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第二章 商業大国オスヴィン

木妖精

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エルフと妖精の跡を追っていると、2人は巨大な樹木の前で立ち止まった。

此処は確か仙術の感知が効かなかった場所だ。

「ドリエ、いるか?」

「なあに~またなんか頼みごと~?」

エルフが木に向かって話しかけると、中から緑色の髪をした眠そうな女が現れる。

「今日はお礼言いに来たんだ。お願い聞いてくれてありがとう。私たちはもう行くから結界はもう解いて良いぞ。」

「いいの~?人間の男を進ませたくないんじゃなかったっけ?」

「その男がさっき森を出て行った。だからもういいんだ。」

「出て行った??じゃあ、2人の後ろにいる人は誰なの?」

2人が音宮の方を振り向く。

間の抜けた喋り方をしているが、あの女見かけによらず鋭い。ここは一先ず転移で逃げ切るか…あの位置からなら姿は見えていない筈。いまなら行けるーー

「ねえねえ、何してるの?」

ーーなに!!なぜこいつかここに⁉

音宮は一瞬たりとも感知の力を解いていない。さっきまで誰も動いていないのだ。だが、一瞬にして緑髪の女性は音宮の前に現れた。なにかのスキルか。クソっ!

瞬時に転移を発動し、遠くへと逃げる。今、彼女たちに見つかれば戦闘になる可能性が高い。そうなれば、三対一どう考えても不利である。その上、能力は誰一人として検討が付いていない。この状況で戦おうとするほど音宮は愚かではなかった。だがーー

「鬼ごっこしてるの~私負けないよ~。」

またしても音宮の行先に彼女がいた。

どうやって俺の感知をすり抜けている。仙術による感知は気配察知や魔術感知よりも強力だ。そう簡単に阻害できるものではない。考えられる可能性は2つ。1つ目は俺と同じく、転移系のスキル持ちである場合だ。これなら一瞬で現れることにも説明がつくし感知も正常に働いていることになる。2つ目は、恐らくだが木から出てきたところを見ると、彼女の種族は木妖精《ドライアド》と呼ばれるものだ。仙術は自然を感じ取る力。自然と一体化出来る木妖精は感知できない可能性がある。その証拠に、一週間この森にいたが、この女を感知できたことは一度もなかった。後者の可能性が高いだろうな。だとすると、逃げるだけ無駄か。この木妖精は先ほどから樹木のある場所に突如として出現してくる。瞬間移動とまではいかないにしても3秒のインターバルで追いつかれてしまう事は明白。仕方ない。

音宮は逃げるのをやめた。

「あれ~、鬼ごっこは終わり?ところでお兄さんはなんであんなとこにいたの?」

「さあ?偶然…かな。今度は君が鬼をしてくれないか?後で捕まえに行くから。」

「ドリエ、騙されるなよ。…貴様、我々の後を追ってきたのか。あの時から気付いていたとはな。食えん男だ。」

木妖精の頭が悪い事に賭けて騙して逃げようと考えた音宮だったが、遅れてやって来たエルフと妖精に邪魔されてしまった。

「だから言ったじゃないですか!やっぱり彼、嘘ついてたんですよ!」

「今そんなことはどうでもいい。ここまで知られてしまったらしょうがない。少し手荒になってしまうが、実力行使するしかあるまいな。」

「まてまて、ここまで知られたらって…まだ俺はなにも聞かれてないぞ。なにも知らない可能性だってあるだろう。戦うなんて野蛮な真似はよせ。」

「では聞くが、何も知らないのか?」

「知らない。」

エルフが妖精の顔を見るが首を横に振る。嘘ではないと判断されている。当たり前だ。エルフの女の質問の仕方が悪い。主語が足りない状態ならいくらでも言い逃れが出来る。何に対して知らないのかを詳しく俺に問いただすべきだが、この女にそこまでの頭はない。このまま、この場を離れさせて貰おう。

2人が困惑している隙にこの場から去ろうとするがその時

「でもこの人、私たちの会話最初からずっと聞いてたよ~」

余計な事を…

2人がこちらを睨んでくる。明らかに臨戦態勢に入っているようだ。仕方ない、ここまできたらやるしかないだろう。

「黙って暫くの間この先の街へは進まないと約束してくれないか。それなら私たちも手を出さずに済む。」

「三対一です。分が悪い事は理解できているでしょう。」

「え~、私も戦うの?仕方ないな~。」

アンリーヌ・マドローア
種族…エルフ スキル…『無音《サイレント》』

シルフィーユ・リュエット
種族…妖精 スキル…『真実《トゥルー》』

ドリエ・ドミニカ
種族…木妖精《ドライアド》 スキル…『同化《アシミレイト》』
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