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もっと良い声で啼いてくれよ※
しおりを挟む王子の言葉の真意を探る為、私は恐る恐る瞳を上げ王子の表情を伺う。王子の表情は不機嫌な訳でも、何かが始まる様な甘い雰囲気でも無い。その事に少しだけ安堵する。
「・・あ、あの、王子。二人とも私を外に出さないようにするとか、そんな事、してませんよ」
私はしどろもどろになりながら言うと、王子が短い息を吐いた。
「はっ、それはそうだろう。願望と実際の行動は違うからな。俺だって違う」
言い終えると彼の顔が近付いて来た。「あっ」と思った時には、私の頬や額にチュッ、チュッと軽くキスをされた。柔らかい唇の感触がくすぐったくって、きゅっと目を閉じ「ひゃッ」と間抜けな声を上げてしまう。抵抗しなきゃ、と思うが肌に触れる彼の唇の感触が、そっと優しくて拒否の言葉は躊躇われる。
「・・お前は『嫌だ』とは言わないんだな」
黙って王子のキスを受け入れる私の心を見透かしたみたいに王子がポツリ呟く。そろりと目を開けると私を見下ろす緑の瞳と目が合った。少しだけ眉間に皺を寄せている。苦しそうにも見えるし、悲しそうにも見える。王子にそんな表情をさせているのは、私なんだろうか?下から右手を伸ばして、王子の左頬に遠慮がちに触れる。王子はふっと緊張の糸を緩め、自分の左手を私の右手に添えて、頬を摺り寄せた。
「・・本当に嫌だったら・・『嫌だ』って言いますよ」
「・・そうか」
王子は一言だけ呟くと、そのまま黙り私の右の手の平に自分の唇を寄せた。王子は少しだけ目を閉じて、自分の唇を私の手の平に押し付ける。
「・・お前に足枷を嵌めて、何処にも行けないようにしたい。北の所にも帰したくない」
乞う様な求める様な声色なのに、言っている事は不穏だ。さすがに言い返さないと。
「え、あの、さすがに足枷とか、帰さないのは・・やめて欲しい、です」
王子がくすりと笑う。
「『やめて』と言われると、ますますやりたくなるのは、どうしてなんだろうな」
そ、それって小学生男子が気になる子に意地悪するのと同じ心理なのでは。でも、王子に向かって「それって小学生と一緒ですよ」なんて言える訳無い。私がどう言い返そうかと考えていると、王子が私の首筋を指先でつぅと何度かなぞる。不意を突かれ「んッ!」と肩が揺れる。
「相談なんだが、足枷が駄目なら首輪にしてやろうか?お前の肌に合うのは・・そうだな、黒の首輪はどうだ?」
王子から流れて来る空気がより一層重い薔薇の香りになった気がした。私は無言で頭を左右に激しく振る。「嫌だ」を口に出さないのは、さっき「やめて」という言葉が逆効果になる、と王子が言った所為も有るし、口を開くと彼の香りを奥まで吸い込んでしまいそうな気がしたからだ。
「・・本当に嫌だったら、嫌って言うんだったよな。『嫌だ』と言わないと言う事は、お前の同意を得られたのか。はは、それなら・・とびきり上等な首輪を贈ろうか」
私の耳元に湿り気を帯びた息が掛かり、王子が薄く笑いながら囁く。ぞわりと背筋が震える。
「だ、駄目です!要らないですッ!く、首輪なんてひ、必要無いです!」
このまま黙っている方がマズいと判断して「駄目だ」とはっきり言葉にする。私を見下ろす彼の口角がにやりと上がる。
「はは、それは残念だな。俺は似合うと思うが?」
爪でなぞった私の首筋に王子が生暖かい舌を這わせた。濡れた舌が首筋を這う感触に「ぁん!やッぁ!」と嬌声を上げる。
「あぁ、成程。オオトリはそういう声で啼くんだな・・。北のにも、その啼き声を聞かせてるんだな。全く腹立たしい」
私たちしか居ないのに王子は秘密の話をするように私にそう耳打ちする。顔に熱が集まるのが分かった。自分の喘ぎ声をアルケーさんに聞かせている、と王子の口から言われるとは。
「・・そ、そういう事言うの、や、やめて下さい・・」
「はっ、お前は本当に、学習しないな」
私の弱々しい「やめて」に対して王子はそう答えると、私の両方の頬辺りをがしりと掴み、顔を背けられないようにした。あ、と思った瞬間には、乱暴に舌を咥内に差し込まれ、性急な動きで私の舌と自分の舌を絡める。くちゅ、じゅると濡れた音と王子の短く荒い息遣いが寝室に響く。
キスの感触、薔薇の匂い、彼の息遣い。五感全てで王子を感じて熱が全身の隅々まで行き渡る。身体が火照って、お腹の奥がきゅうきゅう疼くのが分かった。
「あ、んッ・・はぁ・・」
私が喘ぎながらも、彼の下から何とか逃れようと身を捩ると、「逃げるな」という低い声が降って来た。王子の右手が私の胸元に置かれ、ほぐすみたいにやわやわと胸を揉まれる。キスは荒々しかったのに身体への愛撫は躊躇いがちだ。私の反応を伺っているようにも思える。
「・・どうする?お前が『嫌だ』と言わないなら、このまま止めないが?」
王子は荒い呼吸の合間にそう言い、ピンッと立ち上がっていた乳首をきゅっと服の上から摘まむ。私が「あッ♡あぁッ!」と一層高い声を上げると、王子の手の平にさっきより力が籠る。胸が王子の手付きに合わせて形を変え、彼が興奮している事が手の平の熱さを通して伝わって来る。身体の奥からとろりとした蜜が湧く。
私が抵抗しないのを確認すると、スカートの裾から王子の手が入り太ももを撫でた。数度、太ももに骨ばった指が這い、自然に膝の力が抜ける。足をだらしなく開いて下半身が無防備になってしまう。王子と目が合うと、緑の瞳が本物の宝石みたいに底光りしている様に見えた。
「さぁ、もっと良い声で啼いてくれよ。俺のオオトリ」
甘くそう言われ、私はじっと王子の顔を見詰める。彼の瞳の光には暗示の力でも有るのか、それとも雰囲気に呑まれてしまったのか本当に小さく頷いてしまう。
素直に彼の言葉を受け入れたからか、王子はやや乱暴に私の下着を指で横にずらす。濡れた秘所が空気に晒され、ひやりとする。私がぶるりと震えると、彼は私が不安から震えたと思ったらしい。
「・・大丈夫だ。お前の嫌がる事はしない」
私にそう語りかけ、身体の中心の割れ目に指先をくちゅりと沈ませ、蜜をかき混ぜる様に指を滑らせた。十分に潤っていたのもあり、それだけでびりびりした快感が背筋へと抜ける。
数度、指を往復させると、彼の指先がぷくりと立ち上がっていた花芽に引っ掛かり「やッ!あぁんッ♡」と我慢が出来ずに悲鳴に近い声で啼いてしまう。こんな反応をしたら王子に自分の弱い所を「此処ですよ」と晒しているのも同然だ。
王子は花芽の周りと下の入り口を指でゆっくりと丁寧に解す。時折二本の指で花芽を挟み小刻みにぷるぷると揺らした。私の弱い部分をピンポイントで攻めて来る刺激に、「ん、んッ!」と声を漏らしながら王子に押し付けるように腰が浮いてしまう。奥から止めどもなく蜜が溢れる。その蜜が潤滑剤みたいになって、王子の指の滑りが良くなって気持ち良さが一層増す。
私は、この刺激に本当に弱い。自分でも分かっている。気を抜いたらこのまま軽く一回、イッてしまうかもしれない。
「あんッ♡あぁッ♡ん、そ、それ、あぁんッ♡や、やだぁ♡あぅ・・んんッ♡」
「あぁ、このままイクと良い・・」
ふと、窓からの光が王子の顔に差し込む。そ、そうだ。今は昼間だし、下にはエリヤさんだって居る。それに、そろそろミスティコさんたちが帰って来てもおかしくない。こ、此処で達したら、普通通りに出来ないかもしれない。何とか残っていた自制心で、私の下半身をまさぐる王子の手を止めようと腕を伸ばす。
「・・考え事か?随分、余裕だな。オオトリ」
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