名前を忘れた私が思い出す為には、彼らとの繋がりが必要だそうです

藤一

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相手の目を見て言うものですよ※

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一瞬、何の事か分からずぽかんとしてしまうが、すぐにリビングで言っていた事だ、と気付く。
今ッ!このタイミングで話の続きってッ!本当に、普通に自然に「アルケーさんのバカッ!」と口から出てしまいそうになった。
話の続きをするなら、この臨戦態勢では出来ない。私が身体をずらしてアルケーさんの屹立から逃れようとすると腰をがしりと掴まれた。

「あ、アルケーさん・・?」
「オト、逃げては駄目ですよ♡」
「ひゃッ!ッん♡」

「逃げては駄目」と言われたからてっきり中に挿入って来るのかと思ったら、屹立でぬちぬちと花芽と蜜口をこすりはじめた。指とは違う、しっかりした質感がぐちぐちと私の秘所を往復する。ぞわりとうなじの辺りの毛が逆立つ。燻っていた快楽が一気に膨れ上がるのが分かった。アルケーさんが腰を動かすたびに、嬌声が口から漏れる。

「ゃんッ!あん゛ッ♡あぁんッ♡あ、ある、アルケー、さん、と、とま、あん゛ッ♡あぁッ」

「さっき、話の続きって言ってたのに!話し合うなら動かないで欲しい!」そう言いたいのに、アルケーさんの動きに、意識が引っ張られて言葉を最後まで紡ぐ事が出来ない。

「ねぇ・・オト・・目が蕩けてますね。そんなに、私ので、可愛がられるのが、気持ち良いですか?」

私の喘ぎ声と交じり合う水音の合間で、アルケーさんが一言一言区切りながら私に尋ねる。「気持ち良い」に塗り潰されていた意識を、何とか浮上させて見上げると月の様な琥珀色の瞳と視線がぶつかる。今日は髪を括っているから、雲の無い夜の三日月みたいに見える。私はアルケーさんの恥ずかしい問いに対して、こくこく頷いて答える事しか出来ない。

「・・嬉しいですねぇ。オト、私もですよ。・・ねぇ、知ってます?」

アルケーさんが身体を折って私の頭を抑え込む様にして耳元に唇を寄せた。

「・・オトの中、まるで私専用みたいで・・それはそれは気持ち良いんですよ。挿入るとね、いじらしい位に締め付けて来て・・」

湿度の高い吐息と一緒にアルケーさんが囁く。理性が残っている状態で、こんな恥ずかしい報告と言うか感想を貰ったら「アルケーさんのバカッ!」と言っていたと思う。私はアルケーさんの首に腕を回して、しがみ付く。

「あ、アルケー、さぁん、わ、私も・・♡だ、だから、い、挿入れて、ください」
「ふふ、良いですよ。・・でも、その前に一つ約束を」

あぁ!何でこのタイミングで言うのッ!
アルケーさんは私と繋がった部分に視線を動かして、蜜口に屹立をぴったりあてがう。どちらかが腰を動かした訳でも無いのに、ぬかるみきった私の入り口は容易に屹立の先端をくぷりと呑み込んでしまう。

「はぁ・・ぁんッ♡」

我慢出来ずに腰を揺らめかせて「その先」を強請る。けれど、アルケーさんが腰を引いてしまったので、望んだ先に「それ」は挿入って来ない。じれったいやら自分が情けないやら、ぐちゃぐちゃの感情で泣きたくなってしまった。私がぎゅうと目を閉じて「う゛ぅ・・」と呻くと、アルケーさんがもう一度、屹立の先をゆっくりと沈めて来た。

「・・はぁ・・話の続きですが・・オト、王子との話し合いの時、お願いですから・・『抵抗』しないで下さいね」

は、話の続きが・・抵抗しない事?もどかしい快感で、頭が上手く動かない。薄目を開けて彼の方を見ると、何かに耐える様に苦しそうなアルケーさんの顔が目に入った。

「ねぇ、私は、王子とオトの仲を壊そうなんて・・思っていないんです。だから、当日、私が言う事は全てオトと王子の為なんです」

アルケーさんは私の頬を撫でて「分かってくれますか?」と続ける。
・・えっと、とりあえず・・おうじがトマリギに、なることは・・はんたいして、ないのかな?なら、アルケーさんのいうとおりに、してもいい、のかな?
私は回らない舌で「・・は、い」と答える。するとアルケーさんは苦しそうな表情から少し困った顔になった。

「こういう時のオトは心配になる位、素直ですね。ふふ、オトの全部がぐちゃぐちゃになっている時に、約束をお願いするなんて・・少しズルいですね」

甘ったるい刺激に上書きされた頭では、アルケーさんが何を独り言ちているのか分からない。けれど、アルケーさんが自嘲気味に笑っている顔を見上げていると、胸の辺りが苦しくなる。多分、彼にそんな顔をさせているのは私だ。私はアルケーさんの唇に自分の唇を乱暴に押し付け、舌をねじ込んだ。一瞬、彼の戸惑いが感じられたが、それはほんの一瞬。舌先をお互いに絡め合う。
二人で吐息を分け合っていると、私が何も言わなくても、アルケーさんの屹立が柔い中を割り入って来た。あんまり焦らされた所為で、悲鳴に近い声を上げながらアルケーさんの背中に爪を立ててしまう。「しまった!」と思い謝ろうしたら、アルケーさんが私の腰を抱えてより深く屹立が入る角度に体勢を変えた。
こつん、と行き止まりにアルケーさんのものが当たり、ぴりぴりした痛みとそれを上回る気持ち良さで「あ゛ん゛ッ!!」と背中がベッドから浮く。とちゅとちゅとリズミカルに最奥を突かれ、それに合わせて甲高い啼き声が口から漏れる。

「・・オトの、中、こんなに、私のものが、好きなんですね」

アルケーさんは愉悦に満ちた声でそう言い、ぐーっと腰を蜜口に押し付け、ねっとりと腰を回す。満遍なく中を抉られ、目の奥でぱちぱちと火花が散る。ふるふると腰とお腹の奥が震え始め、深くイキそうなのが分かったが「あ゛ぁぁ♡」と喘ぐ事しか出来ない。

「・・はぁ、オト・・あぁ、そんな締め付けて。イクんですね♡」

言い終えると、アルケーさんが腰を激しく動かし始めた。さっきまでは甘やかす感じだったのに、今の腰の動きは自分と私を絶頂へと荒々しく追い立てる。

「ゃあ゛♡ぁぁあ゛あ゛ッ!」
「ッハ、あぁ・・」

アルケーさんの屹立が一層質感を持った瞬間、びゅると温かいものが奥に広がる。好きな人から与えられる特別な刺激の所為で、お腹の奥がきゅうと疼く。すると、アルケーさんが中に入れたまま「うぅ」と低い声を漏らす。

「・・はぁ、オト。締め付けては駄目ですよ。『手加減しろ』って言ったのは貴女でしょう・・。私から、理性を奪わないで下さいね」
「・・ゃあ、す、すいま、せん。き、きもち、よくて」

私が呼吸の合間にそう答えるとアルケーさんがとぽっと音を立てながら屹立を抜いた。それすらも刺激になって「ッん♡」と悶えてしまう。
本当は色々整えてから寝た方が良いんだろうが、全身から力が抜けて瞼がとても重い。裸のまま、うとうとしかけている私に、隣のアルケーさんが何か優しく話し掛けている。それは分かるんだけど・・。子猫の様に隣の彼の肌に頬ずりをする。くすりと笑う声が降って来る。

「・・おやすみなさい、オト」

額にちゅっと唇が触れ、それが何だかとても幸せで和らいだ気持ちで眠りに落ちた。

次の日の朝は、事後なのに珍しく寝過ごさなかった。理由は簡単だ。アルケーさんが「手加減」したからだ。
カーテンの隙間から入る朝の光の中で改めて確認すると、裸のままアルケーさんと抱きあっていた。あぁ、やっぱりあのまま寝落ちしちゃったんだ。
アルケーさんを起こさない様に、少しだけ身体をずらして彼の寝顔を眺める。アルケーさんは髪が銀色だからか睫毛も白っぽい。長い睫毛が目元に淡い影を落としている。彼の寝顔と規則正しい寝息が、私を満ち足りた気持ちにさせる。

「アルケーさん、大好き」

そう呟いて、彼のこめかみにそっとキスをする。

「・・そういうのは、相手の目を見て言うものですよ」

白っぽい睫毛の間から、琥珀色の瞳が覗く。お、起きてたなら言って欲しいッ!!私が狼狽えているとアルケーさんはくすくすと笑い、私の後頭部に腕を回す。お互いの鼻先がこつんと触れ合う。

「ねぇ、オト、私の目を見て、先程の言葉、もう一度言って下さいませんか?」
「う、ぐ・・アルケーさん、起きてたんですよね?聞いてましたよね?」
「さぁ?夢心地だったので覚えてませんね」

悪戯っぽくアルケーさんが笑う。その笑顔に胸が甘く締め付けられ『大好き』を言う代わりに、自分から強くアルケーさんに抱き着く。

『あぁ、この人は私のトマリギだ』

アルケーさんの香りに包まれ、私はその事が痛い程に分かった。

結局、王子とアルケーさんの面会の日は明日、王子の別邸で、という事になった。アルケーさんは事前に分かっていたみたいだ。何でお城からの返信を確認する前に分かっていたんだろう、と思ってアルケーさんに尋ねると「ふふ」と彼は低く笑った。

「簡単な事ですよ。向こうも対策を練る必要が有る、と言う事です」
「えーっと・・アルケーさん対策に一日を準備期間にしたっていう事ですか?」
「多分そうでしょうね。東の程ではありませんが、私も面倒な部類の神官なので」

「面倒な神官」それがどういう意味なのかは正しくは分からないが、王子もアルケーさんの事は軽くあしらう事は出来ない様だ。それは神殿とお城のパワーバランスが関係しているのかもしれない。

そして、ミスティコさんと打ち合わせが出来ないまま、アルケーさんと王子の面会の日になってしまった。
王子の別邸に向かう馬車の中、私は何度か正面に座るミスティコさんに話し掛けようとしたが、その度に隣のアルケーさんがぎゅっと手を握って来てタイミングを失ってしまう。

『これは・・ぶっつけ本番・・かもしれない・・どうか修羅場になりませんように!!』

的中して欲しくない予感ほど、何故か的中するのは何でなんだろうか?

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