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第二章 商業大国オスヴィン

スキルの抜け道

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音宮がコルケーマへの道を歩いていた時、ドリエたちは合流を果たし音宮の後を追っていた。

「この方角は街へと戻っているみたいですけど、まだ後を追うんですか?」

「本当に出ていけばそれまで。見逃しても良いのだが…」

「駄目だよ!絶対ダメ!!私の事いじめたんだよ。ぜ~ったいに許してあげない。もう2人に頼まれなくても一生森から出してあげないんだから」

ドリエの発言を聞いてシルフィーユとアンリーヌの2人は苦笑する。

「まあ、一生出さないのはやりすぎにしてもしばらくの間は大人しくしていて欲しいものですね。」

「そうだな。せめてクロエの目的が終わるまでの間、コルケーマにいてくれたら良かったのだが…」

「だったらそうする?」

「「ーー!!」」

思わぬドリエの発言に驚く2人。

「そうする?って出来るのですか?」

「うん。この森から抜けれ無くしたのだって私の『同化』で木を操って同じ景色を何回も見せてるだけだし、同じ要領で街ごと森の中に隠したら多少の足止めにはなると思うよ。まあ、街の人にも迷惑掛かっちゃうけどね~」

「…無関係の人間を巻き込むのは避けたい。それは最終手段に取っておこう。一先ず、今は彼を追う事が先決だ。」

ーーーーーーーーーーー

「お、居た居た。」

一方、音宮はその頃目的の人物を探しに来ていた。とは言っても、音宮自身会ったことはなかったのだが、存在は認知していた。クロエが出ていった直後にコルケーマに現れたのは確認済みだ。間違いなくクロエの過去に繋がる人物であるという事は見当がついていたのだが、普通に巻き込まれたくなかった音宮は関わらない様にしていた。だが、既に関わってしまったものは仕方ない。

あいつか…

音宮の目に映るのは金髪の七三分けに眼鏡をかけた人物、リムガルドだ。

もう一人いるな。どこかで見た気が…あっ!あいつは確かクラスメイトの脇谷か。こんなところにいるとは想定外だな。姿を見せるわけには行かなくなった。

「そこにいるのは誰です。出て来なさい。」

リムガルドがこちらに気づいた。
当然か。クロエを追ってくるという事は奴もそれなりの実力者。俺より強いと想定した方がいい。だからこそ、今は都合がいい。

「出てこいと言われて出て行く訳がないだろう。お前たちはクロエを探しているな。俺を捕まえて見ろよ。そしたら居場所を教えてやる。」

「…罠ですね。貴方がクロエ・ルメイラの知人である事に間違いはなさそうですが私達を挑発してくる必要がない。考えられるとすれば足止め用の罠を設置している可能性が高い。ですが、我々とて手掛かりがないのも事実。乗ってあげましょう。脇谷、罠は全部貴方が潰しなさい。貴方のスキルなら可能でしょう。」

「承知しました。リムガルド様。」


罠とわかって乗ってくるという事は、よほど脇谷のスキルに自信があるのだろう。まあ、戦うのは俺じゃないのでどうでもいいが。

適度に近くにある大岩や折れた木などを転移させ攻撃しながら逃げるが、奴らに当たる直前、全ての攻撃が止まり地面へと落下する。

あれが脇谷のスキルか。遠距離攻撃は効かないと見た方が良さそうだ。

「なるほど。貴方の進行方向から気配がします。3人、待ち伏せですか。奇襲としては待ち伏せは有効ですが、居場所がバレていてはなんの効力も発揮できませんよ。」

リムガルドが脇谷に指示を出し、敵を迎え討つ準備をした。すると、リムガルドの予想通り音宮の進行方向からアンリーヌたちが現れる。

アンリーヌ達は音宮を追っていただけなので急に現れた人間に警戒していると、ちょうど両者の中間に音宮が現れた。

「後は任せた。」

それだけ告げると、またしても転移を使い姿を消す。

「クソッ!お前達はあの男の仲間か!」

「なにを言っておられるのやら。あなた方こそ彼の味方ではないのですか?」

単純だが、音宮が最後に放った「後は任せた」というセリフが両者が仲間である事を捨てきれない理由だった。

「私たちは訳あってあの男を追っている。仲間ではないというのであれば邪魔しないで貰おう。」

「それはこちらとて同じです。あなた方こそ仲間ではないというのであれば手を引いて頂けませんか?もちろん、私たちが聞きたい事がわかればその後はお返ししますので。」

「ね~、だったら全員で行こうよ~。早くしないと逃げられちゃうよ。」

「それは出来ない。そちらも同じだろう。」

「ええ、そうですね。初対面のあなた方を信じる事が出来ない。まだ仲間の可能性は捨て切れていないという事です。」

「だったら私のスキルを使いましょう。私のスキルは『真実』嘘かどうかを見破る事が出来ます。」

「…そうだな。彼女のスキルで仲間ではないと判明した場合、彼の捕獲は譲ろう。それで如何だろうか?」

「…それならばリスクは無さそうです。いいでしょう。」

「では、質問です。貴方達は彼の仲間ではないですか?」

ーーーーーーーーーーー

おそらく今頃奴らはあの妖精の能力で仲間であるかどうかを確認している事だろう。
そうするように仕向けたのだから。
それこそ俺の思う壺だ。あの場には脇谷がいた。わざわざ俺が一瞬だけ姿を現したのは何もあんな一言を残す為ではない。脇谷に俺の姿を認知させる事が目的だったのだ。仲間という言葉はあやふやだ。どこまでが仲間と呼ぶのかわかったものではないが、クラスメイトという言葉はクラスの仲間という意味にもなる。言葉遊びのように聞こえるが、この世界のスキルなんてそんなものだ。ただえさえ、俺に散々騙されたんだ。一つの質問で終わるはずがない。必ず何処かで引っかかる筈だ。

音宮の読みは正しかった。

「脇谷…まさか貴方が繋がっていたとは。」

「違うんです!前の世界で一緒だっただけで…それだけなんです。」

「どちらにせよ。彼女達とは戦うしか無さそうです。まったく…してやられましたね。」
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