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リスランダからの脱出
氷狼
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「これが…神の使いってやつか…」
白銀の巨大な狼。
その巨体からどことなく神聖なオーラを感じる。
「この魔力、間違いないわね。
確か、この辺ではフロストフェンリルって呼ばれてるそうよ。」
フロストフェンリル、名前の通りならこの白狼は氷系統の能力を持っている可能性がある。
だが、安易に決めつけていいものではない。
この魔獣は今まで出会って来た魔獣達とは明らかにレベルが違う。
なんてプレッシャー…
ただ見合っているだけなのに体が動かない。
本能が理解しているんだ。
一歩でも動けば殺される。
そんな感覚だ。
「おい、クロエ。どうすーー」
クロエのあんな表情は初めて見た。
フロストフェンリルを目の前にして固まっている。
あのクロエがここまで追い込まれているとは…
「響、逃げるわよ。
あのクラスの魔獣はそれなりの知能を持ち合わせてる。
無闇矢鱈と人間を襲う様な真似はしない筈。
現にこうやって姿を表してるのに襲って来てないのがその証拠よ。
何が気に障ったのかわからないけど兎に角下手に刺激しない方がいい。
目を逸らさずにゆっくり後退して。
運が良ければ見逃してくれるから。」
「運が良ければって…悪かったらどうなるんだよ。」
「さあ?戦うしかないでしょうね。
まあ勝ち目があるとは思えないけど。」
「お前の仙気とやらでも無理なのか?」
「無理。だってあの魔獣も仙気使ってるし。
それもこの間私が使ったのより大量の仙気を取り込んでるわ。
あれはもはや魔獣っていうよりも妖精に近い存在ね。」
妖精族…自然界の力を取り込み戦う種族で身体能力はさほどないが、協力な魔術を使用する。
ただの妖精族なら魔法さえ警戒していればなんとかなるが、フロストフェンリルは魔獣の身体能力+妖精の強力な魔法を兼ね備えている。
厄介な事この上ない。
一歩、また一歩とゆっくり下がる。
緊張感は拭えない。
自然と汗が流れ落ちる。
音を立てないよう慎重に…
いける…!
こちらを睨んではいるものの動き出す様子はない。
あと少しでフロストフェンリルの視界から逃れる事が出来る。
その瞬間だった。
突如、フェンリルが雄叫びを上げる。
その凄まじい声量に耳を塞がずにはいられない。
「クソ…!なんでこのタイミングで…」
「そんなのわかんないわよ!
そもそもなんで私たちの前に現れたのかもわかんないだからーーって話してる暇ない。
来るわよ!」
フロストフェンリルが咆哮を放つと草木が凍結し、辺り一面が凍りつく。
やはり氷系統の魔力を持っていたか。
魔力を乗せただけの方向でここまで影響を与えるとは…
奴にとってはただ俺たちを威嚇しただけなのだろうが、その動作一つ一つが規格外だ。
さて、倒すのはまず無理としてどうやってこの場を乗り切るか。
フロストフェンリルの姿が視界から消えた。
ーーーー来る!!
魔力による身体強化を発動し、魔力を足に集中させ敏捷力《アジリティ》に全振りする。
それと併用して反音響での感知を使い敵の位置を把握。
これが今の俺に出来るこの場における最善の選択肢。
さて、敵の位置は……
「クロエ!上だ!」
上空には空を駆けるフロストフェンリルの姿が。
まるで地上を走る様に、空を縦横無尽に走り回っている。
フロストフェンリルが通った後には、氷の礫が発生し、それらが集まり槍の様な大きさへと変化して行く。
「おいおい、まさかあれ落とす気じゃないよな…」
「あんなの落とされたら一溜りもないわよ。
逃げようにも範囲が広すぎる。」
上空ある無数の氷塊は無慈悲にも2人目掛けて降り掛かる。
白銀の巨大な狼。
その巨体からどことなく神聖なオーラを感じる。
「この魔力、間違いないわね。
確か、この辺ではフロストフェンリルって呼ばれてるそうよ。」
フロストフェンリル、名前の通りならこの白狼は氷系統の能力を持っている可能性がある。
だが、安易に決めつけていいものではない。
この魔獣は今まで出会って来た魔獣達とは明らかにレベルが違う。
なんてプレッシャー…
ただ見合っているだけなのに体が動かない。
本能が理解しているんだ。
一歩でも動けば殺される。
そんな感覚だ。
「おい、クロエ。どうすーー」
クロエのあんな表情は初めて見た。
フロストフェンリルを目の前にして固まっている。
あのクロエがここまで追い込まれているとは…
「響、逃げるわよ。
あのクラスの魔獣はそれなりの知能を持ち合わせてる。
無闇矢鱈と人間を襲う様な真似はしない筈。
現にこうやって姿を表してるのに襲って来てないのがその証拠よ。
何が気に障ったのかわからないけど兎に角下手に刺激しない方がいい。
目を逸らさずにゆっくり後退して。
運が良ければ見逃してくれるから。」
「運が良ければって…悪かったらどうなるんだよ。」
「さあ?戦うしかないでしょうね。
まあ勝ち目があるとは思えないけど。」
「お前の仙気とやらでも無理なのか?」
「無理。だってあの魔獣も仙気使ってるし。
それもこの間私が使ったのより大量の仙気を取り込んでるわ。
あれはもはや魔獣っていうよりも妖精に近い存在ね。」
妖精族…自然界の力を取り込み戦う種族で身体能力はさほどないが、協力な魔術を使用する。
ただの妖精族なら魔法さえ警戒していればなんとかなるが、フロストフェンリルは魔獣の身体能力+妖精の強力な魔法を兼ね備えている。
厄介な事この上ない。
一歩、また一歩とゆっくり下がる。
緊張感は拭えない。
自然と汗が流れ落ちる。
音を立てないよう慎重に…
いける…!
こちらを睨んではいるものの動き出す様子はない。
あと少しでフロストフェンリルの視界から逃れる事が出来る。
その瞬間だった。
突如、フェンリルが雄叫びを上げる。
その凄まじい声量に耳を塞がずにはいられない。
「クソ…!なんでこのタイミングで…」
「そんなのわかんないわよ!
そもそもなんで私たちの前に現れたのかもわかんないだからーーって話してる暇ない。
来るわよ!」
フロストフェンリルが咆哮を放つと草木が凍結し、辺り一面が凍りつく。
やはり氷系統の魔力を持っていたか。
魔力を乗せただけの方向でここまで影響を与えるとは…
奴にとってはただ俺たちを威嚇しただけなのだろうが、その動作一つ一つが規格外だ。
さて、倒すのはまず無理としてどうやってこの場を乗り切るか。
フロストフェンリルの姿が視界から消えた。
ーーーー来る!!
魔力による身体強化を発動し、魔力を足に集中させ敏捷力《アジリティ》に全振りする。
それと併用して反音響での感知を使い敵の位置を把握。
これが今の俺に出来るこの場における最善の選択肢。
さて、敵の位置は……
「クロエ!上だ!」
上空には空を駆けるフロストフェンリルの姿が。
まるで地上を走る様に、空を縦横無尽に走り回っている。
フロストフェンリルが通った後には、氷の礫が発生し、それらが集まり槍の様な大きさへと変化して行く。
「おいおい、まさかあれ落とす気じゃないよな…」
「あんなの落とされたら一溜りもないわよ。
逃げようにも範囲が広すぎる。」
上空ある無数の氷塊は無慈悲にも2人目掛けて降り掛かる。
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