名前を忘れた私が思い出す為には、彼らとの繋がりが必要だそうです

藤一

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そ、そうだった・・。
思い出してみれば第5王子との面会前に受けた注意事項は、アルケーさんが朝早く登城した後に言われていたからアルケーさんは全く知らないんだった。
ミスティコさんの方をちらっと見ると、冷や汗を掻いている私とは対称的に涼しい顔をしている。

「ミスティコ、オオトリ様に何を吹き込んだんですか?」
「何って、まぁ・・アルケーが想像している通りだと思うが。なんなら今ここで、答え合わせでもするか?」

ミスティコさんの言葉にアルケーさんの眉間に皺が寄る。
ミスティコさんの言い方!わざとアルケーさんの癪に障る様な言い方をしている様な気がする。
二人の雰囲気がピリピリし始め、私が慌てる。

「アルケーさん、あのですね、詳しい話は後から!後からしましょう。えーっと、そうだ!まずは夕食にしましょう。お腹空いたでしょう?ミスティコさんもご一緒にいかがですか」

本音を言えば、自分の部屋に引っ込みたいが、放置するには二人の空気が悪過ぎる。
私の提案に対して、ミスティコさんは「いや、結構です」と言い、眼鏡をシャツのポケットに仕舞い席を立つ。

「第5王子の件の報告が有りますので、これで失礼します。夕食はお二人でどうぞ」
「・・そうですか」
「急な事で申し訳無いですが、早々に部屋を移る準備を・・と言ってもオオトリ様は荷物をお持ちでないから身一つで移れますね」

ミスティコさんはそう言うと、スタスタ出入り口の扉に向かい「では、また明日」と言い、するりと出て行った。
ぐぬぬ・・引っ掻きまわして颯爽と去って行くの本当に止めて欲しい。やっぱり上司にしたくないタイプだ。
隣のアルケーさんに恐る恐る視線を向けると先程と変わらず笑顔だ。・・いや、笑顔なのか?実は、めちゃくちゃ怒っている顔なのでは?

「おや、東の副司祭の逃げられてしまいましたね。残念です」
「あはは・・」
「オオトリ様、食事と第5王子との件、どちらを先に済ませましょうか?私はどちらが先でも構いませんよ」

アルケーさんがきゅっと私の手を握り「どちらから始めましょうか?」と優しい声で聞いてくれたが、三日月の瞳は獲物を見付けた獣の様だった。


結局、食事を先にするより、アルケーさんの尋問を先にした方が、まだ精神衛生上、良さそうな気がしたので私は食事を後回しにした。
私が口を開こうとしたら、隣のアルケーさんの指が私の唇に押し当てられ「私の目を見て、正直に答えて下さいね」と釘を刺される。
私はこくこく頷くと、唇から指が離れた。

「まず、伺いたいのはミスティコの言っていた『相性の確認』とは一体、何の事ですか?」
「そのですね、いずれ結婚する可能性も有るから口づけ位しといた方が良い、と言われまして。それも一理あるな、と思い協力する事にしました」
「協力・・と言う事は、第5王子と口づけをされた、と?」

恥ずかしいので察して欲しかったが、アルケーさんは首を傾げて私の答えを待っている。仕方が無いので一度だけ頷く。

「・・そうですか。確かに理解は出来ますよ。そう言った相性は軽視出来ない。大切な事です」

アルケーさんが理解を示してくれた事で、私はホッと安心する。
じゃあ、この話はこれで終わりにしても良いかなと思い「じゃあ、もう良いですか?」とアルケーさんに確認する。

「ふふ、まさか。もっとお伺いしたい事がございます」
「もっと・・って。他に何が聞きたいんですか?」
「そうですね・・第5王子との相性はどうでした?」

アルケーさんはそう言うと、私の顎に指を掛けて、口を少し開かせ、顔を近付けた。
感想を。感想を言えという事か!しかもこの状態で。
いつもはアルケーさんの匂いは「良い匂い」と思えるが、今は「危険な匂い」の様に感じられる。
急に鼻先がぶつかりそうな距離にしどろもどろになる。

「どうって言われましても・・」
「口付けより先に進んでも良さそうでしたか?・・それとも、もう?」

私はアルケーさんの言葉に驚いて、彼の瞳をまじまじと見た。
アルケーさんは「キス以上の事を済ませたのか?」って聞いて来たんだよね。私は首を振って否定した。

「本当に?」
「・・嘘を吐く理由が有りませんよ。だから、この話はもう」

「この話は止めましょう」と言いたかったのだが、言えなかった。何故なら話の途中でアルケーさんの唇が私の唇を塞いだからだ。

「う・・ん」

アルケーさんの少し乾いた唇の感触が「男性」を感じさせて、ぶるりと背筋が震えた。
前に一度、アルケーさんとはキスをした事は有るが、あの時は私を慰める為だったのか熱っぽい感じはしなかった。
でも、今回は違うと肌感覚で感じる。
キスだけなのに、アルケーさんに食べられている様な感覚に襲われる。


アルケーさんは私の唇の感触を確かめる様に角度を変えてキスを繰り返す。
最初は本当に「重ねる」と言う感じだったが、今は下唇を軽く食まれたり、舌の先で唇をなぞられる。与えられる刺激にびくっと身体が反応してしまう。
アルケーさんの舌が「もっと口を開けて」とおねだりする様に口内に侵入して来ると、下腹部の奥がきゅうと疼いた。
こんなキスをされたら、駄目だ。自制心がグズグズに溶けてしまう。
求められるまま、唇を開くとアルケーさんの舌が入って来て私の舌先と触れ合い、絡め合う。

「・・ふ、はぁ」

普段、人に見せない部分をこうやってさらけ出すのは、何度体験しても恥ずかしくて、とんでもなく気持ち良い。
しばらく舌を絡め合っているとアルケーさんの舌が一旦引いた。その間に、自分の息を整える。
こういうキスは好きだけど、息がしづらいからインターバルを入れてくれたのは有り難い。

「はぁ」

私の呼吸が整った事を確認すると、アルケーさんは後頭部に手を回して私を引き寄せる。
お互いの鼻先が触れ、まじまじと彼の顔を見ると、少し紅潮している様な気がする。肌の色が違うからいまいち良く分からない。

「私との相性も、もっと確認しましょうね」

湿度の高い声で囁かれ、ぐっと口内に舌が差し込まれる。乱暴で少し苦しい位だ。でも、嫌な気持ちは全然しない。寧ろ嬉しい。

「ん・・ん」

息苦しさから来るのとは違う吐息が漏れる。その反応を待っていたかの様にアルケーさんの片方の手がそっと私の胸に添えられた。
思わずびくっと身体が跳ねる。
こっちの世界に来てから、上の下着は身に着けていなかったので、手を添えられただけで身体が反応してしまう。
恥ずかしくて、思わずアルケーさんの肩を押し返す。
品行方正なアルケーさんらしく、そっと身体を離してくれたが、アルケーさんは押し返された理由が分からない、と言った表情だ。

「・・何か気に障る事でも?」
「ぜ、全然。アルケーさんの責任じゃないんです・・その恥ずかしくて」

私は自分の胸を隠す様にして答える。
この時の私は、雰囲気に呑まれて、アルケーさんが意地悪な人だと言う事をすっかり忘れていた。

私の「恥ずかしい」と言う言葉にアルケーさんは楽しそうに「ふふ」と笑うと、私の両手を取った。

「どうぞ、恥ずかしがらないで、私に良く見せて下さい」

アルケーさんは私の胸元辺りをじっと見詰める。服の上からとは言え、胸元を凝視されるのは落ち着かない。私がそわそわしているとアルケーさんが取っていた手を放してくれた。
やっと解放されたと思って、私が胸元を隠そうとするより一歩早くアルケーさんの手が私の胸に伸びる。

「あぁ、感じてくれていたんですね。光栄です」

アルケーさんはそう言うと、ピンポイントで私の左右の胸の突起をワンピースの上からきゅっと摘まんだ。摘ままれた場所から電気の様な快感が全身に走る。

「きゃあ!」

悲鳴なのか悦んでいるのか分からない声で鳴く。
自分の声に驚いて、思わず自分の口を手で塞ぐ。忘れていたが、ここは男性専用の居住区。声が漏れたら大変だ。
アルケーさんはそんな事、お構い無しにワンピースの上から胸をやわやわと揉み始める。
胸全体を柔らかくゆっくり揉まれて、胸の突起がワンピースと擦れる。その刺激が泣きそうな位に気持ちが良い。
服の上からでも分かる位に尖った胸の突起が「もっともっと」とねだっている様で恥ずかしい。
眉間に皺を寄せて鳴き声を我慢している私にアルケーさんは首を傾げて尋ねる。

「声を上げるのが恥ずかしいんですか?こんなに可愛らしい鳴き声なのに」
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