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リスランダからの脱出
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フロストフェンリルの咆哮と共に、氷の礫が飛んでくる。
攻撃範囲は広く、回避は間に合わない。
「お前の攻撃は俺のスキルと相性が悪いんだよ。」
音宮が指を鳴らし、衝撃波を放つと氷の礫は砕け散る。
奴の氷が通用しない。これが俺の唯一のアドバンテージだ。
クロエが魔法を準備するのにも時間が掛かるだろうし、何よりも確実に当てる為にやつの動きを止めなければいけない。
一撃でいい。
隙をついて攻撃を当てさえすれば動きは止まる。
『音響』での打撃技である重攻音《フォルテ》最大の強みはどんなに格上の相手だろうと等しくダメージを与えらえるところだ。
俺のスキルは音の揺れを利用し、衝撃波を生み出して攻撃している。
重攻音《フォルテ》は相手の体内で衝撃を発生させている為、どんな相手でも確実にダメージを与える。
それはこのフロストフェンリルとて同じだ。
いくら表面を魔力で護っていようとも、体内まで護れる生物に俺は出会ったことがない。
内部から破壊される衝撃を受ければどんな生物でも動きを止める筈だ。
当てれば動きは止められる。
だが、それがなかなかできずにいた。
音宮の事を警戒してなのか、フロストフェンリルは上空に留まり魔法による氷柱や氷塊を振り落として来るばかりだ。
決して自分からは近寄らず、遠距離攻撃でジワジワと体力を削られている。
埒があかない。
この後に王国兵士と戦わなければいけない事を考えるともうこれ以上戦闘を行うのは危険。
次に奴が仕掛けて来た時がチャンスだ。
息を呑み、フロストフェンリルの攻撃の起こりを狙う。
勝機はある。
フロストフェンリルは魔法攻撃を仕掛けて来る時、遠吠えを行う癖がある。
それが魔法を使うにあたって必要なものかどうかは定かではないが、そんなことはどうでもいい。
鳴きさえしてくれればそれで…
睨み合いが行われる。
まだだ…焦るな。
先に動けば負ける。
慎重に…一瞬の隙を見逃すな。
ーーーーーー今だ!!
フロストフェンリルが口を開け、唸り声を上げたその刹那、音宮はスキルを発動する。
唸り声を特大音量としフロストフェンリルへぶつけた。
「自分の技でやられる気分はどうだ?
獣ってのは人間よりも耳がいい。
気分悪りぃだろ。」
脳が揺られ、フロストフェンリルの動きが僅かに止まった。
その隙を狙い、体内へと重攻音《フォルテ》を叩き込む。
「クロエ!今だ!」
「オッケー、待ってたわよ。」
僅かな隙を逃さない様、二人は息の合った連携で全力をぶつける。
フロストフェンリルの足元と上空の二箇所に魔法陣が現れる。
あれは確か、ドニー村でセルジールが使っていたーー
「あの時貰っていて良かったわ。
貴方強いからオマケに仙気加えてパワーアップさせちゃう。
裁きの聖光」
村で見た時よりも巨大な光の柱がフロストフェンリルを飲み込む。
「響!早く逃げるわよ。
この技でも大した足止めにはならない。」
目を凝らしてみるとフロストフェンリルの周りだけ凍っているのがわかる。
まさか…魔法を凍らせているのか…?
今はまだ完全に凍りつくまでは行っていないが、それも時間の問題だ。
やはり、今の俺たちではこいつに勝つ事は出来ない。
二人は一目散にその場から立ち去る。
「道は?」
「着いて来い。
お前の魔法のお陰で兵士が釣れた。
何人か森の中に入ったきたみたいで手薄になってる所がある。
そこを狙うぞ!」
「不幸中の幸いってやつね。
私たちついてるんじゃない。」
「そういうのは思っても口に出さない方が良いんじゃないか?
なんかフラグっぽいぞ…」
「な~に言ってんの。
口にしてもしなくても、起きる出来事に変わりはないわよ。
…響って意外と占いとか信じるタイプ?
中には本物もいるだろうけど、騙しに来る人も大勢いるから信じすぎちゃダメよ。」
「俺はそういう曖昧なものは信じてない!
…そろそろ抜ける。気を付けろよ。」
全速力で森を駆け抜け、出口まで辿り着く。
水の流れる音が聞こえる。
此処を抜けて橋を越えればこの国とはおさらばだ。
オスヴィンは目と鼻の先にある。
森を抜けた二人の前には一人の兵士が石に座り待ち構えていた。
「よお…やっと来たのかよ。
待ちくたびれたぜ。」
2メートル程の体躯に体には傷跡が見える。
手には剣を持っており、何より伝わるのはこの魔力量だ。
フロストフェンリルの時とはまた別の、重く嫌な気配を感じる。
「…あいつは当たりか?」
「残念ながら大外れ。
厄介な奴が来たものね。
彼の名はギル・オーガイ。
元死刑囚にして、その強さを買われ騎士団隊長へと任命された異例の人間よ。
戦う事が大の好みで噂では100人以上の人間を殺して来たらしいわ。
こいつを捕まえる為に、前任の隊長が何人かやられたのは有名な話よ。」
「へえ~、俺の事よく知ってくれてるじゃねえか。
だったら自己紹介は必要ねえよなぁ。
さあ、始めようぜ!」
攻撃範囲は広く、回避は間に合わない。
「お前の攻撃は俺のスキルと相性が悪いんだよ。」
音宮が指を鳴らし、衝撃波を放つと氷の礫は砕け散る。
奴の氷が通用しない。これが俺の唯一のアドバンテージだ。
クロエが魔法を準備するのにも時間が掛かるだろうし、何よりも確実に当てる為にやつの動きを止めなければいけない。
一撃でいい。
隙をついて攻撃を当てさえすれば動きは止まる。
『音響』での打撃技である重攻音《フォルテ》最大の強みはどんなに格上の相手だろうと等しくダメージを与えらえるところだ。
俺のスキルは音の揺れを利用し、衝撃波を生み出して攻撃している。
重攻音《フォルテ》は相手の体内で衝撃を発生させている為、どんな相手でも確実にダメージを与える。
それはこのフロストフェンリルとて同じだ。
いくら表面を魔力で護っていようとも、体内まで護れる生物に俺は出会ったことがない。
内部から破壊される衝撃を受ければどんな生物でも動きを止める筈だ。
当てれば動きは止められる。
だが、それがなかなかできずにいた。
音宮の事を警戒してなのか、フロストフェンリルは上空に留まり魔法による氷柱や氷塊を振り落として来るばかりだ。
決して自分からは近寄らず、遠距離攻撃でジワジワと体力を削られている。
埒があかない。
この後に王国兵士と戦わなければいけない事を考えるともうこれ以上戦闘を行うのは危険。
次に奴が仕掛けて来た時がチャンスだ。
息を呑み、フロストフェンリルの攻撃の起こりを狙う。
勝機はある。
フロストフェンリルは魔法攻撃を仕掛けて来る時、遠吠えを行う癖がある。
それが魔法を使うにあたって必要なものかどうかは定かではないが、そんなことはどうでもいい。
鳴きさえしてくれればそれで…
睨み合いが行われる。
まだだ…焦るな。
先に動けば負ける。
慎重に…一瞬の隙を見逃すな。
ーーーーーー今だ!!
フロストフェンリルが口を開け、唸り声を上げたその刹那、音宮はスキルを発動する。
唸り声を特大音量としフロストフェンリルへぶつけた。
「自分の技でやられる気分はどうだ?
獣ってのは人間よりも耳がいい。
気分悪りぃだろ。」
脳が揺られ、フロストフェンリルの動きが僅かに止まった。
その隙を狙い、体内へと重攻音《フォルテ》を叩き込む。
「クロエ!今だ!」
「オッケー、待ってたわよ。」
僅かな隙を逃さない様、二人は息の合った連携で全力をぶつける。
フロストフェンリルの足元と上空の二箇所に魔法陣が現れる。
あれは確か、ドニー村でセルジールが使っていたーー
「あの時貰っていて良かったわ。
貴方強いからオマケに仙気加えてパワーアップさせちゃう。
裁きの聖光」
村で見た時よりも巨大な光の柱がフロストフェンリルを飲み込む。
「響!早く逃げるわよ。
この技でも大した足止めにはならない。」
目を凝らしてみるとフロストフェンリルの周りだけ凍っているのがわかる。
まさか…魔法を凍らせているのか…?
今はまだ完全に凍りつくまでは行っていないが、それも時間の問題だ。
やはり、今の俺たちではこいつに勝つ事は出来ない。
二人は一目散にその場から立ち去る。
「道は?」
「着いて来い。
お前の魔法のお陰で兵士が釣れた。
何人か森の中に入ったきたみたいで手薄になってる所がある。
そこを狙うぞ!」
「不幸中の幸いってやつね。
私たちついてるんじゃない。」
「そういうのは思っても口に出さない方が良いんじゃないか?
なんかフラグっぽいぞ…」
「な~に言ってんの。
口にしてもしなくても、起きる出来事に変わりはないわよ。
…響って意外と占いとか信じるタイプ?
中には本物もいるだろうけど、騙しに来る人も大勢いるから信じすぎちゃダメよ。」
「俺はそういう曖昧なものは信じてない!
…そろそろ抜ける。気を付けろよ。」
全速力で森を駆け抜け、出口まで辿り着く。
水の流れる音が聞こえる。
此処を抜けて橋を越えればこの国とはおさらばだ。
オスヴィンは目と鼻の先にある。
森を抜けた二人の前には一人の兵士が石に座り待ち構えていた。
「よお…やっと来たのかよ。
待ちくたびれたぜ。」
2メートル程の体躯に体には傷跡が見える。
手には剣を持っており、何より伝わるのはこの魔力量だ。
フロストフェンリルの時とはまた別の、重く嫌な気配を感じる。
「…あいつは当たりか?」
「残念ながら大外れ。
厄介な奴が来たものね。
彼の名はギル・オーガイ。
元死刑囚にして、その強さを買われ騎士団隊長へと任命された異例の人間よ。
戦う事が大の好みで噂では100人以上の人間を殺して来たらしいわ。
こいつを捕まえる為に、前任の隊長が何人かやられたのは有名な話よ。」
「へえ~、俺の事よく知ってくれてるじゃねえか。
だったら自己紹介は必要ねえよなぁ。
さあ、始めようぜ!」
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