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それぞれの行方
王の間
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リスランダ王国 王の間
音宮たちがリスランダ王国から逃げ出して、もう2週間が経つ。
はじめの頃は消息が掴めていた2人だが、厄介な存在が介入したことにより現在は消息が全く掴めないでいた。
「いい加減にしろ!まだ居場所を突き止められないのか!相手はたかだか勇者だぞ。
それを貴様らはいつまでもーー。まあ良い。どうせ国中から追われている身だ。
どこにも安心できる場所など存在しない。直、見つかるだろう。
それよりも他の勇者たちはどんな様子だ?」
王であるリスランダ6世が目の前で神戸を垂れているセルジールへと話しかける。
「はい。皆、それなりの力はあります。部隊長クラスとまでは行かずとも、一般兵では相手にならないかと。そしてリーダーである天野光輝は歴代勇者の中でも上位の強さに入ると思われます。既に隊長たちと戦えるレベルには到達しています。」
「おお!そうかそうか。それは楽しみだな。どんな風に使おうか……そうだ!確かドニー村の住人が消えていたな。あれが誰の仕業か調べはついたか。」
「はい。調べ上げた結果あれはオスヴィンへと渡った勇者一行の仕業です。
近くの森で野宿をしていた冒険者からの証言があったので間違いないかと。
スキルを手に入れ浮かれていたのでしょう。
冒険者の証言によると、村人たちは催眠のようなものをかけられ、女性は連れ去られ、男性はどこからともなく現れた大蛇に呑み込まれてしまったそうです。」
「そうか…全く、いつの世も勇者と言うのは愚かなものだな。
なあ、セルジールよ。昔この国に来た勇者が言っていたのだがな、彼らの世界には連帯責任という言葉があるらしい。一人が犯したミスは全員で責任を取るそうだ。
素晴らしい!この言葉に習って、この事件の責任は同じ勇者に取って貰おう。」
「承知しました。…どちらかが死ぬ可能性もありますが、よろしいでしょうか?」
「一人か二人消えたところで大した違いはない。
暫くは国同士も戦争を起こそうとは思わないだろう。
勇者は戦争時に特攻隊として使い捨てるのが本来の使い方だが、その役目も3人いれば十分だ。それ以外は生きようが死のうがどうなっても構わん。」
「かしこまりました。音宮響と安藤桜についてはどうされますか?」
「引き続き捜索を続けろ。たしか、音宮はクロエと、安藤はビビアンと行動を共にしていたな。
…追手は送る際は部隊長クラス2名で行うようにしろ。」
「承知しました。それでは失礼します。」
セルジールが王の間を閉め、立ち去って行った。
「彼に任せて良かったのでしょうか?
命じてくだされば私が向かったと言うのに」
「構わん。奴とて実力は貴様と同等かそれ以上だ。下手な真似はせんよ。
それにしても、ここにきてビビアンが協力してくるとはな…」
「彼女ですか。変に勘が鋭いから国を追われる羽目になってしまう。彼女は余計なことを知りすぎた。」
「全くだ。勇者は我々の駒だ。そう簡単に渡すものか。
イグニードよ。貴様の兵から誰か送り出せる者はおらんか?
セルジールのところに紛れ込ませよう。」
「それならば勇者を使うと言うのは如何でしょう?
今の彼らの実力でしたら確実に一人は死人が出ます。
友人が死んだとなれば塞ぎこむか復讐を誓うかの2択です。
そうなれば奴らの思考回路は停止して使い勝手のいい人形に出来ます。」
「それはいい案だな。よし、そうしよう。
となれば適任は…コイツだな。
使えはするが戦力としては微妙だ。
捨て置いても問題ないだろう。」
王はセルジールから貰った報告書からとある人物のデータが書かれた紙を取り出す。そこには寧々島千里《ねねしませんり》の名前が書かれていた。
寧々島千里 スキル『千里眼《クレアボヤンス》』
制限なく、どこまでも遠くを見渡す事が出来る能力。
リスランダ王国から他国の状況を見ることが出来るため、偵察兵として期待されていたが戦闘能力は低く、能力と相性のいい弓を少し使える程度だ。
「では、この者を連れて行くよう伝えておきます。」
「うむ、頼んだぞ。」
音宮たちがリスランダ王国から逃げ出して、もう2週間が経つ。
はじめの頃は消息が掴めていた2人だが、厄介な存在が介入したことにより現在は消息が全く掴めないでいた。
「いい加減にしろ!まだ居場所を突き止められないのか!相手はたかだか勇者だぞ。
それを貴様らはいつまでもーー。まあ良い。どうせ国中から追われている身だ。
どこにも安心できる場所など存在しない。直、見つかるだろう。
それよりも他の勇者たちはどんな様子だ?」
王であるリスランダ6世が目の前で神戸を垂れているセルジールへと話しかける。
「はい。皆、それなりの力はあります。部隊長クラスとまでは行かずとも、一般兵では相手にならないかと。そしてリーダーである天野光輝は歴代勇者の中でも上位の強さに入ると思われます。既に隊長たちと戦えるレベルには到達しています。」
「おお!そうかそうか。それは楽しみだな。どんな風に使おうか……そうだ!確かドニー村の住人が消えていたな。あれが誰の仕業か調べはついたか。」
「はい。調べ上げた結果あれはオスヴィンへと渡った勇者一行の仕業です。
近くの森で野宿をしていた冒険者からの証言があったので間違いないかと。
スキルを手に入れ浮かれていたのでしょう。
冒険者の証言によると、村人たちは催眠のようなものをかけられ、女性は連れ去られ、男性はどこからともなく現れた大蛇に呑み込まれてしまったそうです。」
「そうか…全く、いつの世も勇者と言うのは愚かなものだな。
なあ、セルジールよ。昔この国に来た勇者が言っていたのだがな、彼らの世界には連帯責任という言葉があるらしい。一人が犯したミスは全員で責任を取るそうだ。
素晴らしい!この言葉に習って、この事件の責任は同じ勇者に取って貰おう。」
「承知しました。…どちらかが死ぬ可能性もありますが、よろしいでしょうか?」
「一人か二人消えたところで大した違いはない。
暫くは国同士も戦争を起こそうとは思わないだろう。
勇者は戦争時に特攻隊として使い捨てるのが本来の使い方だが、その役目も3人いれば十分だ。それ以外は生きようが死のうがどうなっても構わん。」
「かしこまりました。音宮響と安藤桜についてはどうされますか?」
「引き続き捜索を続けろ。たしか、音宮はクロエと、安藤はビビアンと行動を共にしていたな。
…追手は送る際は部隊長クラス2名で行うようにしろ。」
「承知しました。それでは失礼します。」
セルジールが王の間を閉め、立ち去って行った。
「彼に任せて良かったのでしょうか?
命じてくだされば私が向かったと言うのに」
「構わん。奴とて実力は貴様と同等かそれ以上だ。下手な真似はせんよ。
それにしても、ここにきてビビアンが協力してくるとはな…」
「彼女ですか。変に勘が鋭いから国を追われる羽目になってしまう。彼女は余計なことを知りすぎた。」
「全くだ。勇者は我々の駒だ。そう簡単に渡すものか。
イグニードよ。貴様の兵から誰か送り出せる者はおらんか?
セルジールのところに紛れ込ませよう。」
「それならば勇者を使うと言うのは如何でしょう?
今の彼らの実力でしたら確実に一人は死人が出ます。
友人が死んだとなれば塞ぎこむか復讐を誓うかの2択です。
そうなれば奴らの思考回路は停止して使い勝手のいい人形に出来ます。」
「それはいい案だな。よし、そうしよう。
となれば適任は…コイツだな。
使えはするが戦力としては微妙だ。
捨て置いても問題ないだろう。」
王はセルジールから貰った報告書からとある人物のデータが書かれた紙を取り出す。そこには寧々島千里《ねねしませんり》の名前が書かれていた。
寧々島千里 スキル『千里眼《クレアボヤンス》』
制限なく、どこまでも遠くを見渡す事が出来る能力。
リスランダ王国から他国の状況を見ることが出来るため、偵察兵として期待されていたが戦闘能力は低く、能力と相性のいい弓を少し使える程度だ。
「では、この者を連れて行くよう伝えておきます。」
「うむ、頼んだぞ。」
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