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リスランダからの脱出
油断
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「ふう…痛ってえなぁ。
ったく、軟弱な勇者にしてはちったぁやるみたいじゃねえか。」
「お前…傷はどうした…?
俺は確かに斬ったはずだ。」
そんな筈はない…あの剣には確かな手応えがあった。
手を緩めた訳でもない。
なんせ、殺すつもりだったのだから。
なのに何故だ…何故奴の体にはーー
「きずぅ~?傷なんてどこにある。
見当たらねえなぁ。」
ギル・オーガイの体には音宮が付けたはずの傷が無くなっていた。
目視でも確認した。
だが実際にギルの体には俺の付けた傷がない。
だとすれば、あの時俺が斬ったのは一体何だったんだ…?
俺には奴を斬った手応えが確かにあった。
幻だということはないだろう。
考えられるのは何らかの手段で治したという線だが、スキルは割れている以上、治癒魔法という線しか残っていない。
魔導具の能力の可能性も考えたが、ぱっと見奴が持ち合わせている武具にそれらしいものも見当たらない。
とりあえず、もう一発食らわせて確認してみるか。
「やる気満々じゃねえか。イイねぇ~。
そう来なくっちゃ!!!!」
音宮の短刀とギルの折れた剣がぶつかり合う。
「さっきの出来事をもう忘れたか!」
超振動ブレードと化した音宮の短刀がギルの剣に食い込み。
短刀はそのままギルの剣を更に切り裂き、半分程に折れていた剣は更に短くなる。
しかし、ギルも全く学習していない訳ではなく、体への直撃は避けた。
「ふぅ~、危ねえ危ねえ。」
「へらへらしてんじゃねえよ。
お前の剣はもう殆ど残ってねえぞ。
もう諦めたらどうだ。」
「バカな事言ってんじゃねえよ。
まだまだこれからが楽しいところじゃねえか。」
ゲラゲラと笑い声を上げながら馬鹿正直に正面から向かって来る。
まったく…何がそんなに楽しいんだか…
俺が強くなったというのもあるだろうが、騎士団隊長にしては弱すぎる。
ただ他の奴より少しタフなだけだろ。
治癒魔法のレベルがどんなに高かろうとネタさえ割れていればなんて事ない。
回復する前に首を刎ねて仕舞えば終わりだ。
どんな人間でも、死んだ後に蘇生出来るなんて馬鹿げた芸当は不可能な筈だ。
こんな奴にかまってる時間が勿体無い。
次でケリをつけるか…
セルジール程の魔法を持っている訳でもなければ、ファング程の身体能力を持っている訳でもない。
その上、どこに隠し持っているかはわからないが魔導具の効果は破れている。
恐れる要素は何もない。
音宮はギルを迎え討つかのように走り出した。
まだだ…奴の剣が短くなっている今がチャンス。
確実に短刀を突き刺せる間合いギリギリまで接近する!
「おいおい、そんなに近ずくなんて俺の事少し舐めすぎちゃいねえか。」
「お前だって剣が折れてんだ。
間合いはまだだろ。」
「は!誰の剣が折れてるってぇ。
よく見てみろよ。」
折れた剣を振り下ろすギル。
あの剣の短さではどう考えても届かない。
そんな間合いなのに躊躇なく振り下ろす。
何かある。
そう思いギルの剣に注目していると、いつの間にか刀身が治っており、最初の長さへと戻っていた。
しまった!あの剣が魔導具か!!
慌てて防御に回った音宮はなんとか剣を受け切る事が出来たものの、体勢を崩されてしまう。
「形成逆転って感じだなぁ。」
「もう忘れたのか?
お前と俺の剣じゃ切れ味が違うんだよ。」
刀身を超振動ブレードに変え、再び剣を斬ろうとする音宮だったが、どんなに振動数を上げようとも刃が全く通らない。
「ご自慢の切れ味とやらはどうしたぁ。
お前がやらねえんならこっちからいくぜぇ。」
次の瞬間、ギルから今まで感じた事のない程の魔力を感じる。
これは……戦う前より魔力量が上がってる。
おいおい…この量、フロントフェンリルより多いんじゃないか…?
これは、戦う相手を間違えたっぽいな…
自然と汗が落ちてくる。
ギルの速度が今までとは比べものにならない程に上昇し、目では動きを捉えきれない。
その速度はスキルを使用したファングと同等だ。
恐るべきはそれをスキルなしの単純な魔力による身体強化で行っているギルの底なしの魔力量である。
焦るな…目で追えずとも俺には反音響がある。
所詮相手は人間。
心臓か首を狙えばそれで終わりだ。
勝ち目がなくなった訳じゃない。
「よう、戦闘中に考え事か?
随分と余裕だな。」
いつの間にか目の前へと迫り、音宮の胴体目掛けて剣を振り抜こうとしているギル。
しかし、音宮も感知しており超振動ブレードで対抗しようと受け止めるように短刀を前に出す。
ギルの剣と音宮の短刀がぶつかり合った瞬間、砕け散ったのは短刀の方だった。
「なに…!」
「お前は終わりだ。
ちょっとは楽しめたぜ。」
剣の勢いは劣える事なく、そのまま音宮の体を横凪に切り裂いた。
鮮血が宙を舞う。
ったく、軟弱な勇者にしてはちったぁやるみたいじゃねえか。」
「お前…傷はどうした…?
俺は確かに斬ったはずだ。」
そんな筈はない…あの剣には確かな手応えがあった。
手を緩めた訳でもない。
なんせ、殺すつもりだったのだから。
なのに何故だ…何故奴の体にはーー
「きずぅ~?傷なんてどこにある。
見当たらねえなぁ。」
ギル・オーガイの体には音宮が付けたはずの傷が無くなっていた。
目視でも確認した。
だが実際にギルの体には俺の付けた傷がない。
だとすれば、あの時俺が斬ったのは一体何だったんだ…?
俺には奴を斬った手応えが確かにあった。
幻だということはないだろう。
考えられるのは何らかの手段で治したという線だが、スキルは割れている以上、治癒魔法という線しか残っていない。
魔導具の能力の可能性も考えたが、ぱっと見奴が持ち合わせている武具にそれらしいものも見当たらない。
とりあえず、もう一発食らわせて確認してみるか。
「やる気満々じゃねえか。イイねぇ~。
そう来なくっちゃ!!!!」
音宮の短刀とギルの折れた剣がぶつかり合う。
「さっきの出来事をもう忘れたか!」
超振動ブレードと化した音宮の短刀がギルの剣に食い込み。
短刀はそのままギルの剣を更に切り裂き、半分程に折れていた剣は更に短くなる。
しかし、ギルも全く学習していない訳ではなく、体への直撃は避けた。
「ふぅ~、危ねえ危ねえ。」
「へらへらしてんじゃねえよ。
お前の剣はもう殆ど残ってねえぞ。
もう諦めたらどうだ。」
「バカな事言ってんじゃねえよ。
まだまだこれからが楽しいところじゃねえか。」
ゲラゲラと笑い声を上げながら馬鹿正直に正面から向かって来る。
まったく…何がそんなに楽しいんだか…
俺が強くなったというのもあるだろうが、騎士団隊長にしては弱すぎる。
ただ他の奴より少しタフなだけだろ。
治癒魔法のレベルがどんなに高かろうとネタさえ割れていればなんて事ない。
回復する前に首を刎ねて仕舞えば終わりだ。
どんな人間でも、死んだ後に蘇生出来るなんて馬鹿げた芸当は不可能な筈だ。
こんな奴にかまってる時間が勿体無い。
次でケリをつけるか…
セルジール程の魔法を持っている訳でもなければ、ファング程の身体能力を持っている訳でもない。
その上、どこに隠し持っているかはわからないが魔導具の効果は破れている。
恐れる要素は何もない。
音宮はギルを迎え討つかのように走り出した。
まだだ…奴の剣が短くなっている今がチャンス。
確実に短刀を突き刺せる間合いギリギリまで接近する!
「おいおい、そんなに近ずくなんて俺の事少し舐めすぎちゃいねえか。」
「お前だって剣が折れてんだ。
間合いはまだだろ。」
「は!誰の剣が折れてるってぇ。
よく見てみろよ。」
折れた剣を振り下ろすギル。
あの剣の短さではどう考えても届かない。
そんな間合いなのに躊躇なく振り下ろす。
何かある。
そう思いギルの剣に注目していると、いつの間にか刀身が治っており、最初の長さへと戻っていた。
しまった!あの剣が魔導具か!!
慌てて防御に回った音宮はなんとか剣を受け切る事が出来たものの、体勢を崩されてしまう。
「形成逆転って感じだなぁ。」
「もう忘れたのか?
お前と俺の剣じゃ切れ味が違うんだよ。」
刀身を超振動ブレードに変え、再び剣を斬ろうとする音宮だったが、どんなに振動数を上げようとも刃が全く通らない。
「ご自慢の切れ味とやらはどうしたぁ。
お前がやらねえんならこっちからいくぜぇ。」
次の瞬間、ギルから今まで感じた事のない程の魔力を感じる。
これは……戦う前より魔力量が上がってる。
おいおい…この量、フロントフェンリルより多いんじゃないか…?
これは、戦う相手を間違えたっぽいな…
自然と汗が落ちてくる。
ギルの速度が今までとは比べものにならない程に上昇し、目では動きを捉えきれない。
その速度はスキルを使用したファングと同等だ。
恐るべきはそれをスキルなしの単純な魔力による身体強化で行っているギルの底なしの魔力量である。
焦るな…目で追えずとも俺には反音響がある。
所詮相手は人間。
心臓か首を狙えばそれで終わりだ。
勝ち目がなくなった訳じゃない。
「よう、戦闘中に考え事か?
随分と余裕だな。」
いつの間にか目の前へと迫り、音宮の胴体目掛けて剣を振り抜こうとしているギル。
しかし、音宮も感知しており超振動ブレードで対抗しようと受け止めるように短刀を前に出す。
ギルの剣と音宮の短刀がぶつかり合った瞬間、砕け散ったのは短刀の方だった。
「なに…!」
「お前は終わりだ。
ちょっとは楽しめたぜ。」
剣の勢いは劣える事なく、そのまま音宮の体を横凪に切り裂いた。
鮮血が宙を舞う。
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