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しおりを挟む「実はですね、ここは閣下専用の席ですよ」
「旦那様の?」
食堂の隅にある席。隣には大きな窓があり、外の景色が見える。
確かに、心地よい空間かもしれない。
「専用はちょっと言い過ぎかもしれませんが、大体はいつもここで座っています。団員の皆もそれを知ってて、閣下がいる時にいつもこっそりと空けるようにしてるんですよ」
「バレたら絶対嫌な顔をしてしまいますからね」とカレンは頭をかきながら言った。
そうか、彼がここに。
ここに座って、彼は何を食べたのだろうか。拘りはあまりないみたいだが、甘い物が好きだと知っている。
どんな気持ちで窓の外を眺めているのだろうか。窓の先に見える小さな自然を見て、それを堪能しているのかな。ここから日が差すと、さぞ心地よいだろう。
彼がここで生活していると想像するだけで、自然と頬が緩む。
それだけではなく、周りの皆も彼を大切にしてくれていると聞くと心が温まる。
彼への感情に苦しみが伴う。
でも、おそらく過去に戻っても結局私はこの感情を育てることを選ぶのだろう。
だって、こうやって彼のことを想うだけで、胸の中に開いた大きな穴が満たされるから。
(もう、後戻りなんかできないよね)
知ってしまったもの。苦しいだけではないと。
この感情の甘酸っぱさも暖かさも味わってしまったもの。
この二つのものは表裏一体で、片方だけ選べないことも。
なら、まとめて全部受け止めるしかない。
それだけ、だよね。
全部、私が選択をした結果なんだから。
「カレンは? 食堂ではいつも何を食べるの?」
「私はですね……」
カレンのおかげで、気分が晴れた。一緒に浮上したのが好奇心だった。もしかすると、彼女が私のことを気遣った上に話題を提供してくれたのだろう。
カレンの話に耳を傾き、気になるところに質問を投げる。彼女は嫌な顔を一つもせず、満面な笑顔で応えてくれた。
(ありがとう、カレン)
本当に、優しくて、春の太陽のような彼女に感謝してもしきれてないな気がする。
そうやって殿方達の戻りを待つと、突然影が差した。
その変化に気付き、顔を上げる。
そこには、一人の女性が私たちを見下ろしている。
「ね、貴女があの「フルメニアの妖精姫」なの?」
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