57 / 60
リスランダからの脱出
コンビネーション
しおりを挟む
フロストフェンリルの咆哮と共に、氷の礫が飛んでくる。
攻撃範囲は広く、回避は間に合わない。
「お前の攻撃は俺のスキルと相性が悪いんだよ。」
音宮が指を鳴らし、衝撃波を放つと氷の礫は砕け散る。
奴の氷が通用しない。これが俺の唯一のアドバンテージだ。
クロエが魔法を準備するのにも時間が掛かるだろうし、何よりも確実に当てる為にやつの動きを止めなければいけない。
一撃でいい。
隙をついて攻撃を当てさえすれば動きは止まる。
『音響』での打撃技である重攻音《フォルテ》最大の強みはどんなに格上の相手だろうと等しくダメージを与えらえるところだ。
俺のスキルは音の揺れを利用し、衝撃波を生み出して攻撃している。
重攻音《フォルテ》は相手の体内で衝撃を発生させている為、どんな相手でも確実にダメージを与える。
それはこのフロストフェンリルとて同じだ。
いくら表面を魔力で護っていようとも、体内まで護れる生物に俺は出会ったことがない。
内部から破壊される衝撃を受ければどんな生物でも動きを止める筈だ。
当てれば動きは止められる。
だが、それがなかなかできずにいた。
音宮の事を警戒してなのか、フロストフェンリルは上空に留まり魔法による氷柱や氷塊を振り落として来るばかりだ。
決して自分からは近寄らず、遠距離攻撃でジワジワと体力を削られている。
埒があかない。
この後に王国兵士と戦わなければいけない事を考えるともうこれ以上戦闘を行うのは危険。
次に奴が仕掛けて来た時がチャンスだ。
息を呑み、フロストフェンリルの攻撃の起こりを狙う。
勝機はある。
フロストフェンリルは魔法攻撃を仕掛けて来る時、遠吠えを行う癖がある。
それが魔法を使うにあたって必要なものかどうかは定かではないが、そんなことはどうでもいい。
鳴きさえしてくれればそれで…
睨み合いが行われる。
まだだ…焦るな。
先に動けば負ける。
慎重に…一瞬の隙を見逃すな。
ーーーーーー今だ!!
フロストフェンリルが口を開け、唸り声を上げたその刹那、音宮はスキルを発動する。
唸り声を特大音量としフロストフェンリルへぶつけた。
「自分の技でやられる気分はどうだ?
獣ってのは人間よりも耳がいい。
気分悪りぃだろ。」
脳が揺られ、フロストフェンリルの動きが僅かに止まった。
その隙を狙い、体内へと重攻音《フォルテ》を叩き込む。
「クロエ!今だ!」
「オッケー、待ってたわよ。」
僅かな隙を逃さない様、二人は息の合った連携で全力をぶつける。
フロストフェンリルの足元と上空の二箇所に魔法陣が現れる。
あれは確か、ドニー村でセルジールが使っていたーー
「あの時貰っていて良かったわ。
貴方強いからオマケに仙気加えてパワーアップさせちゃう。
裁きの聖光」
村で見た時よりも巨大な光の柱がフロストフェンリルを飲み込む。
「響!早く逃げるわよ。
この技でも大した足止めにはならない。」
目を凝らしてみるとフロストフェンリルの周りだけ凍っているのがわかる。
まさか…魔法を凍らせているのか…?
今はまだ完全に凍りつくまでは行っていないが、それも時間の問題だ。
やはり、今の俺たちではこいつに勝つ事は出来ない。
二人は一目散にその場から立ち去る。
「道は?」
「着いて来い。
お前の魔法のお陰で兵士が釣れた。
何人か森の中に入ったきたみたいで手薄になってる所がある。
そこを狙うぞ!」
「不幸中の幸いってやつね。
私たちついてるんじゃない。」
「そういうのは思っても口に出さない方が良いんじゃないか?
なんかフラグっぽいぞ…」
「な~に言ってんの。
口にしてもしなくても、起きる出来事に変わりはないわよ。
…響って意外と占いとか信じるタイプ?
中には本物もいるだろうけど、騙しに来る人も大勢いるから信じすぎちゃダメよ。」
「俺はそういう曖昧なものは信じてない!
…そろそろ抜ける。気を付けろよ。」
全速力で森を駆け抜け、出口まで辿り着く。
水の流れる音が聞こえる。
此処を抜けて橋を越えればこの国とはおさらばだ。
オスヴィンは目と鼻の先にある。
森を抜けた二人の前には一人の兵士が石に座り待ち構えていた。
「よお…やっと来たのかよ。
待ちくたびれたぜ。」
2メートル程の体躯に体には傷跡が見える。
手には剣を持っており、何より伝わるのはこの魔力量だ。
フロストフェンリルの時とはまた別の、重く嫌な気配を感じる。
「…あいつは当たりか?」
「残念ながら大外れ。
厄介な奴が来たものね。
彼の名はギル・オーガイ。
元死刑囚にして、その強さを買われ騎士団隊長へと任命された異例の人間よ。
戦う事が大の好みで噂では100人以上の人間を殺して来たらしいわ。
こいつを捕まえる為に、前任の隊長が何人かやられたのは有名な話よ。」
「へえ~、俺の事よく知ってくれてるじゃねえか。
だったら自己紹介は必要ねえよなぁ。
さあ、始めようぜ!」
攻撃範囲は広く、回避は間に合わない。
「お前の攻撃は俺のスキルと相性が悪いんだよ。」
音宮が指を鳴らし、衝撃波を放つと氷の礫は砕け散る。
奴の氷が通用しない。これが俺の唯一のアドバンテージだ。
クロエが魔法を準備するのにも時間が掛かるだろうし、何よりも確実に当てる為にやつの動きを止めなければいけない。
一撃でいい。
隙をついて攻撃を当てさえすれば動きは止まる。
『音響』での打撃技である重攻音《フォルテ》最大の強みはどんなに格上の相手だろうと等しくダメージを与えらえるところだ。
俺のスキルは音の揺れを利用し、衝撃波を生み出して攻撃している。
重攻音《フォルテ》は相手の体内で衝撃を発生させている為、どんな相手でも確実にダメージを与える。
それはこのフロストフェンリルとて同じだ。
いくら表面を魔力で護っていようとも、体内まで護れる生物に俺は出会ったことがない。
内部から破壊される衝撃を受ければどんな生物でも動きを止める筈だ。
当てれば動きは止められる。
だが、それがなかなかできずにいた。
音宮の事を警戒してなのか、フロストフェンリルは上空に留まり魔法による氷柱や氷塊を振り落として来るばかりだ。
決して自分からは近寄らず、遠距離攻撃でジワジワと体力を削られている。
埒があかない。
この後に王国兵士と戦わなければいけない事を考えるともうこれ以上戦闘を行うのは危険。
次に奴が仕掛けて来た時がチャンスだ。
息を呑み、フロストフェンリルの攻撃の起こりを狙う。
勝機はある。
フロストフェンリルは魔法攻撃を仕掛けて来る時、遠吠えを行う癖がある。
それが魔法を使うにあたって必要なものかどうかは定かではないが、そんなことはどうでもいい。
鳴きさえしてくれればそれで…
睨み合いが行われる。
まだだ…焦るな。
先に動けば負ける。
慎重に…一瞬の隙を見逃すな。
ーーーーーー今だ!!
フロストフェンリルが口を開け、唸り声を上げたその刹那、音宮はスキルを発動する。
唸り声を特大音量としフロストフェンリルへぶつけた。
「自分の技でやられる気分はどうだ?
獣ってのは人間よりも耳がいい。
気分悪りぃだろ。」
脳が揺られ、フロストフェンリルの動きが僅かに止まった。
その隙を狙い、体内へと重攻音《フォルテ》を叩き込む。
「クロエ!今だ!」
「オッケー、待ってたわよ。」
僅かな隙を逃さない様、二人は息の合った連携で全力をぶつける。
フロストフェンリルの足元と上空の二箇所に魔法陣が現れる。
あれは確か、ドニー村でセルジールが使っていたーー
「あの時貰っていて良かったわ。
貴方強いからオマケに仙気加えてパワーアップさせちゃう。
裁きの聖光」
村で見た時よりも巨大な光の柱がフロストフェンリルを飲み込む。
「響!早く逃げるわよ。
この技でも大した足止めにはならない。」
目を凝らしてみるとフロストフェンリルの周りだけ凍っているのがわかる。
まさか…魔法を凍らせているのか…?
今はまだ完全に凍りつくまでは行っていないが、それも時間の問題だ。
やはり、今の俺たちではこいつに勝つ事は出来ない。
二人は一目散にその場から立ち去る。
「道は?」
「着いて来い。
お前の魔法のお陰で兵士が釣れた。
何人か森の中に入ったきたみたいで手薄になってる所がある。
そこを狙うぞ!」
「不幸中の幸いってやつね。
私たちついてるんじゃない。」
「そういうのは思っても口に出さない方が良いんじゃないか?
なんかフラグっぽいぞ…」
「な~に言ってんの。
口にしてもしなくても、起きる出来事に変わりはないわよ。
…響って意外と占いとか信じるタイプ?
中には本物もいるだろうけど、騙しに来る人も大勢いるから信じすぎちゃダメよ。」
「俺はそういう曖昧なものは信じてない!
…そろそろ抜ける。気を付けろよ。」
全速力で森を駆け抜け、出口まで辿り着く。
水の流れる音が聞こえる。
此処を抜けて橋を越えればこの国とはおさらばだ。
オスヴィンは目と鼻の先にある。
森を抜けた二人の前には一人の兵士が石に座り待ち構えていた。
「よお…やっと来たのかよ。
待ちくたびれたぜ。」
2メートル程の体躯に体には傷跡が見える。
手には剣を持っており、何より伝わるのはこの魔力量だ。
フロストフェンリルの時とはまた別の、重く嫌な気配を感じる。
「…あいつは当たりか?」
「残念ながら大外れ。
厄介な奴が来たものね。
彼の名はギル・オーガイ。
元死刑囚にして、その強さを買われ騎士団隊長へと任命された異例の人間よ。
戦う事が大の好みで噂では100人以上の人間を殺して来たらしいわ。
こいつを捕まえる為に、前任の隊長が何人かやられたのは有名な話よ。」
「へえ~、俺の事よく知ってくれてるじゃねえか。
だったら自己紹介は必要ねえよなぁ。
さあ、始めようぜ!」
0
お気に入りに追加
613
あなたにおすすめの小説
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる