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第二章 商業大国オスヴィン
同化
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三対一か…相手のスキルもわからない状況で戦うには分が悪すぎる。隙を見て逃げたいが、それを行うにはあの木妖精の存在が邪魔だ。どういう理屈かはわからないが、おれの転移ではやつに追いつかれてしまう。
音宮が考え事をしている間に、アンリーヌが背負っていた弓矢を構える。
矢はそう簡単に当たるものではない。俺も動物を狩る時には使っていたがそれもクロエに会ってからは辞めるように言われた。それなりの力を持つモンスターは体を魔力で覆っているので弾かれてしまうし、遠距離攻撃には魔術が存在する為、この世界ではあまり使われない武器だそうだ。そんな武器を対人戦で使うとは…その上、俺の能力は空間転移。ただでさえ、回避に関してはトップクラスの性能を持っているのに、一体何を考えているんだ。
アンリーヌの矢に魔力が集まっていく。
あれは…魔術か!
回避を試みた音宮だったが、周囲の木々が形を変え、檻のように音宮を包み隠していく。
「逃がさないよ~」
しまった!視界が遮られる。これじゃあ、転移が使えない。
「殺しはせんが、暫く眠っていて貰う。『千本の矢』
一つしかなかった矢が千個ほどに分裂し、その全てが音宮が閉じ込められている気の檻に直撃する。
「クロエから仙術を学んでいるんだろう。この程度で死なない事は分かっている。だが、それなりのダメージは受けた筈だ。大人しくコルケーマへと帰るんだ。そうすればこれ以上の危害は加えない。」
アンリーヌが音宮に向かって話しかけるが返事は一向に帰って来ない。
「返答なし…か。仕方ない。シル、ドリエ。奴を拘束する。協力して欲しい。」
「アンリさん…あの…ドリエさんが…」
ドリエの姿が見当たらない…
「シル!いったい何が起きたの?」
「私もわからないんですよ。気が付いたらいつの間にかドリエちゃんの姿が見えなくなっていて…」
「ーーはっ!もしかして、あの男…」
アンリーヌが木の檻の中を確認すると、音宮の姿は中には見当たらなかった。
「やられた…あの男、私たちに捕まってなんかいなかった。檻が閉じ切る前に逃げ出して、ドリエを攫ったんだ。私たちの中で彼を感知出来る上追いつけるのは彼女だけ。…シル!急いで見つけ出すわよ。」
行ったか…
音宮が近くの木に身を隠しながら、2人がその場から去っていくのを確認する。
「ん~~」
「ああ…悪い悪い。この森の出方を教えたら解放してやる。もちろん、コルケーマとは逆方向だぞ。」
音宮に口を塞がれ、拘束されていたドリエが解放される。
音宮は木の檻が完成する直前に、遠くの木影へと転移した。その後、隙をついてドリエのみを自身の元へ転移し、拘束していたのだ。ドリエを捕まえたのは単純に、彼女が森の脱出ルートを知っていると思ったからに他ならない。
「酷い事する人には教えてあげない!シルちゃん達に言いつけてやる。」
「逃すわけがないだろう。大人しく教えろ。」
「べ~だ。直ぐに逃げれるもんね~。」
ドリエが近くの木の幹に触れた瞬間、身体が木に吸い込まれるように消えていった。
ーーなっ!奴はどこに…
感知を使い探してみるが見つからない。
ドリエのスキル『同化』は、植物や無機物といったものと一体化する事が出来る。一体化している間は、魔力なども全て対象物と同じになるので感知に引っかかる事はない。今のドリエは木そのものなのだ。ドリエは木の中を移動している感覚で、次から次へと別の木と同化し移動を行なっている。その結果が音宮に転移を上回る速度の高速移動である。
スキルのネタはわかっていれば、音宮も対処する事が出来たかも知れないが、その事を知るよしもない。ドリエに追いつけない事は理解しているので追う事を辞めた。
この手は使いたくなかったが、俺がこの先どこへ向かおうが彼女らは追ってくるだろう。だったら追えない状況を作り上げるしかない。ちょうど良いところに気配を感じる。ぶつけてみるか…
音宮はコルケーマ方面へと歩き出した。
音宮が考え事をしている間に、アンリーヌが背負っていた弓矢を構える。
矢はそう簡単に当たるものではない。俺も動物を狩る時には使っていたがそれもクロエに会ってからは辞めるように言われた。それなりの力を持つモンスターは体を魔力で覆っているので弾かれてしまうし、遠距離攻撃には魔術が存在する為、この世界ではあまり使われない武器だそうだ。そんな武器を対人戦で使うとは…その上、俺の能力は空間転移。ただでさえ、回避に関してはトップクラスの性能を持っているのに、一体何を考えているんだ。
アンリーヌの矢に魔力が集まっていく。
あれは…魔術か!
回避を試みた音宮だったが、周囲の木々が形を変え、檻のように音宮を包み隠していく。
「逃がさないよ~」
しまった!視界が遮られる。これじゃあ、転移が使えない。
「殺しはせんが、暫く眠っていて貰う。『千本の矢』
一つしかなかった矢が千個ほどに分裂し、その全てが音宮が閉じ込められている気の檻に直撃する。
「クロエから仙術を学んでいるんだろう。この程度で死なない事は分かっている。だが、それなりのダメージは受けた筈だ。大人しくコルケーマへと帰るんだ。そうすればこれ以上の危害は加えない。」
アンリーヌが音宮に向かって話しかけるが返事は一向に帰って来ない。
「返答なし…か。仕方ない。シル、ドリエ。奴を拘束する。協力して欲しい。」
「アンリさん…あの…ドリエさんが…」
ドリエの姿が見当たらない…
「シル!いったい何が起きたの?」
「私もわからないんですよ。気が付いたらいつの間にかドリエちゃんの姿が見えなくなっていて…」
「ーーはっ!もしかして、あの男…」
アンリーヌが木の檻の中を確認すると、音宮の姿は中には見当たらなかった。
「やられた…あの男、私たちに捕まってなんかいなかった。檻が閉じ切る前に逃げ出して、ドリエを攫ったんだ。私たちの中で彼を感知出来る上追いつけるのは彼女だけ。…シル!急いで見つけ出すわよ。」
行ったか…
音宮が近くの木に身を隠しながら、2人がその場から去っていくのを確認する。
「ん~~」
「ああ…悪い悪い。この森の出方を教えたら解放してやる。もちろん、コルケーマとは逆方向だぞ。」
音宮に口を塞がれ、拘束されていたドリエが解放される。
音宮は木の檻が完成する直前に、遠くの木影へと転移した。その後、隙をついてドリエのみを自身の元へ転移し、拘束していたのだ。ドリエを捕まえたのは単純に、彼女が森の脱出ルートを知っていると思ったからに他ならない。
「酷い事する人には教えてあげない!シルちゃん達に言いつけてやる。」
「逃すわけがないだろう。大人しく教えろ。」
「べ~だ。直ぐに逃げれるもんね~。」
ドリエが近くの木の幹に触れた瞬間、身体が木に吸い込まれるように消えていった。
ーーなっ!奴はどこに…
感知を使い探してみるが見つからない。
ドリエのスキル『同化』は、植物や無機物といったものと一体化する事が出来る。一体化している間は、魔力なども全て対象物と同じになるので感知に引っかかる事はない。今のドリエは木そのものなのだ。ドリエは木の中を移動している感覚で、次から次へと別の木と同化し移動を行なっている。その結果が音宮に転移を上回る速度の高速移動である。
スキルのネタはわかっていれば、音宮も対処する事が出来たかも知れないが、その事を知るよしもない。ドリエに追いつけない事は理解しているので追う事を辞めた。
この手は使いたくなかったが、俺がこの先どこへ向かおうが彼女らは追ってくるだろう。だったら追えない状況を作り上げるしかない。ちょうど良いところに気配を感じる。ぶつけてみるか…
音宮はコルケーマ方面へと歩き出した。
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