異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうなので早めに逃げ出す事にします

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それぞれの行方

助っ人

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「痛てえなぁ、一体どこのどいつだ!
 俺が誰だかわかってやってんだろうな!
 泣く子も黙る王国兵士第2部隊、ダグラ・イドリック様とは俺の事だ!
 今更泣いて謝っても許さねえからなぁ」

 ダグラ・イドリック スキル『擬態《ミミクリー》』

「全く、王国から勇者が脱走したって噂を聞いて来てみたらこんな事になってるなんて…。この子、今までどうやって逃げてきたのかしら?
 後そこの王国兵!別に貴方に許して貰う必要なんてないわ。
 だって…貴方はここで死ぬんだもの。」

「生意気な口聞きやがる女だぜ。
 …お前も良い体つきしてんなあ。
 よし決めた。今日は豪華に2人まとめてと行こうや。
 みんなで楽しく遊ぼうぜえ!」

 ダグラの体が変化する。
 体中が竜の鱗に覆われる。獅子の頭に両腕からは凶悪な爪が、尻尾が生え蛇の形になり、背中からは羽が生え始めた。
 様々なモンスターが混ざったキメラの様な姿に変貌した。

「俺のスキル『擬態』は俺が接触した生物の見た目と性能をコピーする。それは死体でも可能だ。お前は運がないぜ。俺はここに来る前にドラゴンに触れた。俺が勝てる相手じゃねえが死体に触れるだけでこの能力は使えるからな。お前にドラゴンが倒せるかなぁ!」

「貴方さっきから五月蝿いわよ。
 その下品な口閉じた方が良さそうね。」

 女性が持っていた杖をダグラに向ける。
 その瞬間、ダグラの足元が凍りつく。

「これは…氷の魔法。
 テメエ、魔術師か?」

「そうだとしたら?」

「なあに、少し張り合いが出てくるだけさ。
 魔術師ってのは遠距離戦においては強力だが、接近戦になると使いもんになんねえ。それに、竜の鱗はあらゆる魔法に対して耐性を持ってるんだ。
 その程度の魔術で勝てると思うなよ!」

「あら、そう。だったらこれは?」

 今度は地面から木が生えてきて、ダグラを拘束する。

「これもオマケ。」

 拘束していた木がダグラを巻き込みながら業火に包まれていく。

「待て…やめろ…うわぁぁあ!!」

「女性を軽んじた罪を受けなさい。
 さてと、この子とゆっくり話したいところだったんだけど…邪魔が入ったみたいね。」

 魔術師が見ている方向には王国騎士団が構えていた。
 戦闘に立っていたグレイソンが女性の姿を見て、驚愕している。

「…まさか彼女がこんな所にいるとはな」

「副団長!突撃の許可を」

「いや、今日は引き上げよう。
 この戦力では些か分が悪い。」

「なぜです!相手は女性2人ではありませんか!それに安藤桜は戦力外と見て間違いありません。」

「彼女の名はビビアン・グレモアナ。
 混沌の魔導師カオス・ルーラーと言えば聞き覚えがあるか?」

「なっ!かつてハーベスティア王国最強の魔術師と君臨していたが、ある日、国王を殺害しようとして失敗…その後は行方不明となっていたというあの魔術師ですか?
 噂話と思っていましたが、実在していたとは…」

「ああ、戦いがあった時はまだ下っ端だったから詳しくは知らないが、噂によると彼女は全属性の魔術を使いこなすらしい。
 どちらにしても、俺一人でどうにかなる相手ではない。ここは引くぞ。」

「あら、リスランダ王国の隊長さんは随分と慎重なのね。」

「貴方みたいな相手とやり合うには準備が必要なんですよ。なんせ魔導具も持ってきていないもので」

「それじゃあ勝負にならないわね。
 いいわ。見逃してあげるからどっか行きなさい。」

「感謝する。」

「忘れ物よ。そんなやつ切り捨てた方がいいんじゃない?」

「そうですね。検討します。」

 ビビアンはダグラを兵士たちの方へと投げつけた。
 兵士たちはダグラを回収し、村から引き上げて行く。

「誰だか知らねえが助かった。ありがとよ。」

「いいのよ。それより、この子預からせて貰うわね。
 この子と私がここにいったらまたあいつらが来るし。しかも次は魔導具を持って。
 村にも迷惑かけるかも知れないから直ぐに出ていくわ。
 この子の荷物とかあるなら持っていくから教えて。」

「あ…ああ」

 ビビアンの勢いに押されてしまい、ロドルフは家の中へと案内し安藤の荷物一式をビビアンに渡す。
 荷物といっても服と少しのお金だけだが。

「一体どこに連れて行くんだ?」

「私の家よ。場所までは言えない。
 あとこれあげるわ。」

 ビビアンからビー玉くらいのサイズの小さな球体を渡された。

 「あの兵士たちからなんか嫌がらせされたらこれを地面に投げなさい。
 直ぐに飛んできてあげるから。あと娘さん?だっけ。母親と家で元気にしてるわよ。
 あれハッタリだから気になるなら通信の一つでも入れてみなさい。じゃあね。」

 ビビアンが杖を地面にコンッと叩くと魔法陣が浮かび上がり光が2人を包み込んだ。

「え!なんでその事を…ってもう行くのかよ。
 その子が起きたら伝えて置いてくれ!
 なんかあったらいつでもこの村に来いよ。
 いつまでも待ってるからな。」

「気が向いたらね。」

 光が消えた頃には2人の姿もその場から無くなっていた。

「一体なんだったんだ?
 …ってそれどころじゃねえ。
 アニーは無事なんだろうな!」

 ロドルフは慌てて娘の安全を確かめる為に家にある魔導具で通信する。
 今が真夜中だという事も忘れて。

「アニー!大丈夫か?なにかに襲われたりしてないか?」

「お父さん、うるさい。今何時だと思ってるの!それになに?久しぶりに電話してきたかと思ったら変なこと言いだして…わけわかんない。でも丁度良かった。
 今度お母さんの誕生日あるの忘れてないよね。
 ずっと待ってるんだから仕事もいいけど、顔くらい見せに来て。
 いい、絶対だからね。」

「そうか…良かったぁ…、誕生日、絶対に行くよ。約束だ。」

「よかった。じゃあね、バイバイ。」

 ロドルフの目からは涙が零れ落ちていた。
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