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嫉妬で狂ってしまうかも
しおりを挟む「た、ただいま、戻りました・・」
アルケーさんがまだ神殿から戻ってないと良いなぁ、と思いながら恐る恐る玄関のドアを開けると、アルケーさんがリビングから出て来た。
「お帰りなさい、オト。待ってましたよ」
ぱたぱたと新婚の奥さんみたいに駆け寄って来て、凄い笑顔で私を迎えてくれたアルケーさんだが、私の全身を確認すると一瞬、眉をひそめた。絶対に服装やら髪型のことがバレた。そう思い覚悟すると、アルケーさんはにっこり微笑んだ。う、この笑顔、見覚えが有る。思わず身構える私の肩から腕に掛けて、アルケーさんは労るようにそっと撫でる。
「お疲れでしょう?王子の所はどうでした?何か変わった事は?」
どう返事すべきなのか・・。正直に色々話してしまった方が良いのか。それとも此処は保留なのか。少し考えてから、私は後者を選んだ。アルケーさんにぎこちない笑顔を向ける。
「えっと・・まぁ・・はは、ちょっと疲れました」
私が言葉を濁すと、私の腰を抱くアルケーさんの腕の力が少し強まった気がした。
「・・そうなんですね、それは大変だったでしょう。あぁ、話は変わりますが、王子が城外に新居を構えたことは神殿でも噂になってますよ。おそらく王城や貴族院の方はもっと騒ぎになっているでしょうね」
アルケーさんは、私をリビングの方へと連れて行きながら「ふふ」と意味有り気に笑う。彼は今日、私がお城に行かずに街の中心のあの家に行った事を、既に知っているらしい。お城に上がる事が多いから、事前に知っていたのかもしれない。「保留」を選択したのはまずかったかもしれない。
「あの、アルケーさん、その、王子の新しい家の話は噂とか騒ぎとか、そんな大事になってるんですか?」
「オト、前に話しましたよね?第5王子は貴族の令嬢との縁談を尽く断ったって。その王子が急遽、新居を構える事にしたので、結婚準備では?と一部では言われているそうですよ。当たらずとも遠からず、と言った感じでしょうか?ふふ」
アルケーさんから聞かされる内容に、私はどう答えて良いかわからず黙り込む。確かにあの家は王子が私が通いやすいように、と用意してくれたのは事実だ。候補からトマリギになるのも近い。噂の内容は事実に近いかもしれない。火の無い所に煙は立たない、とはよく言ったものだ。
リビングに入るとアルケーさんに促され、並んでソファに腰掛けた。
「ところで、東のは?今日はこちらじゃないんですか?」
アルケーさんの口からミスティコさんの話題が出てぎくりとする。あぁ、もう今日は誰の話題が出ても駄目な気がして来た。私はなるべく平静を装って答える。
「その、色々、やらなきゃいけない事があるそうで、今夜は向こうに泊まるって」
「『今日は』・・全く。あれは、またこっちに帰って来るつもりなんですね」
「え、と・・はは」
アルケーさんの不満気な言い方に、私が愛想笑いで誤魔化そうとすると、ソファが軋んだ。アルケーさんがぴったりと身体を寄せて来たからだ。彼の匂いがぐっと強まる。
「ねぇ、オト・・二人きりなら遠慮する事は無いですね。沢山出しても良いっていう約束ですし」
アルケーさんは耳元で囁く。彼の声は甘い毒の様にとろりと私の一部を侵食し始める。気が緩んだ一瞬の隙を突かれ、アルケーさんは私の両肩を掴んでソファに押し倒した。不自然な態勢でソファに倒れた所為で足をテーブルに強かにぶつけ、私の短い悲鳴とガツッという衝撃音が部屋に響いた。
「あッ!いっ!たぁ・・」
私が呻くと、原因を作ったアルケーさんは私の上に乗ったまま「あぁ、これはあざになるかもしれませんね」と全く心のこもってない心配をしながら、ぶつけた箇所をゆるゆると撫でた。ぶつけた場所は膝小僧と甲の中間位だったが無防備な素肌をアルケーさんに触れられ、ぴくっと身体が反応する。こんな反応をしてしまうのは、アルケーさんの愛撫を私の身体が覚えてしまっているからだ。
アルケーさんは労る様に数回撫でると、スカートの裾から手を入れて来た。膝小僧から太ももへとゆっくり指を這わせる。完全に「そういう事をするぞ」という雰囲気の触り方に私の身体をまさぐる彼の腕を強く掴む。
「ちょ、ちょっと・・アルケーさん、こ、これ以上は駄目です」
「ふふ、どうしてです?何が駄目なんですか?」
「う、だって・・」
ぜ、全部駄目だ!時間は夕方だし、場所だって此処はリビング!それにシャワーだって浴びないと色々マズい!私が理由を言う前にアルケーさんの顔が近付く。夕方の影の差す中、彼の琥珀の様な目が光を当てた宝石みたいに底光りしている。その美しさに恐怖を覚え背筋がぞくりとする。
「私は今すぐに確かめないと・・嫉妬で狂ってしまうかもしれません。オト、そうなったら責任を取ってくれますか?」
「え、せ、責任?アルケーさん・・ど、どういう事・・」
アルケーさんは上半身を起こし「あぁ、オトはそうやってとぼけるつもりなんですね」と呟きながら、自分のベルトに手を掛ける。カチャカチャという金属音がやけに耳につく。とぼける?な、何の事・・。
「貴女が正直に話してくれるかと思って待っていましたが・・。時間切れです。第5王子と『服を着替える様な事』は有ったんですよね?」
いきなり核心を突かれ、血の気がざぁっと引いた。帰って来た時に「保留」を選んだが、その後、特に何も言われなかったので油断していた。・・私は初手からミスっていたのだ。模範解答の様な物を用意していなかったので、答えにぐっと詰まる。この場面での沈黙はまずい。何か言わなければ。
「う・・あ、確かに、服は、着替えましたけど、その・・」
「・・着替える為には、当然ですが一度、着ていた物を脱がなければならない。と言う事は王子にも、羽の下に隠していた身体を、曝け出したんですよね?オト」
「あ、あの・・」
「心当たりは?」
アルケーさんの「心当たり」「曝け出す」と言う単語に、王子にイカされた後、身に纏っていた物を全て取り払われて、恥ずかしい部分まで見られた事を、この最悪のタイミングで思い出す。顔に熱が集まるのが分かった。アルケーさんの腕を掴む私の手の力が緩む。私のそんな様子にアルケーさんは表情を歪める。
「私の可愛いオトには『心当たり』が有るようですね。では、仕方無いですね」
アルケーさんは私が狼狽えている間に慣れた手つきでスカートのホックも外して、強引にスカートも下着も一気にひきずり下ろした。此処は寝室じゃない、リビングだ。しかも皆が使うソファの上で下半身丸出しとか、このタイミングで万が一、億が一ミスティコさんが帰って来たら・・私の人生、終わってしまう!私は自分の秘所を手で隠しながら、悲鳴を上げる。
「アルケーさん!!だ、駄目です!い、言います!正直に答えますからッ!」
「・・いえ、大丈夫です。どうぞそのままで」
一体、何が大丈夫なのか。アルケーさんが大丈夫でも、私の方は全然全く大丈夫じゃない!
身体をひねって、ソファから転がり出ようとするが、アルケーさんの長い足がつっかえ棒のようになっていて転がり出る事もままならない。癇癪を起こした子どもみたいにじたばた抵抗するが、片手であっさり私の両手は拘束され、足の間つまり秘所に膝をガッツリ入れられる。こういう態勢を取られると、下手な動きをすれば彼の膝に私の大事な部分が当たってしまう。実際アルケーさんに膝で秘所をとんとんと突かれる。
「うぁ・・」
抵抗を諦めるしかない。
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