男装の英雄は用済みだと棺桶に入れられた

翔千

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守らせて

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「叔父上は何も悪くない!!悪いのは、自分の我を押し通そうとして勝手に自滅したルヴァンヌ侯爵家じゃない!!」

自分の両親の理不尽さに怒りを露わにするレイン。

「レイン、落ち着きなさい」
「ッ、でも、叔父上・・・」
「確かにあの愚兄には色々と迷惑で理不尽な言動を受けて来たが、結果的には愚兄と縁も切れ、我が子達を守る事も出来たんだ。後悔はしていないよ」
「あ・・・・・・。そう、ですね」

経緯はどうあれ、結果的には侯爵家と縁が切れ、産まれてくる小さな命を守る事が出来たんだ。
これがある意味、最良だったのかも知れない。

「だが、たった一つだけの心残りは、レイン、君の事だけが本当に気掛かりだった」
「叔父上・・・・」
「ヨハンとソフィの心遣いで離れに行かせて貰ったあの時、泣いていたレインを見て、この場から連れ去りたいと本気で考えた。
だが、あの日、侯爵家の顔に泥をつけ者としてその場で非難された私がレインを連れ去れば、あの兄はすぐに私を誘拐犯だと騒ぎ、周りに触れ周りジュネード伯爵家を取り潰すだろう。
あの場では暴れたジルベールに非があったとは言え、侯爵家の権力を振り翳せば私だけでなく、ジュネード伯爵家に関わりのある者に影響する。
それだけは避けたかった。
だが、レインの悲報を受けた時、君がこんな事になるなら、身の保身など考えずに無理にでも君を兄達から引き取ればよかったと後悔した」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・とは言え、どんな言葉を使っても言い訳にしか聞こえないかもしれない。
だが、これだけは信じてほしい。
私は、お前を想わなかった日は無かった」

叔父上の声が震えている。

「レイン、君が、死んだと、聞いたのに、まさか、生きていて、本当に、良かった、ッ!!!」

顔をぐしゃぐしゃにしてボロボロと涙を流していた。

「・・・・・叔父上」
「うわぁ、ボロ泣きだぁ」
「父様、凄い泣き顔だ」
「もう、レオールったら」

こんなに男泣きしている叔父上、初めて見た。
こっちも涙が溢れそうだったのに、泣き過ぎて感情のコントロールが出来ないのか涙だけでは無く鼻水や涎まで流す叔父上を目の当たりにして涙が止まってしまった。

しばらくして、

「うぐっうぐっ、す、すまない・・・・・」

ようやく落ち着いたの様子。
だけど、まだ鼻頭が赤い叔父上。

だけど、

「ありがとうございます。叔父上」

その涙が私を想って流してくれた涙だと素直に嬉しくて、思わずもらい涙をもらってしまった。

「はい、姉様」

そんな私を見て、ヒューズがそっとハンカチを差し出してくれた。

「、ありがとう」
「で、姉様はこれからどうするの?」
「え、」

バーナードがつぶらな瞳でレインを見つめる。

「そうね。理由はどうあれ、レイン、貴女はもうルヴァンヌ侯爵家とは係が無くなったのは事実。これからどうするのかを考えなければいけないわね」

アミリア様が優しく微笑んだ。

「レイン、貴女さえ良ければ、私達の娘にならないかしら」
「アミリア様・・・・・」

アミリア様の申し出に、レインは目を見開く。

「うぐっ、グズ・・・、ああ、レイン。どうか、私達の家族になってはくれないか?もちろん、お前の生存を公にする気は毛頭に無い。だが、折角生き延びたのだ。これからの人生、私達家族に預けて欲しい」
「叔父上」

まだ、涙で泣き腫らした顔で微笑みかける叔父上を見て、後ろに控えるヨハンに目を向けると、

「お嬢様のご意思のままに」

そう優しく微笑んだ。

「・・・・・叔父上、アミリア様、とても嬉しいです」

私は、ルヴァンヌ侯爵家のレイン・ルヴァンヌとしてでは無く、ただの1人の人間として2人の言葉が本当に嬉しかった。
だけど、

「嬉しいのですが、ごめんなさい」

私は叔父上とアミリア様に深く頭を下げて謝罪した。

「・・・・・理由を聞いてもいいか?」

叔父上はそんな私の謝罪に怒る事なく優しく聞いてきた。

「私は、もうこの国にいない方がいいと考えていました。両親に毒を盛られたあの瞬間、ルヴァンヌ家にとって私は生きていては都合が悪い存在。レイン・ルヴァンヌはもう亡き者とされて、戸籍も人権もありません。例え、叔父上達が私を家族として迎えてくれても、叔父上達に迷惑がかかるだけです」
「迷惑だなんて、それに、戸籍の事は、私達の遠い親戚の子として養子縁組すれば大丈夫よ」
「ですが、万が一、私の存在があの人達にバレればジルベールの功績に傷が付く前にどんな手段を取っても私を消しに来ます。そうなれば、私を迎え入れたジュネード伯爵家も無事では済まない」

娘を息子可愛さに戦場に送り、やっと帰って来たら毒を盛り亡き者としたあの両親だ。きっと、私が生きていると細やかな風の噂でも聞いたら事実確認に奔走し、刺客を送るに違いない。

「私は、ルヴァンヌ家に不当解雇された使用人達の保護を叔父上にお願いする為にここに来ました。私は、この国を出るつもりです」
「っ、レイン・・・」
「お嬢様・・・・」
「だったら、レイン、私の別荘に住むのはどう?」
「へ?」
「ん?」
「アミリア?」

唐突なアミリア様の提案に一同ポカンとなる。

「隣国にね、私の名義の別荘があるの。私幼い頃から病弱で療養の為の別荘が他国に幾つか持っていて、時々掃除もしているから十分に暮らせるから、そこに住めばいいわ」
「ア、アミリア様、ですが、」
「戸籍の事で心配なら、養子縁組をすれば問題は無いわ」
「ですが、万が一私がジュネード家に養子となった事がルヴァンヌ家にバレたりしたら、大変な事になります。だから、やっぱり私がこの国を、」

にこやかに提案を話すアミリア様に困惑しながらも、私は断ろうとすると、

「大丈夫よ」
「え、」
「あの人達から逃げたいと言う貴女の考えは分かるわ。でもね、せっかく会う事が出来たのに、もう二度と逢えないような事を言うのは悲しいわ。
私達も貴族の、伯爵の地位位を持つ者。今は存在し得ない貴女1人囲えるのは造作も無いことよ。ただ闇雲にこの国を出て行くよりも、使える宛を使って、新しい人生を送るのも一つの路じゃ無いかしら」
「アミリア様・・・・・」
「守らせて」
「ッ・・・・」
「私の可愛い姪っ子をあの碌でないしの毒親と愚弟から守らせて?」

優しく笑うアミリア様と苦笑する叔父上。

ああ、ズルい。
みんなを叔父上に託して、早くこの国を出なきゃいけないのに、守らせてなんて、今まで誰にも言われた事がない。
頼るなんて出来ない。迷惑をかけてしまって申し訳ない。
ずっとそう思っていたのに、そんなに優しく言われてしまったら、

「叔父上、アミリア様・・・・・、助けて、下さい!」

縋ってしまう。

レインはジュネード伯爵夫婦に深く頭を下げた。

「ああ、任せてくれ」
「貴女は私達ジュネード伯爵家が全力で守るわ」

そう言いながら2人は力強く頷いてくれた。
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