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ドニー村
黒猫
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「一つ聞かせて下さい。この村の住人が何処に行ったか…貴方は知っていますか?」
「知れねえよ。来た時からこの状況だ。」
「そうか…それでは奴らの仕業か…やはり勇者というのはーーーーーー」
小さな声でボソッとなにかを呟いているが良く聞こえない。
「村の住人が居なくなったっていうのにやけに落ち着いてるな。心当たりでもあるのかい?」
「ああ、犯人に大体の目星はついた。こんな芸当が出来るものなどそうそういないからな。」
丁寧だった言葉遣いが変わる。
「気が変わった。やはり貴様にはここで消えて貰う事にする。恨むなら仲間の勇者を恨むことだな。」
首を持ちさらに上へと持ち上げと、音宮が苦しさのあまり足をバタバタとさせている。
「勇者と言えど、所詮はこの程度の実力だ。我々の敵ではない。」
首の骨を折らんとする勢いで絞めるセルジールだったが、一瞬音宮の足が鎧に触れた。
その瞬間、体中に不可解な振動が発生し、音宮を放してしまう。
奴が鎧を着ていて助かった。鉄は音を伝導しやすい。
今しかない、このチャンスを逃せば確実に殺される。
部屋の中には俺と奴の2人だけ。
加減して倒せる相手ではない。
最大火力で倒してやる。
音宮が指を鳴らそうとしたその時、視界の端にないかが映る。
あれはーー黒猫
マズい、部屋の中に入っている。
どうする?このままじゃ巻き添えになる。
音宮の攻撃の弱点、それは現段階では広範囲攻撃しか持ち合わせていないという事だ。
一方向に集中して音を飛ばすなどといった芸当は出来ない。
だから今までも安藤を引き離したり、敵の至近距離で放つことで対応してきた。
急に現れた猫の存在に攻撃する事を一瞬躊躇してしまう。
それが命取りとなった。
一瞬で間合いを詰め、壁に叩きつけられる。
「一瞬攻撃を躊躇したな…なるほど、猫を巻き添えにすることを嫌ったか。
馬鹿な事を…そのせいでお前は今から命を落とす事になる。安心しろ、仲間の勇者たちも全員同じところに送ってやる。」
「ハッ…随分と俺たちの事が嫌いみたいだな。そんなに嫌いならなんでこの世界に呼んだんだ?王の独断か?」
「今から死ぬお前には関係のない事だが…まあ、この世界において勇者とは国の利益の為に利用する使い捨ての道具とだけ言っておこうか。」
「使い捨ての道具…ね。俺は利用しなくていいのか?」
「お前は不良品だ。こちらのいう事を聞くようには思えない。不良品は即刻処分するに限る。話は終わりだ。潔く死ね。」
「にゃ~」
セルジールが音宮を切ろうと、剣を振り降ろすが音宮へと黒猫が寄り添ってきたことにより、寸前で剣を止める。
「ハハ…助けに来てくれたのか?危ないから早く出ていけ」
音宮が向こうに行けという意図で手で振り払うが猫は一向に音宮の傍を離れない。
「邪魔だな。その猫を殺したくなくば直ぐにどかせ。さもなくば纏めて斬る。」
「無茶いうな、俺はさっきから振り払っているだろうが。」
「そうか、ならば仕方ない。巨悪を滅ぼすのに犠牲は付きもの。その猫には貴様を殺すための犠牲になって貰おう。」
「無茶苦茶だな…おい、さっさと行け。本当に斬られるぞ。」
思いっきり猫を突き放すと、音宮の傍に寄るのをやめ、セルジール目掛けて突進しだした。
「ばか!やめろ!」
音宮が止めようとするが、体が動かない。
「慕う人間を間違えたな…」
セルジールが猫を叩き切ろうとするが次の瞬間、セルジールの体は宙に浮かび家の壁を突き破って吹き飛ばされた。
「全く…動物には優しくしなきゃ。」
黒猫の姿は無くなっており、その代わりに一人の女性が立っていた。
姿形は人間のようだが、一つだけ決定的に違う所がある。
それは、頭に生えている猫耳だ。
「私のせいで勝てるチャンス逃しちゃったんだよね。
ごめん。そんなつもりはなかったんだけど、ちょっと気になって覗いちゃった。
代わりにあの人倒してあげるから許してね。」
猫耳の女性がこちらへと振り返り、笑顔で話しかけてきた。
「知れねえよ。来た時からこの状況だ。」
「そうか…それでは奴らの仕業か…やはり勇者というのはーーーーーー」
小さな声でボソッとなにかを呟いているが良く聞こえない。
「村の住人が居なくなったっていうのにやけに落ち着いてるな。心当たりでもあるのかい?」
「ああ、犯人に大体の目星はついた。こんな芸当が出来るものなどそうそういないからな。」
丁寧だった言葉遣いが変わる。
「気が変わった。やはり貴様にはここで消えて貰う事にする。恨むなら仲間の勇者を恨むことだな。」
首を持ちさらに上へと持ち上げと、音宮が苦しさのあまり足をバタバタとさせている。
「勇者と言えど、所詮はこの程度の実力だ。我々の敵ではない。」
首の骨を折らんとする勢いで絞めるセルジールだったが、一瞬音宮の足が鎧に触れた。
その瞬間、体中に不可解な振動が発生し、音宮を放してしまう。
奴が鎧を着ていて助かった。鉄は音を伝導しやすい。
今しかない、このチャンスを逃せば確実に殺される。
部屋の中には俺と奴の2人だけ。
加減して倒せる相手ではない。
最大火力で倒してやる。
音宮が指を鳴らそうとしたその時、視界の端にないかが映る。
あれはーー黒猫
マズい、部屋の中に入っている。
どうする?このままじゃ巻き添えになる。
音宮の攻撃の弱点、それは現段階では広範囲攻撃しか持ち合わせていないという事だ。
一方向に集中して音を飛ばすなどといった芸当は出来ない。
だから今までも安藤を引き離したり、敵の至近距離で放つことで対応してきた。
急に現れた猫の存在に攻撃する事を一瞬躊躇してしまう。
それが命取りとなった。
一瞬で間合いを詰め、壁に叩きつけられる。
「一瞬攻撃を躊躇したな…なるほど、猫を巻き添えにすることを嫌ったか。
馬鹿な事を…そのせいでお前は今から命を落とす事になる。安心しろ、仲間の勇者たちも全員同じところに送ってやる。」
「ハッ…随分と俺たちの事が嫌いみたいだな。そんなに嫌いならなんでこの世界に呼んだんだ?王の独断か?」
「今から死ぬお前には関係のない事だが…まあ、この世界において勇者とは国の利益の為に利用する使い捨ての道具とだけ言っておこうか。」
「使い捨ての道具…ね。俺は利用しなくていいのか?」
「お前は不良品だ。こちらのいう事を聞くようには思えない。不良品は即刻処分するに限る。話は終わりだ。潔く死ね。」
「にゃ~」
セルジールが音宮を切ろうと、剣を振り降ろすが音宮へと黒猫が寄り添ってきたことにより、寸前で剣を止める。
「ハハ…助けに来てくれたのか?危ないから早く出ていけ」
音宮が向こうに行けという意図で手で振り払うが猫は一向に音宮の傍を離れない。
「邪魔だな。その猫を殺したくなくば直ぐにどかせ。さもなくば纏めて斬る。」
「無茶いうな、俺はさっきから振り払っているだろうが。」
「そうか、ならば仕方ない。巨悪を滅ぼすのに犠牲は付きもの。その猫には貴様を殺すための犠牲になって貰おう。」
「無茶苦茶だな…おい、さっさと行け。本当に斬られるぞ。」
思いっきり猫を突き放すと、音宮の傍に寄るのをやめ、セルジール目掛けて突進しだした。
「ばか!やめろ!」
音宮が止めようとするが、体が動かない。
「慕う人間を間違えたな…」
セルジールが猫を叩き切ろうとするが次の瞬間、セルジールの体は宙に浮かび家の壁を突き破って吹き飛ばされた。
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それは、頭に生えている猫耳だ。
「私のせいで勝てるチャンス逃しちゃったんだよね。
ごめん。そんなつもりはなかったんだけど、ちょっと気になって覗いちゃった。
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