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リスランダからの脱出

勇者の過ち

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「わお!思ったより簡単に終わったわね。
 それにしても…響、なんでそんなに苛ついてるの?」

「うるさい。
 色々と考えてるところなんだよ。」

「もお~、私にまで八つ当たりしないでよ。
 なんでそんなに怒ってるの~」

 決着は意外にも一撃で終わった。
 音宮に切られたギルが起き上がってくる様子もない。

「クロエ、お前は知ってたのか?
 この国に魔王軍がいないって事。」

「まあね。ってか、この世界で旅してる人なら誰でも気付くと思うけど…
 まあ、そんな人は全員犯罪者扱いされるんだけどね。
 言っておくけど犯罪者=良い人って訳じゃないからね。
 普通に何らかの罪犯して追われてる人が殆どだし気付いても誰も魔王軍なんて興味ないから放置されてる。
 居ても居なくてもどうでも良いんだよ。
 私だって国を追われたのは別の理由。
 居ないことに気付いたのは旅をしてからだから。
 それに他にも各国の権力者たちなら知ってるはずよ。
 そこのギルみたいに。」

「目的は?」

「さあ?
 昔は本当に居たみたいなんだけど、それこそ勇者って人が倒しちゃったみたいでね。
 その後から魔王軍なんて無くなったんじゃないかな。
 建物は壊す、食糧や装備品は国持ち、建物の被害額も相当あったのに肝心の勇者はそんなの気にも留めず街中の女と遊び放題。
 挙げ句の果てには子供を作るだけ作って何処か別の世界に消えていったそうよ。
 それの被害額が大きくて税金上げてなんとかしてたみたいなんだけど…これ以上は私でもわからないわ。」

「勇者はどうなった?
 話を聞く限り国王が帰したという訳では無さそうだが…」

「勝手に消えてったみたい。
 自分の意思で帰れたんじゃないの?
 でも、数年後この世界に勇者が置いてった子供たちが再度召喚する事に成功したみたい。
 結果的には自分の子供に殺されちゃうんだけどね。
 その時使われたのが今も続いてる勇者召喚の術って話。
 勇者に関しての話は絵本にもなってて、私たちは小さい頃から勇者は悪い人って聞いて生きて来たわ。」

 なんとなくだが王国騎士団が俺を消そうとしている理由がわかった。
 真偽は定かではないが、過去の勇者の行いのせいで俺たちがとばっちりを受けている事は確かだ。
 まあ、そんな事は実際俺にとってはどうでもいい。
 別に魔王軍が居なかろうと、この世界の人々から怨まれていようとそんな事は気にしない。
 俺が一番腹を立てているのは魔王軍が居ないってところだ。
 クソ…!魔王がいなけりゃ俺たちは……

「ねえ?響が勇者って事は知ってるけど、何をそんなに怒ってるの?
 魔王がいないって喜びはしても、怒る要素ないと思うんだけど…
 むしろラッキーじゃん。
 響、戦う気無さそうだったし。」

「馬鹿か。
 俺は戦うつもりはないが魔王には居て貰わないと困る。
 魔王がいないと俺はどうやって元の世界に帰ったらいいんだ?
 これじゃあ俺の、クラスメイトに魔王倒して貰って俺だけ楽するって作戦が台無しだ!
 これがイラつかずにいられるか。」

 元の世界に帰る手立てを失ってしまった。
 もとより、魔王を倒したからといって、元の世界に戻れる保証もなかったのだが、それでも賭けるには十分価値のあるものだった。
 それが魔王討伐だ。
 しかし、肝心の魔王がいないとなれば俺たちは一体何をしたら元の世界に帰る事が出来る。
 国王は知ってるかも知れないが当てにはならない。
 なんせ勇者に怨みを持ち、影では殺そうとしている奴らだ。
 そんな奴がわざわざ元の世界に帰れる方法など調べる訳もない。
 振り出しに戻るどころか、後退しちまってるじゃねえかよ…

 元の世界に帰る手段を考えてる音宮に対し、クロエは別の事で不思議に思っていた

「ねえ、これっていつ解除されるの?」

 怒りで周りが見えなくなっていた。
 確かな手応えと倒れていく姿からつい倒したものと思い込んでしまい、肝心なことを見失っていた。
 おかしいだろ。
 倒せばスキルは解除される。
 これはファング戦で実証済みだ。
 だが、このフィールドは解除されず、二人が話してる間もそのままであった。
 つまりーーーー

「ほっとかれると寂しいじゃねえの。
 俺も混ぜてくれやぁ。」

 ギル・オーガイは生きている。
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