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それぞれの行方

安藤の修業

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 音宮がクロエとの修行をしている頃、時を同じくして安藤もビビアンに修行をつけて貰っていた

「いい、魔力を使うにはまず初めに自分の体内にある魔力を認知する事。
 それが出来なければ、なにも始まらないわ。
 体の内側から力を溢れ出させる感覚よ。
 自分の中にある魔力を感じ取って。」

 ビビアンにこの言葉を授けられてから2週間が過ぎるが、未だに何一つとして進歩がない。
 私はどうしてこんなにも出来ないのか…
 本当に自分に嫌気がさしてくる。

 落ち込みながらも、健気に魔力を感じ取ろうと集中する桜をビビアンは遠くから眺めていた。

 ハッキリ言って、才能は全くと言っていいほどないわね。
 私が関知する限り、そもそもの魔力量が圧倒的に少ない上、なにをするにも深く考えすぎてしまいチャレンジする事を恐れる性格。
 どれも戦いにおいて不要なものばかりだ。
 それでも修業を辞めさせようとしないのは、彼女がひたむきに頑張っているからだ。
 不器用でも怖くても、一歩ずつ進んでいる。
 目に見える成果にはなっていないけど、確実に良い方には進んでいるはずだ。
 時間をかけていいのであれば、20年もしたら立派な魔術師になっていると思う。
 だが、それではあまりにも遅すぎる。
 どうしたものか…

 毎日言われた通りの修行を欠かさず行っている安藤の姿を見ながらビビアンは考えていた。

 やっぱり、こっちが先かしらね。

 そして翌日、ビビアンは安藤を自室へと呼び出した。

「あの…今日はどうしたんですか?」

「大した様じゃないのよ。
 桜ちゃん、修業あんまり上手く行ってない見たいね。」

「はい…魔力がなんなのか全然わからなくて」

「いいのよ。今日は毎日同じ事してたら飽きるかなって思って、別の修業を教えようと思ったの。」

「別の修業ですか?
 まだ魔力すら掴めてない私に出来るんでしょうか?」

「大丈夫よ。頭の運動みたいなものだから。今日やるのはスキルの再確認。」

「再確認ですか?」

「そう。前も言ったと思うけど、スキルは解釈次第でどこまでも強くなれる。
 そこで、桜ちゃんの『開花《ブルーム》』について考えようと思って。
 それに、スキルが強化されれば飛躍的に強くなれるわよ。
 とりあえず、今の段階では桜ちゃんのスキルはどういう事が出来るのか具体的に教えて。」

「はい。花を咲かせることが出来たり、種さえあれば一瞬で樹木まで成長させられます。ただ、成長する向きや大きさはある程度の調整は出来るんですけど、木の形を変えたり自由自在に操る事は出来ません。それに、種がないと何もできないです。」

 成程…種から木まで成長させるというのはいい発想だけど、あくまで成長できるのは花が咲くまでの間。
 木を自由自在にコントロールできるのであれば戦い方は色々浮かぶし、魔法を覚えるよりも手っ取り早く強くなれる気もするのだけれど…流石にそう上手くはいかないか。

「この開花って言葉を聞いてなにか思いつかない?
 どんなことでもいいの。」

「う~ん、すみません…ちょっと思いつかないです。」

「だったら、スキルを単語して考えてもいいかも知れないわよ。~『開花』とか『開花』~みたいに分けて言葉の意味を考えたり、その単語がつく言葉を思い返して見たりね。」

 ビビアンのアドバイスを聞き一つの言葉が頭の中に思いついた。
 だけど、どうやって使用したらいいのかがわからない。
 そもそもこの言葉でなにが出来るようになるのかも不明だ。

「なにか思い付いたみたいね。
 桜ちゃん、何事も恐れちゃダメよ。
 最初から上手く行く人なんていないんだから。」

「……わかりました。やってみます。」

 安藤はスキルを発動すると先ほどの安藤からは信じられない量の魔力が溢れ出す。
 通常、肉眼では捉えられない筈の魔力がそこにあると分かる程の大きさで存在しているのだ。

 ーーーー!!
 まさか、この一瞬でここまで化けるとは…この子は一体なにをしたんだ。
 だけど、いかに魔力量が多くても使いこなせなければ宝の持ち腐れ。

「なにか掴めたみたいね。それが魔力よ。その感覚を忘れないで。
 そのまま、この2週間で教えていた魔法使えそうかしら。」

「…たぶんですけど、今なら使えそうな気がします。」

 声は小さく、おどおどしているがその目には確かな意志が宿っている様に見える。

「やって見なさい。」

 安藤が目を閉じ、魔力を高めていく。

 ーーさらに魔力が上がるというの…もしかして、彼女なら私以上の魔術師になれるかも知れない。

「ーーーー」

 安藤が呪文を唱えた瞬間、大爆発が起こった。
 この日、リスランダ王国内のとある島が半壊するという事件が起こる。
 爆発から4日後、王国兵が辿り着いた頃には人が住んでいた痕跡はあったものの、現場には誰もおらずこの事件の犯人はわからないまま、幕を閉じた。
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