莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千

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異常発生

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「えっと、皆さん、落ち着きましたか?」

 しばらくして、私が問いかける。

「ええ、身内の内輪喧嘩を晒してしまい、申し訳ないね。紅音」

 レイ様が申し訳なさそうにそう言うが、どっちかと言うとパルアドルフ様の四面楚歌のように見えたな・・・・。
 いや、いらん事は考えない。
 ちゃんと言いたい事を言おう。

「いえ、大丈夫です。それに、皆様のご厚意はとても嬉しく感じているんです」

 気を取り直し、神様達に向き合う。

「あ、紅音さん・・・・」
「ドルーネ様は私のわがままを叶えてくれました。ロディ様やルカ様達は、私に加護を与えてくれました。そして、パルアドルフ様は私の身を案じて考えてくれている。
 ただの異世界から来た一人の人間にここまで気を掛けてくれて、嬉しい反面、少し申し訳なくも感じています」

 私は、キチンと正座に座り直し、深く頭を下げる。

「だけど、これだけは、言わせて下さい。皆様、私を助けいただき、ありがとうございます」

 この亜空間プライベートルームに入って頭を下げられて、今度は私がお礼を言っている。
 ちょっと、可笑しな事だけど、ここに居る神様達がこの世界に召喚された私を救ってくれた。
 感謝しかない。

「うん。やっぱり、僕は紅音の事好きだな」
「へ?」

 レイ様の突拍子の無い言葉に、驚いて下げていた頭を上げてしまった。

「はい。私も紅音さんの事、大好きです」
 
 満足そうに笑うレイ様にルカ様が同意する。

「え?え?」

 突然の好意の言葉に驚いて戸惑ってしまった紅音。

「レイガン兄さん、ルカ。その言い方は誤解を招く」
「あくまで、我々目線での人間としての好意だ」
「いやん、双子ちゃんツンデレ~」
「あはは、双子ちゃんは素直やあらへんからな~。ホンマは、お嬢ちゃんの事気に入ってるんに、意地張ってもうて、」
「「ロディ!!兄さん!!」」

 ロディ様とドルーネ様に揶揄われ息ぴったりに声を上げるアディーダ様とレニックス様。
 
「え?」

 目の前の光景にポカンとする紅音。

「うふふ、紅音ちゃんは、とっても良い子って事よ」
「え?ええ??」

 にっこりと優しく紅音に微笑むロディーメイア。

「言葉だけの上部な謝罪や謝礼は、我々には何も意味を成さない。兄妹のなかには、逆に反感を買う事がある。寧ろ、神である我等に媚びを売りたいと言う魂胆はレイガンの兄で無くても透けて見えてしまう。
 だからこそ、紅音殿の心からの感謝の言葉は、我々に好ましいモノという事だ」
「もう、お兄ちゃんも素直じゃ無いんだから」
「うむ・・・・」
「紅音が、少しでも邪な人間だったら、僕達兄妹は謝罪をして直ぐに消えるつもりだったんだよ」

 そう言いながら、レイ様がスッと私に近く。

「!?」

 私は、思わず、体をのけ反らせる。

「だけど、何故だろうね?紅音の側はなんだか居心地がいいんだよね」
「あ、あの、レイ様、御尊顔が近い・・・」

 か、顔が良すぎて、直視出来ない!!

「ふふふ、ありがとう」
「だから、心読まないで!!」
「お嬢ちゃん、完成に、レイ兄やに遊ばれとるなぁ」
「でも、分かるわ~。紅音ちゃんいい子で可愛いもの~」

 そう言いながら、ロディ様がスルリと右腕を絡ませくる。

「わわわわ!?」
「ついつい構いたくなっちゃうわ~」
「・・・・・揶揄いがいは、あるわね」
「お姉様達ズルイです。私も!」
「!?!?」

 猫の様に甘えてくるロディといつの間にか左隣に近づいていたアディーダ、そして、正面から抱きついて来るルカに慌てる紅音。

「おーおー。お嬢ちゃん、レイ兄、ルカやロディだけやのうて、あの気分屋やなアディまで手懐けてもうた」
「これは、もう才能だな」
「神タラシの才能?」
「お!お嬢ちゃんの新しいスキルか?」
「いや、どんなスキルですか!?」

 面白そうに笑うドルーネ様にまたツッコミを入れてしまった。
 好意を持たれるのは嬉しいが、皆さん顔が良すぎて、少々心臓に悪い。

 その時、

 ピコン!!

『亜空間プライベートルームのレベルが上がりました』

 再びいきなり現れた半透明のディスプレイ。
 だけど、

「!?」

 出てきたディスプレイを遮る様に新しいディスプレイが出てきた。

『亜空間プライベートに初めてお客様が来室されました。
 亜空間プライベートルームのレベルが2上がりました』

 ピコン!!

『亜空間プライベートルームに新たなお客様が来室されました。
 亜空間プライベートルームのレベルが3上がりました』

 ピコン!!

『お客様からプレゼントを貰いました。
 亜空間プライベートルームのレベルが4上がりました』

 ピコン!!

『お客様から加護を受け取りました。
 亜空間プライベートルームのレベルが5上がりました。
 亜空間プライベートルームを拡張する事が出来ます。
 亜空間プライベートルームを拡張しますか?
 YES or NO?』

 ピコン!!

『ギフトの女神ルカリスの加護『ギフトしたスキルのレベルアップ2倍』を受け取りました。経験値が2倍になります。
 亜空間プライベートルームのレベルが7上がりました』

 ピコン!!

『お客様から加護を受け取りました。
 亜空間プライベートルームのレベルが9上がりました』

 ピコン!!

『お客様をおもてなしをしました。
 亜空間プライベートルームのレベルが12上がりました。
 亜空間プライベートルームに置ける家具の数が3増えました』
「え?え?え?」

 ピコン!!ピコン!!ピコン!!ピコン!!ピコン!!

 軽快な効果音と共に次から次に重なる様に現れるディスプレイ。
 次々に映るディスプレイに目がチカチカする。
 目の前の情報を無意識に目で追ってしまい、画面酔いをしたみたいに気分が悪くなる。
 冷や汗が出る。心臓の鼓動が早くなる。呼吸が、荒くなっていく。

「これは、」
「ちょっと、コレは、アカンやつやで」
「紅音ちゃん!!」
「ちょっと、大丈夫!?」

 神様達が、何か焦っている声が聞こえて来るけど、何処か遠くの、まるで、壁越しに聞こえる声の様で、理解出来ない。

   音が鳴り止まず、次々に映るディスプレイ。
 目の前がグラグラ揺れて見える。

『お客様の好感度が全員30上がりました。
 亜空間プライベートルームのレベルが50上がりました。
 ネット環境を開設出来ます。
 ネット環境を整えますか?
 YES orNO?』
「ぁ、ぁ・・・」

 目が回りそうなのに、周りの景色はボヤけて見えるのに、目を逸らしたいのに、目の前のディスプレイの文字列がやけに鮮明に見えてしまう。

「紅音殿」

 その時、耳元で優しい声が聞こえたと思ったら、目の前を優しく何かが覆った。

 この声は、パルアドルフ、様?

 視界を遮られ、まだ頭の中がグラグラと揺れる感覚だが、不思議と安堵出来た。

「紅音殿、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ・・・・っ、はぃ・・・」
「紅音、深く息を吸って、ゆっくり吐きなさい。大丈夫。何も考えずに、心を落ち着かせて」

 今度は、レイ様の声が聞こえ、無意識に言われた通りに、深く息を吸い、ゆっくり息を吐く。
 すると、気分はまだ気持ち悪いが、落ち着いて行く。
 そして、意識がだんだんと沈んでいく感覚を感じた。

「いい子だね。少し、眠りなさい。大丈夫。なにも心配は無い。少し休みなさい」

 レイ様の優しい声を聞いて、

「はぃ・・・・」

 私は意識を手放した。
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