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カルチア森林
決断
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フェルトが剣を抜き、構える。
奴との近距離戦は避けた方がいい。
そもそもの身体能力が劣っているだろうし、俺は武器も持っていない。
そんな状況で近距離戦を行えば敗北は必然。
一定の距離を取りつつ、徐々に削っていくのがベスト。
音宮が距離を取る為に下がろうとしたその時、フェルトの姿が目の前から消え、一瞬の内に背後へと移動していた。
はやっーーーー
気付いた時にはもう遅く、反応が間に合わず腹部への蹴りをその身に受けてしまう。
その威力も常人とは比べ物にならない威力を発揮しており、音宮の体はボールのように飛んで行き、崖に衝突する事で漸く止まった。
ただの蹴りでなんて威力だ。
普通ならあれで死んでいてもおかしくない。
だが、それで無事という事は俺自身の体にも何かしらの変化が起きている。
痛いのには変わりないが、動けない程ではないし、特に骨が折れた感覚もない。
これならまだ戦える。
「戦闘中に考え事ですか?良くないですね。戦いの鉄則は相手から目を逸らさない事です。目を逸らしたその一瞬が命取りになるかも知れない。戦場とはそういう場所ですよ。」
フェルトの剣が音宮へと振り下ろされる。
刃はしっかりと峰の方で攻撃している辺り殺す気はなさそうだが先程の蹴りの威力から考えると、この一撃をくらえば致命傷になりかねない。
そんな状況の中、音宮はフェルトを見ていない。
フェルトの剣が振り降ろされる。
その場にいた誰しもが終わったと思ったが、音宮は見向きもしないままフェルトの剣を回避する。
「残念だったな。見えてんだよ。」
音宮は常に反響音で周囲の状況を感知している。
視覚で捉えていなくとも、フェルトの動きはわかっているのだ。
問題はその動きに対応できる身体能力を持ち合わせていない事。
先程の攻撃は、フェルトが油断していた為回避する事がこんなチャンス二度と現れないだろう。
音宮は調理用で調達していたナイフを取り出し、フェルト目掛けて切りかかる。
「私の攻撃を避けたところには驚きましたが、その程度の攻撃では当たりませんよ。」
フェルトは既に剣を構えており、音宮の攻撃を難なく防いだ。
剣とナイフが触れ合ったその瞬間ーー
「な!私の剣が…なぜ!」
剣とナイフがぶつかり合えば弾かれるのが当たり前だ。
そうでないにしても、耐久力の低い方が砕けるならまだ理解できる。
だが、今フェルトの目の前で起こった出来事は理解しがたい。
なぜ私の剣が切断されている。
あのナイフはどう見ても戦闘用に作られたものではない。
良くて私の剣を弾く、運が悪ければ壊れていたのは向こうの筈だ。
あのナイフにそこまでの切れ味がある訳がない。
…となるとこれも音宮響のスキルという訳か。
今まで見た上で彼に出来る事は、手を叩いただけで矢を弾き飛ばす謎の攻撃、剣を切る程に切断力を強化した武器を生み出す能力、気を抜いてしまったとはいえ、私の攻撃を避けた感知能力、門番から聞いた周囲にいた人間を軒並み倒した目に見えない広範囲攻撃、この4つだ。
どの攻撃方法も目視で捉える事が出来ないという事。これが厄介だ。
一体どんなスキルを使っている…駄目だ、まったく見当がつかない。
「流石は勇者様…素晴らしいスキルをお持ちのようだ。
剣を折られた以上、私も少しは力を使わなければいけません。
もう一度言いますが投降するなら今の内です。
音宮様に言っているのではありません。
貴方は私と渡り合う事が出来る。
少しの時間ですが戦ってわかりました。
貴方は人のいう事を素直に聞くタイプの人間ではない。
なので力ずくで連れ帰らせて頂きます。
ですが、安藤様。貴方はどうですか?
貴方のスキルは兵士から聞いています。『開花』花を咲かせるだけのスキルだと。そのようなスキルで我々から逃げたとして、この先どうするおつもりですか?
何処へ行こうとも貴方のスキルでは生き抜くことは出来ません。
ならば、王宮へ戻り我々の庇護下で生き抜くのが賢明な判断です。
給仕や衛生兵、戦う以外の仕事もリスランダ王国には存在します。
それらの仕事をしながら生き残るのが賢明ではないでしょうか?
安藤様、ご決断ください。
このまま音宮様と共に逃げ、足を引っ張りながら逃げ続ける日々を過ごすか、それとも王国へ戻り抵当な職に就き平和に暮らすのか。」
奴との近距離戦は避けた方がいい。
そもそもの身体能力が劣っているだろうし、俺は武器も持っていない。
そんな状況で近距離戦を行えば敗北は必然。
一定の距離を取りつつ、徐々に削っていくのがベスト。
音宮が距離を取る為に下がろうとしたその時、フェルトの姿が目の前から消え、一瞬の内に背後へと移動していた。
はやっーーーー
気付いた時にはもう遅く、反応が間に合わず腹部への蹴りをその身に受けてしまう。
その威力も常人とは比べ物にならない威力を発揮しており、音宮の体はボールのように飛んで行き、崖に衝突する事で漸く止まった。
ただの蹴りでなんて威力だ。
普通ならあれで死んでいてもおかしくない。
だが、それで無事という事は俺自身の体にも何かしらの変化が起きている。
痛いのには変わりないが、動けない程ではないし、特に骨が折れた感覚もない。
これならまだ戦える。
「戦闘中に考え事ですか?良くないですね。戦いの鉄則は相手から目を逸らさない事です。目を逸らしたその一瞬が命取りになるかも知れない。戦場とはそういう場所ですよ。」
フェルトの剣が音宮へと振り下ろされる。
刃はしっかりと峰の方で攻撃している辺り殺す気はなさそうだが先程の蹴りの威力から考えると、この一撃をくらえば致命傷になりかねない。
そんな状況の中、音宮はフェルトを見ていない。
フェルトの剣が振り降ろされる。
その場にいた誰しもが終わったと思ったが、音宮は見向きもしないままフェルトの剣を回避する。
「残念だったな。見えてんだよ。」
音宮は常に反響音で周囲の状況を感知している。
視覚で捉えていなくとも、フェルトの動きはわかっているのだ。
問題はその動きに対応できる身体能力を持ち合わせていない事。
先程の攻撃は、フェルトが油断していた為回避する事がこんなチャンス二度と現れないだろう。
音宮は調理用で調達していたナイフを取り出し、フェルト目掛けて切りかかる。
「私の攻撃を避けたところには驚きましたが、その程度の攻撃では当たりませんよ。」
フェルトは既に剣を構えており、音宮の攻撃を難なく防いだ。
剣とナイフが触れ合ったその瞬間ーー
「な!私の剣が…なぜ!」
剣とナイフがぶつかり合えば弾かれるのが当たり前だ。
そうでないにしても、耐久力の低い方が砕けるならまだ理解できる。
だが、今フェルトの目の前で起こった出来事は理解しがたい。
なぜ私の剣が切断されている。
あのナイフはどう見ても戦闘用に作られたものではない。
良くて私の剣を弾く、運が悪ければ壊れていたのは向こうの筈だ。
あのナイフにそこまでの切れ味がある訳がない。
…となるとこれも音宮響のスキルという訳か。
今まで見た上で彼に出来る事は、手を叩いただけで矢を弾き飛ばす謎の攻撃、剣を切る程に切断力を強化した武器を生み出す能力、気を抜いてしまったとはいえ、私の攻撃を避けた感知能力、門番から聞いた周囲にいた人間を軒並み倒した目に見えない広範囲攻撃、この4つだ。
どの攻撃方法も目視で捉える事が出来ないという事。これが厄介だ。
一体どんなスキルを使っている…駄目だ、まったく見当がつかない。
「流石は勇者様…素晴らしいスキルをお持ちのようだ。
剣を折られた以上、私も少しは力を使わなければいけません。
もう一度言いますが投降するなら今の内です。
音宮様に言っているのではありません。
貴方は私と渡り合う事が出来る。
少しの時間ですが戦ってわかりました。
貴方は人のいう事を素直に聞くタイプの人間ではない。
なので力ずくで連れ帰らせて頂きます。
ですが、安藤様。貴方はどうですか?
貴方のスキルは兵士から聞いています。『開花』花を咲かせるだけのスキルだと。そのようなスキルで我々から逃げたとして、この先どうするおつもりですか?
何処へ行こうとも貴方のスキルでは生き抜くことは出来ません。
ならば、王宮へ戻り我々の庇護下で生き抜くのが賢明な判断です。
給仕や衛生兵、戦う以外の仕事もリスランダ王国には存在します。
それらの仕事をしながら生き残るのが賢明ではないでしょうか?
安藤様、ご決断ください。
このまま音宮様と共に逃げ、足を引っ張りながら逃げ続ける日々を過ごすか、それとも王国へ戻り抵当な職に就き平和に暮らすのか。」
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