異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうなので早めに逃げ出す事にします

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リスランダからの脱出

神の使い

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「どう?出口見つかりそう?」

「ちょっと待て………駄目だ。この森広すぎる。
 さっきから探ってはいるが、こうも広いと音が響かない。
 分かるのは俺の感知できる範囲には出口はないって事くらいかな。
 クロエはこの道通ったことないのか?」

「ないわよ。だって本来なら別の道を使うようになってるし。
 でも正規のルートは行商人とか色んな人が通るからその分見張りもちゃんとしてる。
 私たちがそっちに行ったところで見つかるのが落ちよ。
 だからこうしてわざわざ人が寄り付かないポルチア森林に来たの。
 この森は広大な上に神の使いが住んでるなんて噂もあるから誰も近付かない。
 それに、この森から向かった方が近道だしね。」

 本来であれば、ユーダティア洞窟を抜けてポルチア森林を迂回する事で安全なルートを通り、オスヴィンへと向かうことが出来る。
 だが、音宮たちはあえてそのルートを避け、ポルチア森林を直進する事で見張りがいない橋を渡ろうと考えていた。
 たかが森、感知できる音宮がいれば問題なく突破できるだろうと考えていたクロエであったが感知できないという予想外のアクシデントにあい、足止めをくらっていた。
 2人がこの森に入ってもう2日は経つ。
 あいにく森林の状態は最高で、人が寄り付かない為、綺麗な川に沢山の果実、川魚なども生息しており食料に困る事はなかった。

「神の使い?なんだそれ?」

「さあ?噂よ、う・わ・さ。私が知ってる訳ないじゃない。」

「道案内するなら下調べくらいしてからやれよ。
 近道だとしても迷子になってちゃ意味ねえだろうが…」

「なによその言い方。
 響の感知能力が低いのが悪いんじゃないの?
 私のせいにしないでくれる。」

「お前なあ…俺のスキルは本来、洞窟とかそういう音が響きやすいところで使うもんなんだよ。
 こんな外で使うスキルじゃねえ。」

「はいはい、響は敵に負ける時もそうやって言い訳するんだ。
 みっともな~い。」

「油断してスキル奪われた奴が良く吠える。
 誰のおかげであいつに勝てたと思ってるんだ。」

「あ~、そうやって終わった事いちいち蒸し返すんだ。
 そういうの、嫌われやすいから止めた方がいいよ。」

 この女…!言わせておけば…!
 安藤の奴なら素直に自分の非を認めてたってのに…
 どうしてこうも口が回るのか…碌な育ちかたしてないだろう。
 はあ…仕方ない。
 言い争っていても出口が見つかる訳じゃないし、ここは俺が大人の対応をしてやるか。

 怒りの感情を抑え込み、音宮は最大限の反音響を試みる。

「ちょっと静かにしてろよ。」

 真剣な様子が伝わったのか、クロエも先ほどのふざけた様子とは打って変わり、音宮に言われた通り大人しくする。
 スキルの詳細はクロエも知っている。
 音に関する能力である以上、少しの雑音でも邪魔になることは理解しているのだ。

 下が土である以上、いつも通りの足踏みでは遠くまで音は響き渡らない。
 洞窟などの密閉空間や海であれば音の波は響きやすいので広範囲の感知は可能だ。
 今回のような広範囲感知を行うには森中に響き渡る程の爆音を鳴らす必要がある。

「クロエ、なにか大きな音を出す魔法とかないか?
 爆発系とのそんな感じでもいいんだが…」

「あんまりそういうのは戦いに向かないから持ってないんだけど…
 それに、あんまり大きな音出し過ぎちゃうと王国兵が偵察に来ちゃうよ?」

「それはわかってるけど、俺のスキルだとそうする以外方法がないんだよ。
 感知した後、一気にこの森を抜ければそれで大丈夫だろ。」

「でも私たちはセルジールと出くわしてるのよ。
 追手が来るとしたらそれなりの戦闘力を持ってる人間しか来ないはず。
 そんな相手と戦わなきゃいけないかも知れないって時に力を消耗した状態で挑むのは命取りになるわよ。」

「だったらどうする?
 このままこの森で数日迷い続けるのか?
 その方が周囲一帯を包囲させる時間を与えて後々厄介な事になる。」

 意見が纏まらない。
 音宮とクロエは似ている。
 思慮深く、冷静に物事を把握するようにしている。
 そしてよほどの理由がない限り自分の意見を曲げるようなことをしない。
 お互いに言い分は理解できているが、両者ともそれは考えた上で導き出した答えだった。
 故に互いの意見を認めることが出来ない。

「大体響はいつもいつもーーーーーーー」

「お前は俺の言う事をーーーーーーーー」

 またしても2人が口論を始める。
 森を抜け出せないストレスからかよく喧嘩をするようになっていた。
 お互いにひかない為、その全てにおいて決着がつくことはなく、日々ストレスは溜まっていく。
 今まさに爆発しそうになっていた。
 普段は冷静な2人もこの時ばかりは周りが見えていない。
 そんな最中、ふと何者かの気配を感じる。

「クロエ…」

「わかってる。
 まったく…いいとこだったのに…
 一体誰よ!出てきなさ…」

 気配を感じた森の方へと視線を向けたクロエが固まっている。
 一体どうしたんだ?
 音宮もクロエと同じ方角を向くとそこには人間よりもかなり大きな体躯をした、白銀に光る毛並みをした巨大な狼の姿があった。
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