名前を忘れた私が思い出す為には、彼らとの繋がりが必要だそうです

藤一

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ようこそ、オオトリ様

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けれど。
僕は気がついた。明らかな異変に。
水瀬の様子がおかしい。気のせいかもしれないが、水瀬の手が震えている。そして、横顔で見えた唇は、真っ青だった。
これは危ない。人の邪魔にならないように、水瀬に近づいた。
「水瀬…?」
水瀬にだけ聞こえるように、僕は言った。
水瀬は、ゆっくりと振り返った。その表情は、やはりいつもとは違った。何かに怯えているような顔をしている。
「具合、悪いのか?」
水瀬は、何も答えなかった代わりに、ゆっくり首を縦に1つ振った。その動作さえも苦しそうだ。
「……吐き気、が…」
水瀬は苦しそうに、僕の耳元に訴えた。その声を聞くだけで、僕の胸は苦しくなる。
「待ってろ」
僕は、もう走り出していた。
頭の中にあるのは、ただ1つ。水瀬を助けなくては。そんな脳内の指示は、僕の体を突き動かすには十分だった。
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