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始まり

協力者

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 音宮はいつ王都を抜け出すかを迷っていた。
 王都から出るには門を抜ける必要があるが、そこにいる門番の存在が厄介だ。
 金で解決するのならまだやりようがあるのだが真面目な門番だったら終わりだ。
普通に通ろうとしても身分証などが必要と言われた場合はどうしようもない。
 実力行使で行くしかないが、そんな面倒な事するくらいなら王宮に戻って適当に仕事をこなし、隙を見て脱走したほうがマシだ。

 暗闇に身を潜め、門番の行動パターンを分析する。
流石は門番といったところか。
 素通りできるようなタイミングは見当たらず、音宮は小1時間この場にいる。

 夜の方が兵士の気も緩むかと思ってたんだけどなあ…以外にもその辺はしっかりしているようだ。
恐らく交代で仮眠などを取れるような仕組みなのだろう。
まったく…日本でももっとブラックな環境で働いているんだぞ。
なんで異世界のくせに現代よりまともな労働環境なんだ。

「あの…音宮くん」

 ーー!!

 考え事をしていると、突如何者かに肩を叩かれた。
不意の出来事に驚き、振り返るとその場にはクラスメイトの安藤桜がいた。

「…安藤さん。どうしてここに?みんなは王宮にいるんじゃないの。」

「うん。みんなはまだ王宮にいるよ。
 私はたまたま外を見てたら音宮君の姿が見えて追ってきたの…」

 安藤桜か…確かに彼女は内気で友達もいないようだったから、一人で追ってきたというのは嘘ではないだろう。
適当なことを言って帰ってもらうのが楽だが納得してくれるだろうか。
まあ、いざとなれば押し切ったらいける気がするが…

「ちょっと気になる事があってね。
もう少ししたら王宮に戻るから先に行ってていいよ。」

 音宮はそそくさとその場を立ち去ろうとする。

「………待って!」

 安藤が今までに出したこともないような大きな声をあげた。

「音宮君…本当に王宮に戻るの…
 本当は王宮に戻るつもりはないんでしょう。
 私も………連れて行って。私…誰とも戦いたくないの。
だから、どこか遠くに連れて行って欲しい。
途中まででもいいから、適当な場所で置いて行って貰って大丈夫だから、ついて行ったらダメかな?」

 この場で突き放すことは簡単だが、安藤が兵士に伝えて居場所がバレるのは厄介だな。
2人で脱走するよりも1人の方が手間がかからないし楽なのは目に見えてわかっているが、以外にも意思が固そうに見える。
この場を丸く収めるには適当なところまで一緒に行動して、必要なくなれば置いて行けばいいか。本人もそれでいいと言ってるし。
少しの間葛藤したが、そこまでデメリットはないと判断した。

「いいよ。ただ、俺は今すぐにでもこの王都を抜け出すつもりだけど、安藤さんは大丈夫?なにか忘れ物とかあるなら今の内だよ。」

「ありがとう。大丈夫だよ。
 特に友達とかいなかったし…」

 うわ~、2人きりなのに暗い話するなよ。
 少しは空気を良くしようとか気を使わないのか。
だから友達が出来ないんだよこの女は。
 学校というコミュニティにおいて、友人と呼ばれる存在はいるに越した事はない。
 教職員からの見られ方も変わってくるし、授業によっては班やペアを組む事だってある。
 こんな時に友人がいなければ余計な時間もかかるし、悪目立ちもする。
 だから友人は最低3名は作っておいた方が良い。そのくらいいれば、大抵の事はなんとかなるからだ。
まあ、今となってはどうでもいいけど…

「じゃあ作戦を説明するね。
俺がスキルで門番の気を引くからその隙に外へ出るんだ。
幸い、夜になって冒険者みたいな人たちが帰って来てるから通り方は分かった。
あの門は押せば開く簡単なものだ。
引き付ける事さえ出来れば後は時間との勝負。
時間は冒険者たち帰って来なくなったら直ぐに決行する。
戦える人が残ってたりしたら面倒だからね。」

音宮の作戦を聞き、首を縦に振る。
そこから暫くの間は2人で物陰に隠れながらただジッと門を見ていた。
人気が遠のき、門番の気が緩むその瞬間まで…」

「そろそろか…安藤さん、行くよ!」

少し離れた位置へ石を投げると地面に触れた瞬間、凄まじい音が響く。
住民たちまで家から飛び出し様子を見に来る始末だ。
近くにいた門番も持ち場を離れ見に行く。

ーーー今だ!! 

その瞬間、音宮が無意識に安藤の手を引きながら走り出す。
手を引かれた安藤の頬が赤く染まっている事には気付かなかった。
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