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カルチア森林

目的地

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 「音宮くん…うそ…音宮くん!!」

 倒れ込んでいる音宮の姿を見て、絶叫する安藤だったが、立っているフェルトの様子がおかしい。その場から動こうともしていない。

「安藤さん、大丈夫だよ。」

 音宮は座り込んだまま、安藤に返事するとゆっくりと歩き出した。
 倒れそうになる音宮の体を安藤が支える。

「おっと…流石にちょっとキツイな。ありがとね。」

「ううん、大丈夫だよ。それよりもどうなったの?」

「ああ、気を失ってるだけだよ。安藤さんが間に合ったおかげで何とか勝てた。
 暫くはダイジョブだと思うけど、時間が経てば直ぐに目が覚める。
 早いとこ森を抜けてどこかに身を隠さないと…」

 音宮が歩き出そうとするが、足に力が入らずそのまま倒れ込んでしまう。

「音宮くん!大丈夫?」

 安藤が倒れた体を起こそうと音宮の体に触れた時、異変に気付いた。

「熱っ!…すごい熱。こんなの普通じゃないよ…どうして…」

 音宮の体が異常な熱を帯びている。
 問いかけてはみるが返事が帰って来ない。
 顔を見ると苦しそうにしている。
 先程の戦いで体力がもう限界なのだ。
 音宮は意識が朦朧としており、とても話せる状態ではなかった。

 こんな熱を出した状態で戦ってたの?一体いつから?
 聞きたいことは山ほどあるが、それに答えるものはいない。
 この場に来て、遂に安藤は1人で考え、行動しなければいけない事態に陥ってしまった。
 いつも考えてくれる音宮は倒れている。
 どうにかして助けないと…
 ただその一心で、音宮を連れドニー村目指して歩き出す。
 音宮の体を背負えるわけもないので引きずるような形にはなってしまっているが、それでも出来る限り傷付けないよう一生懸命に運びながら森の奥へと消えて行った。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 舞台は変わり、リスランダ王国の訓練所

「ふっ!ふっ!……………ふぅ…」

「お疲れ様です。
 剣術の腕前もだいぶ上がってこられたみたいですね。流石です。」

「いえいえ、セルジールさんの教えが良いからですよ。それにしても、久しぶりですね。
 セルジールさんが鍛練場に顔を出して下さるなんて。騎士団長としてのお仕事が忙しいと伺いましたが、大丈夫なんですか?」

 リスランダ王国の稽古場にて修業を行っていた天野光輝の元へ騎士団長のセルジール・スクライドが声を掛ける。

「まあ、やっと一息つけそうなところですね。それよりも、いいお知らせがあったので天野様にお伝えしに参りました。
 王国騎士団の第5部隊隊長であるフェルト・グローリーが音宮様と安藤様の両名を発見したとの連絡が入りました。
 良かったですね。2人はご無事でしたよ。」

「本当ですか⁉︎よかった~。
 急にクラスメイトがいなくなって、少し不安だったんです。俺がもっとみんなの事を見てやれてたらこんな事にはならなかったのかなって…俺、絶対に魔王を倒します。みんなと元の世界へ戻る為に!」

「天野様はお優しいのですね。
 フェルトには帰還次第、私に連絡するよう伝えてあるので直ぐにお伝えしますね。
 なに、距離的に考えると明日にでも帰ってきますとも。」

「セルジールさん、わざわざありがとございます。」

「とんでもない。それでは、私はこれで。
 何かありましたらいつでもお声掛け下さい。
 私に出来る事であれば協力しますので。」

 セルジールがその場を去ってゆく。
 天野は天を見上げて誓った。

 俺が皆んなを護るんだ!!
『勇者《ブレイバー》』のスキルに選ばれたこの俺が!!
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