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ドニー村
絶体絶命
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翌朝、音宮が目を覚ますと体が重い。
なにかが乗っているような違和感を感じる。
ふと、横を見るとそこに居たのは安藤だった。
なんで安藤が俺の隣で寝てるんだ。
今までは一応異性という事もあって寝る時は極力距離を開けて寝るようにしていた。
この事で安藤の了承を得た訳ではないが、暗黙の了解というやつでわかっていたと思うのだが…
そんな事を考えていると視線を感じ取ったのか、安藤が目を覚ます。
ばっちりと目が合ってしまい安藤は徐々に頬が赤くなり照れてしまう。
「あ、あのね。これはその…違うの。えっと…音宮君が苦しそうだったから、それで何とかしようと思って…えっと…」
「安藤さん、落ち着いて。別に気にしてないから。」
ビックリはしたが気にしていないのは本当だ。
男が横に居たら不快だが、女子ならただの役得だ。
安藤を落ち着かせて、一先ず次の目的地を決める事になった。
「音宮君の怪我を治してくれる人を探しに行こう。その怪我、あんまりいい状態には見えないよ。」
こればっかりは彼女の言う通りだ。
日に日に悪化している気しかしない。
歩くことはまだ出来るが、傷跡がズキズキと痛む。
「そうだね。だとすると一番近くてそれなりに栄えてそうな場所がいいかな…」
地図を広げて見てみるが、近辺には小さな集落しかない。
何処が栄えているかなんて実際に見るか、誰かに聞かなければ分からないので今の音宮たちには調べようがない。
「変に村に居座っても時間が経つだけだ。ここは思い切って他国に行くのもありかも。リスランダは門番を倒しちゃったから入れないだろうけど、他の国なら大丈夫だと思う。首都の方が治せる人もいるだろうし、時間はかかるけどそれが一番安全かな。」
「わかった。音宮君がそういうならそうしよう。でも、無理だけはしないでね。私だって少しは戦えるんだから。」
フェルトとの戦いで少しは自信をつけたのだろう。
自分から意見し行動するようになっている。
成長したなあ、なんて我が子を見るかのような目で安藤を眺めていると急にコンコンっと家を叩く音が聞こえた。
ーーしまった…感知するのを忘れていた。
俺の反音響では誰かまでは大きさなどは分かっても誰かと言った詳しい情報はわからない。
ざっと探った感じ、馬と人がいるといった感じか。
「家主さんが帰って来たのかな?」
「それはない。自分の家ならノックする必要はない。考えられる可能性は二つ。
一つ目は家主の知り合いが訪問した来たパターン。この場合は居留守を使うなり、適当に嘘をついて誤魔化せばいいだけだからなんとかなる。
もう一つは追手が来たパターン。これは最悪だ。
この村には人がいなかった。今ざっと感知したけどまだ誰も帰って来てない。
それなのにこの家をわざわざノックしたという事は…」
「音宮響様、安藤桜様、中にいるのは分かっています。
私は王国騎士団団長を務めさせていただいているセルジール・スクライドです。
今すぐお戻りください。私とて手荒な真似はしたくない。
フェルトに勝ったからといって私に勝てるなどと思わない事です。
5つ数えるうちにこの扉を開け、出てきて下さい。」
セルジールのカウントダウンが始まる。
「安藤さん、壁を破って逃げるんだ。大丈夫、あいつの他に外には誰もいない。今なら逃げ切れる。」
「うん、わかった。音宮くん、つかまって。」
安藤が音宮に肩を貸そうとするが一向に動く気配がない。
「音宮くん…?」
「俺はここに残って足止めするよ。残念だけど動けそうにないからね。足手まといになる。」
「そんな!一緒に逃げようよ。大して役に立たないかもだけど、私だって少しは強くなったつもりだよ!だから…」
「早く行くんだ。もう時間がない。安藤さんは強くなったけどまだあいつらに勝てる程じゃない。それに、俺を庇いながら逃げたって二人とも捕まるだけだよ。ほら、もうカウントダウンも終わる。行って…早く!」
セルジールが扉を開けると同時に安藤が樹木で家に穴をあけ隙間から走り出していった。
「足止めですか…無駄にならなければ良いですね。」
「そんなんじゃねえよ。あいつから聞いてないのか?この状況、追い込まれてるのはお前の方だぞ。」
フェルトの時と同様に爆音で気を失わせようとしたその時、一瞬にして目の前に現れたセルジールが音宮の両手を掴む。
「聞いていますよ。なにやら不思議なスキルを使ってくると。
ですが、共通点として貴方は手や指などを動かす予備動作があるという事も聞いています。なんらかのアクションをした後でしか発せない能力なら、すべての動作をさせなければいい。簡単な話です。」
両手を掴まれたまま、上へと持ち上げられる。
地面を踏めればそこから音を発生させる事が出来るのに、それさえも封じられてしまった。
クソっ…此処までか…
怪我なども相まって朦朧とする意識のなか、音宮の視界に映ったのは一匹の黒猫の姿だった。
なにかが乗っているような違和感を感じる。
ふと、横を見るとそこに居たのは安藤だった。
なんで安藤が俺の隣で寝てるんだ。
今までは一応異性という事もあって寝る時は極力距離を開けて寝るようにしていた。
この事で安藤の了承を得た訳ではないが、暗黙の了解というやつでわかっていたと思うのだが…
そんな事を考えていると視線を感じ取ったのか、安藤が目を覚ます。
ばっちりと目が合ってしまい安藤は徐々に頬が赤くなり照れてしまう。
「あ、あのね。これはその…違うの。えっと…音宮君が苦しそうだったから、それで何とかしようと思って…えっと…」
「安藤さん、落ち着いて。別に気にしてないから。」
ビックリはしたが気にしていないのは本当だ。
男が横に居たら不快だが、女子ならただの役得だ。
安藤を落ち着かせて、一先ず次の目的地を決める事になった。
「音宮君の怪我を治してくれる人を探しに行こう。その怪我、あんまりいい状態には見えないよ。」
こればっかりは彼女の言う通りだ。
日に日に悪化している気しかしない。
歩くことはまだ出来るが、傷跡がズキズキと痛む。
「そうだね。だとすると一番近くてそれなりに栄えてそうな場所がいいかな…」
地図を広げて見てみるが、近辺には小さな集落しかない。
何処が栄えているかなんて実際に見るか、誰かに聞かなければ分からないので今の音宮たちには調べようがない。
「変に村に居座っても時間が経つだけだ。ここは思い切って他国に行くのもありかも。リスランダは門番を倒しちゃったから入れないだろうけど、他の国なら大丈夫だと思う。首都の方が治せる人もいるだろうし、時間はかかるけどそれが一番安全かな。」
「わかった。音宮君がそういうならそうしよう。でも、無理だけはしないでね。私だって少しは戦えるんだから。」
フェルトとの戦いで少しは自信をつけたのだろう。
自分から意見し行動するようになっている。
成長したなあ、なんて我が子を見るかのような目で安藤を眺めていると急にコンコンっと家を叩く音が聞こえた。
ーーしまった…感知するのを忘れていた。
俺の反音響では誰かまでは大きさなどは分かっても誰かと言った詳しい情報はわからない。
ざっと探った感じ、馬と人がいるといった感じか。
「家主さんが帰って来たのかな?」
「それはない。自分の家ならノックする必要はない。考えられる可能性は二つ。
一つ目は家主の知り合いが訪問した来たパターン。この場合は居留守を使うなり、適当に嘘をついて誤魔化せばいいだけだからなんとかなる。
もう一つは追手が来たパターン。これは最悪だ。
この村には人がいなかった。今ざっと感知したけどまだ誰も帰って来てない。
それなのにこの家をわざわざノックしたという事は…」
「音宮響様、安藤桜様、中にいるのは分かっています。
私は王国騎士団団長を務めさせていただいているセルジール・スクライドです。
今すぐお戻りください。私とて手荒な真似はしたくない。
フェルトに勝ったからといって私に勝てるなどと思わない事です。
5つ数えるうちにこの扉を開け、出てきて下さい。」
セルジールのカウントダウンが始まる。
「安藤さん、壁を破って逃げるんだ。大丈夫、あいつの他に外には誰もいない。今なら逃げ切れる。」
「うん、わかった。音宮くん、つかまって。」
安藤が音宮に肩を貸そうとするが一向に動く気配がない。
「音宮くん…?」
「俺はここに残って足止めするよ。残念だけど動けそうにないからね。足手まといになる。」
「そんな!一緒に逃げようよ。大して役に立たないかもだけど、私だって少しは強くなったつもりだよ!だから…」
「早く行くんだ。もう時間がない。安藤さんは強くなったけどまだあいつらに勝てる程じゃない。それに、俺を庇いながら逃げたって二人とも捕まるだけだよ。ほら、もうカウントダウンも終わる。行って…早く!」
セルジールが扉を開けると同時に安藤が樹木で家に穴をあけ隙間から走り出していった。
「足止めですか…無駄にならなければ良いですね。」
「そんなんじゃねえよ。あいつから聞いてないのか?この状況、追い込まれてるのはお前の方だぞ。」
フェルトの時と同様に爆音で気を失わせようとしたその時、一瞬にして目の前に現れたセルジールが音宮の両手を掴む。
「聞いていますよ。なにやら不思議なスキルを使ってくると。
ですが、共通点として貴方は手や指などを動かす予備動作があるという事も聞いています。なんらかのアクションをした後でしか発せない能力なら、すべての動作をさせなければいい。簡単な話です。」
両手を掴まれたまま、上へと持ち上げられる。
地面を踏めればそこから音を発生させる事が出来るのに、それさえも封じられてしまった。
クソっ…此処までか…
怪我なども相まって朦朧とする意識のなか、音宮の視界に映ったのは一匹の黒猫の姿だった。
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