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リスランダからの脱出

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「間一髪…だったな。」

 フロストフェンリルの攻撃を察知した2人は、なんとか直撃を回避し、木陰に身を隠していた。

「このまま逃げ切れると思うか?」

「私たちに気付かずどっか行ってくれればいいんだけど、それは期待出来そうにもないわね。
 見て。何か探してる。
 おそらく、私たちの居場所を探ってるのよ。
 気配を消してるからそう簡単には見つからない筈だけど、それも時間の問題。」

「そもそもやつはなんで俺たちに攻撃を仕掛けて来たんだ?
 俺たち何かしたか。」

「さあ?考えられる可能性と言えば、彼の縄張りに私たちが入ってしまったとかかしら。
 まあなんにせよ、わたしたちが狙われてるって事に変わり無いわ。」

「はぁ…仕方ない。
 クロエ、俺が合図したら時間稼ぎが出来そうな魔法を使ってくれ。
 一気にこの森を抜けるぞ。」

「なに言ってるの?
 出口が分からなかったから私たちは揉めてたんでしょ。」

「あいつの攻撃を避ける為にさっき反音響を使ったんだが、周囲一帯を氷で覆ってくれたお陰で音が響きやすくなったんだよ。
 その時、出口を見つける事が出来たんだ。
 ただ、悪い知らせもある。」

「こいつと戦う以上に悪い事なんてあるの?」

「…まあ、それもそうなんだがな…。
 出口付近を包囲されている。
 間違いなく王国兵士だろう。」

「なるほどね。
 こいつから逃げても外には王国兵が待ち構えている。…最悪の状況ね。」

「ああ…俺の感知では敵の強さまではわからない。
 もしかしたらこのフロストフェンリルより強い奴が待ち構えている可能性もある。」

「だけど、悠長に迷ってる暇なんてないわよ。
 フロストフェンリルから逃げ切れるチャンスは今しかない。
 どうせ片方とは戦う必要があるなら無駄に体力と魔力を消耗すれば不利になる。
 決めるしかないわね。
 どちらと戦うか。」


 フロストフェンリルか…未知の王国兵か…
 フロストフェンリルとこのまま戦いを続けても勝てるビジョンは見えない。
 だが、逃げ切る事なら不可能ではないだろう。
 幸いな事に、俺のスキルと氷の魔法は相性が良い。
 奴が魔力を使えば使うほど、俺のスキルの力は増していく。
 それでもやはり倒し切る事は出来ない。
 時間稼ぎが関の山だろう。
 スキルを上手く使えば逃げ切る事ぐらいは出来る。
 王国兵の実力は何もわからない。
 それだけにやり辛い。
 弱ければ迷いなく兵士の方を選ぶのだが、俺の追手としてやって来たのはフェルトとセルジール。
 どちらも部隊長レベルの人物だ。
 それより弱い相手が追手としてやって来る事はないだろう。
 まあ、そもそも兵士かどうかもわかっていないのだが…
 どちらか選ばなければいけない…か…
 だとしたら…こっちだな。

「決まった?」

「ああ…此処から逃げるぞ。」

「りょーかい。
 王国兵と戦うって訳ね。」

「ああ…やはりこいつに勝つビジョンが見えない。
 それなら一か八かの賭けに出た方がマシだ。」

 フロストフェンリルが動きを止めた。
 とうとう俺たちに気付いたか。

「俺が出て奴の動きを止める。
 クロエは魔術の準備をしていてくれ。」

「…任せたわよ。
 無茶しないでね。」

「そっちこそヘマするなよ。」

 音宮が身を隠していた木陰から飛び出すとフロストフェンリルが唸りを上げる。

「図体がデカイだけの犬っころが調子に乗りやがって。
 相手してやるからかかってこいよ。」

 挑発が通じたのかフロストフェンリルが雄叫びを上げる。

 さあ、此処からは一つのミスも許されない。たった一つのミスが命を失う危機に繋がる戦いの始まりだ。
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