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第二章 商業大国オスヴィン
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時は遡り、シルフィーユが音宮を探しに行った後の事だ。
探しに行ったはいいものの音宮の居場所を把握する術を持っている訳もなく、ただやみくもに森の中を飛び回っていた。
「やっぱり見つかりませんね。どこに隠れているのでしょうか?」
早く見つけ出してアンリ達を加勢しに行かなければ…そう思っていた時、急に背後から人の声が聞こえた。
「おおっと。妖精か。まあいいや。おい!この森を俺の隠れ家にさせて貰う。身を隠すには打ってつけの様だからな。返事はハイだけだ。わかったな。」
口を押さえられ、首元にはナイフを突き付けられている。シルフィーユは恐怖のあまり、首を縦に振る事しか出来なかった。
「わかればいい。…ったく流石に勇者ってのは厄介だったな。お陰で面倒な事になりそうだぜ。」
シルフィーユを解放し、少し遠くにあった樹木に寄りかかる。
「貴方は一体?」
「ああ…盗賊だよ。とは言っても元が付くがな。」
盗賊と名乗った割には仲間の姿は見当たらない。元ということは何かしらの事情で解散する羽目になったのだろう。
「なぜこの森に来たのか聞いてもよろしいでしょうか?」
「なあに、デストリオンで少しばかり勇者と揉めてきたのさ。良いところまで行ったんだけどな。流石に数が多すぎた。少しばかり手傷を負ったが、まあ、目標は達成できた。何とか逃げ延びてここまでやって来たってわけさ。デストリオンからだとオスヴィンは馬で1週間もあれば着く。そこで身を隠せそうな森を見つけたんでな。馬は途中までは乗ってたんだが追跡されたくなかったから捨てて来たんだよ。」
「では、怪我が治ればこの森から出ていくのですか?」
それならば、私が回復魔法をかけて治してあげればいい。
「気分次第だな。言ったろ。隠れ家にさせて貰うって。居心地が良かったらそのまま使わせて貰うぜ。」
最悪だ…完全に目を付けられてしまっている。出ていく気はないのだろう。
どうやって盗賊を追い出すか考えていたシルフィーユの横に突如慣れ親しんだ魔力を感じた。この感じはドリエさんだ!
「なんだあ。めんどくさそうなのが出てきやがったな。」
「シルちゃんをいじめたな~」
樹木が蛇のように纏わりつき、盗賊の体を拘束する。
「やった!ドリエさん流石です!」
「えっへん」
胸を張り誇らしげな顔をするドリエだったが喜んだのも束の間、拘束していた木はひび割れ、腕力だけで砕かれてしまった。
「うそ…」
「脆いな…多少は魔力で強化してあるみたいだが、俺には意味ねえよ。それよりこの感じ、森中に魔力を張り巡らせてるのはお前だな。使い勝手が良さそうだ。貰うぜ、そのスキル…。」
目にも止まらないスピードで一瞬にして間合いを詰められてしまい、あっけなくドリエは首を掴まれ片手で持ち上げられる。
「おいおい、死ぬんじゃねえぞ。お前の力を奪うのに10分必要なんだからよお!」
「やめて下さい!ドリエちゃんが死んじゃう…」
ドリエが意識を失いかけたその時、何者かの気配を察知した盗賊が掴んでいた手を離した。それと同時に、先ほどまで手があった場所には猛スピードでナイフが落下してきた。
「こんなところで会えるとは思ってなかったぜ…なあ、おい!久しぶりじゃねえか!」
「なんか知ってる気配だとは思ったが…やっぱりお前か。なんで生きてるのかは気になるが、取り敢えずこの女はやらせない。こいつのスキルは俺の為に役立ててもらう必要があるんだ。殺させてたまるか。」
「へへ…そんな奴はもうどうでもいい。今はお前が先決だ。…おい!名前なんて言うんだ?そういや、まだ聞いてなかったな。教えろよ。」
「はあ…教えることにメリットを感じない。」
「つれねえ奴だな。俺はファング・グリードだ。よろしく。」
盗賊、ファング・グリードと音宮奏が再会した。
探しに行ったはいいものの音宮の居場所を把握する術を持っている訳もなく、ただやみくもに森の中を飛び回っていた。
「やっぱり見つかりませんね。どこに隠れているのでしょうか?」
早く見つけ出してアンリ達を加勢しに行かなければ…そう思っていた時、急に背後から人の声が聞こえた。
「おおっと。妖精か。まあいいや。おい!この森を俺の隠れ家にさせて貰う。身を隠すには打ってつけの様だからな。返事はハイだけだ。わかったな。」
口を押さえられ、首元にはナイフを突き付けられている。シルフィーユは恐怖のあまり、首を縦に振る事しか出来なかった。
「わかればいい。…ったく流石に勇者ってのは厄介だったな。お陰で面倒な事になりそうだぜ。」
シルフィーユを解放し、少し遠くにあった樹木に寄りかかる。
「貴方は一体?」
「ああ…盗賊だよ。とは言っても元が付くがな。」
盗賊と名乗った割には仲間の姿は見当たらない。元ということは何かしらの事情で解散する羽目になったのだろう。
「なぜこの森に来たのか聞いてもよろしいでしょうか?」
「なあに、デストリオンで少しばかり勇者と揉めてきたのさ。良いところまで行ったんだけどな。流石に数が多すぎた。少しばかり手傷を負ったが、まあ、目標は達成できた。何とか逃げ延びてここまでやって来たってわけさ。デストリオンからだとオスヴィンは馬で1週間もあれば着く。そこで身を隠せそうな森を見つけたんでな。馬は途中までは乗ってたんだが追跡されたくなかったから捨てて来たんだよ。」
「では、怪我が治ればこの森から出ていくのですか?」
それならば、私が回復魔法をかけて治してあげればいい。
「気分次第だな。言ったろ。隠れ家にさせて貰うって。居心地が良かったらそのまま使わせて貰うぜ。」
最悪だ…完全に目を付けられてしまっている。出ていく気はないのだろう。
どうやって盗賊を追い出すか考えていたシルフィーユの横に突如慣れ親しんだ魔力を感じた。この感じはドリエさんだ!
「なんだあ。めんどくさそうなのが出てきやがったな。」
「シルちゃんをいじめたな~」
樹木が蛇のように纏わりつき、盗賊の体を拘束する。
「やった!ドリエさん流石です!」
「えっへん」
胸を張り誇らしげな顔をするドリエだったが喜んだのも束の間、拘束していた木はひび割れ、腕力だけで砕かれてしまった。
「うそ…」
「脆いな…多少は魔力で強化してあるみたいだが、俺には意味ねえよ。それよりこの感じ、森中に魔力を張り巡らせてるのはお前だな。使い勝手が良さそうだ。貰うぜ、そのスキル…。」
目にも止まらないスピードで一瞬にして間合いを詰められてしまい、あっけなくドリエは首を掴まれ片手で持ち上げられる。
「おいおい、死ぬんじゃねえぞ。お前の力を奪うのに10分必要なんだからよお!」
「やめて下さい!ドリエちゃんが死んじゃう…」
ドリエが意識を失いかけたその時、何者かの気配を察知した盗賊が掴んでいた手を離した。それと同時に、先ほどまで手があった場所には猛スピードでナイフが落下してきた。
「こんなところで会えるとは思ってなかったぜ…なあ、おい!久しぶりじゃねえか!」
「なんか知ってる気配だとは思ったが…やっぱりお前か。なんで生きてるのかは気になるが、取り敢えずこの女はやらせない。こいつのスキルは俺の為に役立ててもらう必要があるんだ。殺させてたまるか。」
「へへ…そんな奴はもうどうでもいい。今はお前が先決だ。…おい!名前なんて言うんだ?そういや、まだ聞いてなかったな。教えろよ。」
「はあ…教えることにメリットを感じない。」
「つれねえ奴だな。俺はファング・グリードだ。よろしく。」
盗賊、ファング・グリードと音宮奏が再会した。
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