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黒牙の盗賊団
重く響く
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「あいつは頼んだわよ。」
「ああ、とっとと行け。」
クロエは音宮にこの場を任せ、遠くへと立ち去る。
「なんだ…二人で来ねえのかよ。
まっいっか。そんじゃあ、お手並み拝見と行きますか!!」
ファングが音宮の前から姿を消した。
姿が消えた…透明化のスキルか…
いや、違う。超スピードでファングが動き回っているんだ。
それも目で追えない程の超スピードで。
そもそも、獣人であるクロエと同等以上の身体能力を持っている時点でおかしいと思っていた。
獣人とは本来、獣の特性+人の知性が混ざり合った生物だ。
それ故に、身体能力では他種族に追随を許さない程の実力を持っている。
魔力は使えるが、出来ても身体強化系統が限度という弱点もあるがそれを補える力は持っている筈だ。
それなのに、クロエに惜し勝ったという事は、奴が身体強化系統のスキルを持っている可能性の方が高い。
普通に目で追っていては対応できない。
常に感知を行い、奴の位置を把握しなければ。
音宮は反音響《エコーロケーション》で感知を行い、ファングの動きを読む。
ーー後ろだ!!
ファングの剣と音宮の短刀がぶつかり合い鍔迫り合いとなる。
「へえ…よく受けたな。
てっきり俺の動きを追えていないものだと思っていたが…
そうか、スキルか。お前、感知系だろ。」
「そうだと言ったらどうする?」
「いや、可哀そうだと思ってなあ。
感知系は便利な力だが、その分戦いには全くと言っていい程向いてねえ。
今のお前みたいにある程度なら対応する事が出来るが、戦闘系のスキルを持つ相手には手も足も出ねえんだよ。
こんな風になあ!!」
競り合っていた刃が押し込まれる。
こいつ…なんて力してやがるんだ!
「スキル『全強化《フルパワー》』。
身体能力を2倍3倍とどんどん倍増させることが出来るスキルだ。
凄えだろ!
このスキルを見つけた時は俺も心躍ってよぉ。
柄にもなく執着しちまって何日も何日もチャンスを伺ってたんだ。
所持者が唯の農民で助かったよ。
力は強かったが戦い方がまるでなっちゃいねえ。
あれじゃ宝の持ち腐れってもんだ。」
ファングが雑談をしている間にもどんどん刃は押し込まれていく。
ただ力を倍増させるだけの能力ではない筈だ。
必ずどこかに弱点は存在する。
このパターンだと、肉体の限界を迎える程の力を引き出せばいいのだろうが、奴もそう馬鹿じゃないだろう。
自滅は期待しない方がいい。
「どうした?もう終いか…ったく、つまらねえ戦いだったぜ。」
とうとうファングの刃が音宮の肩に突き刺さる。
なにも抵抗できない音宮を見て飽きたのか、ファングは止めを刺そうと剣を再度振りかぶった。
「終わりだ。そんな刀じゃこの剣は防げねえ。」
ファングが刀を振り降ろし、音宮の短刀と再度触れた瞬間、ファングの刀が真っ二つに折れた。
「はっ……?」
何が起きたのか理解できていないファングだったが、腹部に違和感を感じ目を向けるとそこには掌を添えている音宮の姿があった。
「重攻音《フォルテ》」
その言葉と同時に、添えられていた掌から衝撃が走る。
なんだ、この不快な感覚は。
まるで体の中に直接衝撃を送って来られたかのような…
ファングが吐血し、その場へと膝から崩れ落ちる。
そんなファングの姿を音宮は見下ろしていた。
「お前は油断しすぎなんだよ。」
音宮はタイミングを伺っていた。
必ず攻撃を当てられるそのタイミングを。
ファングの剣を切ることはいつでもできた。
短刀を揺らす事で超振動ブレードとなり、切れ味は格段に進化し大抵のものは切り裂く事が出来る。
だが、焦ってそれを使ってしまってはファングが警戒し、近付かなくなってしまう。
狙うのは奴が油断したその時だ。
そして、ファングは油断しまんまと音宮の策に引っかかった。
「どうだ?体の中を直接攻撃される感覚は。
この打撃は体内に重く、響き渡る。
体内は鍛えようがないからな。
後一発もくらえば立てないだろ。」
「へへへ…正直、お前の事を舐めてたよ。
だけどなあ…お前も俺の事を舐めすぎだ。」
ファングが何事もなかったかのように立ち上がる。
馬鹿な!あの技は防御不能の筈…
確実にダメージを追っている筈だ。
「超回復《ハイヒール》お気に入りのスキルの一つだ。
大抵のダメージはこれで治す事が出来る。
これで振り出しに戻ったなあ…
さあ、仕切り直しと行こうか。
お前、思ったより楽しめそうだ。」
「ああ、とっとと行け。」
クロエは音宮にこの場を任せ、遠くへと立ち去る。
「なんだ…二人で来ねえのかよ。
まっいっか。そんじゃあ、お手並み拝見と行きますか!!」
ファングが音宮の前から姿を消した。
姿が消えた…透明化のスキルか…
いや、違う。超スピードでファングが動き回っているんだ。
それも目で追えない程の超スピードで。
そもそも、獣人であるクロエと同等以上の身体能力を持っている時点でおかしいと思っていた。
獣人とは本来、獣の特性+人の知性が混ざり合った生物だ。
それ故に、身体能力では他種族に追随を許さない程の実力を持っている。
魔力は使えるが、出来ても身体強化系統が限度という弱点もあるがそれを補える力は持っている筈だ。
それなのに、クロエに惜し勝ったという事は、奴が身体強化系統のスキルを持っている可能性の方が高い。
普通に目で追っていては対応できない。
常に感知を行い、奴の位置を把握しなければ。
音宮は反音響《エコーロケーション》で感知を行い、ファングの動きを読む。
ーー後ろだ!!
ファングの剣と音宮の短刀がぶつかり合い鍔迫り合いとなる。
「へえ…よく受けたな。
てっきり俺の動きを追えていないものだと思っていたが…
そうか、スキルか。お前、感知系だろ。」
「そうだと言ったらどうする?」
「いや、可哀そうだと思ってなあ。
感知系は便利な力だが、その分戦いには全くと言っていい程向いてねえ。
今のお前みたいにある程度なら対応する事が出来るが、戦闘系のスキルを持つ相手には手も足も出ねえんだよ。
こんな風になあ!!」
競り合っていた刃が押し込まれる。
こいつ…なんて力してやがるんだ!
「スキル『全強化《フルパワー》』。
身体能力を2倍3倍とどんどん倍増させることが出来るスキルだ。
凄えだろ!
このスキルを見つけた時は俺も心躍ってよぉ。
柄にもなく執着しちまって何日も何日もチャンスを伺ってたんだ。
所持者が唯の農民で助かったよ。
力は強かったが戦い方がまるでなっちゃいねえ。
あれじゃ宝の持ち腐れってもんだ。」
ファングが雑談をしている間にもどんどん刃は押し込まれていく。
ただ力を倍増させるだけの能力ではない筈だ。
必ずどこかに弱点は存在する。
このパターンだと、肉体の限界を迎える程の力を引き出せばいいのだろうが、奴もそう馬鹿じゃないだろう。
自滅は期待しない方がいい。
「どうした?もう終いか…ったく、つまらねえ戦いだったぜ。」
とうとうファングの刃が音宮の肩に突き刺さる。
なにも抵抗できない音宮を見て飽きたのか、ファングは止めを刺そうと剣を再度振りかぶった。
「終わりだ。そんな刀じゃこの剣は防げねえ。」
ファングが刀を振り降ろし、音宮の短刀と再度触れた瞬間、ファングの刀が真っ二つに折れた。
「はっ……?」
何が起きたのか理解できていないファングだったが、腹部に違和感を感じ目を向けるとそこには掌を添えている音宮の姿があった。
「重攻音《フォルテ》」
その言葉と同時に、添えられていた掌から衝撃が走る。
なんだ、この不快な感覚は。
まるで体の中に直接衝撃を送って来られたかのような…
ファングが吐血し、その場へと膝から崩れ落ちる。
そんなファングの姿を音宮は見下ろしていた。
「お前は油断しすぎなんだよ。」
音宮はタイミングを伺っていた。
必ず攻撃を当てられるそのタイミングを。
ファングの剣を切ることはいつでもできた。
短刀を揺らす事で超振動ブレードとなり、切れ味は格段に進化し大抵のものは切り裂く事が出来る。
だが、焦ってそれを使ってしまってはファングが警戒し、近付かなくなってしまう。
狙うのは奴が油断したその時だ。
そして、ファングは油断しまんまと音宮の策に引っかかった。
「どうだ?体の中を直接攻撃される感覚は。
この打撃は体内に重く、響き渡る。
体内は鍛えようがないからな。
後一発もくらえば立てないだろ。」
「へへへ…正直、お前の事を舐めてたよ。
だけどなあ…お前も俺の事を舐めすぎだ。」
ファングが何事もなかったかのように立ち上がる。
馬鹿な!あの技は防御不能の筈…
確実にダメージを追っている筈だ。
「超回復《ハイヒール》お気に入りのスキルの一つだ。
大抵のダメージはこれで治す事が出来る。
これで振り出しに戻ったなあ…
さあ、仕切り直しと行こうか。
お前、思ったより楽しめそうだ。」
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