて、あの気分屋やなアディまで手懐けてもうた」
「これは、もう才能だな」
「神タラシの才能?」
「お!お嬢ちゃんの新しいスキルか?」
「いや、どんなスキルですか!?」

 面白そうに笑うドルーネ様にまたツッコミを入れてしまった。
 好意を持たれるのは嬉しいが、皆さん顔が良すぎて、少々心臓に悪い。

 その時、

 ピコン!!

『亜空間プライベートルームのレベルが上がりました』

 再びいきなり現れた半透明のディスプレイ。
 だけど、

「!?」

 出てきたディスプレイを遮る様に新しいディスプレイが出てきた。

『亜空間プライベートに初めてお客様が来室されました。
 亜空間プライベートルームのレベルが2上がりました』

 ピコン!!

『亜空間プライベートルームに新たなお客様が来室されました。
 亜空間プライベートルームのレベルが3上がりました』

 ピコン!!

『お客様からプレゼントを貰いました。
 亜空間プライベートルームのレベルが4上がりました』

 ピコン!!

『お客様から加護を受け取りました。
 亜空間プライベートルームのレベルが5上がりました。
 亜空間プライベートルームを拡張する事が出来ます。
 亜空間プライベートルームを拡張しますか?
 YES or NO?』

 ピコン!!

『ギフトの女神ルカリスの加護『ギフトしたスキルのレベルアップ2倍』を受け取りました。経験値が2倍になります。
 亜空間プライベートルームのレベルが7上がりました』

 ピコン!!

『お客様から加護を受け取りました。
 亜空間プライベートルームのレベルが9上がりました』

 ピコン!!

『お客様をおもてなしをしました。
 亜空間プライベートルームのレベルが12上がりました。
 亜空間プライベートルームに置ける家具の数が3増えました』
「え?え?え?」

 ピコン!!ピコン!!ピコン!!ピコン!!ピコン!!

 軽快な効果音と共に次から次に重なる様に現れるディスプレイ。
 次々に映るディスプレイに目がチカチカする。
 目の前の情報を無意識に目で追ってしまい、画面酔いをしたみたいに気分が悪くなる。
 冷や汗が出る。心臓の鼓動が早くなる。呼吸が、荒くなっていく。

「これは、」
「ちょっと、コレは、アカンやつやで」
「紅音ちゃん!!」
「ちょっと、大丈夫!?」

 神様達が、何か焦っている声が聞こえて来るけど、何処か遠くの、まるで、壁越しに聞こえる声の様で、理解出来ない。

   音が鳴り止まず、次々に映るディスプレイ。
 目の前がグラグラ揺れて見える。

『お客様の好感度が全員30上がりました。
 亜空間プライベートルームのレベルが50上がりました。
 ネット環境を開設出来ます。
 ネット環境を整えますか?
 YES orNO?』
「ぁ、ぁ・・・」

 目が回りそうなのに、周りの景色はボヤけて見えるのに、目を逸らしたいのに、目の前のディスプレイの文字列がやけに鮮明に見えてしまう。

「紅音殿」

 その時、耳元で優しい声が聞こえたと思ったら、目の前を優しく何かが覆った。

 この声は、パルアドルフ、様?

 視界を遮られ、まだ頭の中がグラグラと揺れる感覚だが、不思議と安堵出来た。

「紅音殿、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ・・・・っ、はぃ・・・」
「紅音、深く息を吸って、ゆっくり吐きなさい。大丈夫。何も考えずに、心を落ち着かせて」

 今度は、レイ様の声が聞こえ、無意識に言われた通りに、深く息を吸い、ゆっくり息を吐く。
 すると、気分はまだ気持ち悪いが、落ち着いて行く。
 そして、意識がだんだんと沈んでいく感覚を感じた。

「いい子だね。少し、眠りなさい。大丈夫。なにも心配は無い。少し休みなさい」

 レイ様の優しい声を聞いて、

「はぃ・・・・」

 私は意識を手放した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千
ファンタジー
ハーフエルフのシェナは所属していたAランクの勇者パーティーで魔力が弱いからと言う理由で雑用係をさせられていた。だが、ある日「態度が大きい」「役に立たない」と言われ、パーティー脱退の書類にサインさせられる。所属ギルドに出向くと何故かギルドも脱退している事に。仕方なく、フリーでクエストを受けていると、森で負傷した大男と遭遇し、助けた。実は、シェナの母親、ルリコは、異世界からトリップしてきた異世界人。アニメ、ゲーム、漫画、そして美味しい物が大好きだったルリコは異世界にトリップして、エルフとの間に娘、シェナを産む。料理上手な母に料理を教えられて育ったシェナの異世界料理。 少し捻くれたハーフエルフが料理を作って色々な人達と厄介事に出会うお話です。ちょこちょこ書き進めていくつもりです。よろしくお願します。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...