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第二章 商業大国オスヴィン

住み心地

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オスヴィンの何処かにある森林
音宮は未だにここから抜け出せずにいた。もう一週間は経過している。3日を過ぎたあたりから音宮は森林を抜け出すことを諦めかけている。なぜならーー

3日も歩いて抜け出せないんだ。そこまで広大な森林じゃあるまいし、仮にそうだとしたらお手上げだ。幸い、動物もいるし山菜や果物もある。今のところ食事には困っていない。ゲームとかで迷いの森みたいなのがあったからそんな感じのなのだろう。だったら俺には好都合だ。そもそも俺の目的は人目につかないところでひっそりと生活を送る事。あわよくば、クラスメイトの誰かが元の世界に戻る方法を見つけてくれたらいいな、くらいの感覚だ。俺から積極的に方法を探そうなんて考えない。『仙術』のスキルを得ているからわかるが、この森の空気は少しおかしい。感知が邪魔されているようだ。おそらく、精神に作用する魔術か何かを施しているのだろう。だとしたら、俺以外の人間にもこの効果は有効なはず。つまり、この森に居る限り俺は誰にも会わずにひっそりと生活することが出来るという訳だ。まあ、食料がいつまで持つかなど、問題はあるが拠点としてこの場所はありだ。

音宮はだんだんこの森が住み心地良く感じてきたのだ。
一人でいても特にやる事がないので、『仙術』スキルの修行をする。このスキルで強化されるのはなにも感知能力だけではない。大気の力と自分を一体化させるスキルの為、感知の場合は空気中の魔力に自分の魔力を溶け込ませることで感知を行っている。音宮は以前、酸素だけを転移させたがそれはこの感知能力が大気中の物質まで知ることが出来るからである。そして、自分の力を外に溶け込ませる感知とは逆に大気中の魔力を自身の中に取り込む身体強化も可能だ。これは、クロエがファングとの戦いで使用しており、体の強度があがり鉄の様に固くなったり、純粋に身体能力が上がる。クロエに言われた通り、かなり便利なスキルなのだがどれだけ早く大気中の魔力を集められるかが鍵となるので、修練は欠かさず行っていた。

感知能力を出来るだけ広範囲に発動する。すると、ある一定の範囲で霧がかかったように感知できなくなる場所がある。

やはり…毎回この場所だけは感知できないな。
恐らく、ここを起点に魔術を発動しているのだろう。
脱出するのであれば、ここに行く必要がありそうだがーー

「めんどくさいなあ…」

やっぱり、今日も行かない事にした。

面倒ごとが起きると俺の脳が言っている気がする。それに、ほんとに困ってないからなぁ。

ボケ~っとしながら大岩に座り空を見上げる音宮を何者かが覗いていた。

「おい!奴はいつまでこの森に居座る気だ。普通、来た道を戻るなり脱出しようとするだろう。」

「そんな事私に言われましても…ちゃんと帰り道は用意してあるんですよ。ただ、あの人がそれを器用に避けて通るんです。気付いてるんじゃないですか…?」

「そんな訳ないだろう。気付いてるなら帰り道を通るに決まってる。こんなところで何日も道草を食っている訳がない。…ほんとに奴がクロエの言っていた人間なのか?
あんな奴にクロエが惚れたとは思えんが…」

「でも、特徴はあってますよ。それに、私たちは足止めを頼まれているだけです。今のままでも十分目的を達成できてるのでいいじゃないですか。」

「それはそうなんだけど…やっぱりクロエの事が心配だから、私も力になりたいんだ。足手まといって言われたけど、それでもジッとしていられない。あいつをずっと見張ってる時間なんてないんだよ!」

見張ってるならなんであんなに大声出すかな…

2人の会話は音宮にだだ漏れだった。そもそも、数日前から気づいていたのだが放っておいた。襲われる訳でもなく、ただこちらを見ているだけだったからだ。何もしてこないのならこちらから接触する必要もない。なんせこっちには用事がないのだから。

この森で俺を迷わせること自体もクロエが仕組んだことか…という事はあの二人、クロエの友人といったところか。なにか事情を知っていそうだが…どうするか。

金髪のポニーテールに長い耳が特徴の女性と、背中には羽が生えており身長は手のひら程のサイズしかない少女。

種族はエルフと妖精といったところか。クロエとの共通点といえば人間ではないというところくらい…なるほどな。大体の予想はついた。だが、あくまでも予想に過ぎないし外れている可能性もあるがどうしたものか…。仕方ない。このまま此処に残っていてもいつか彼女たちに襲われてしまうだろう。エルフの方は気が強そうだ。今にも俺を殺そうとしている。返り討ちにしてやってもいいが力量も分からないし、なにより無駄な戦いはしたくない。

音宮は転移を発動し、2人の目の前に現れる。

「どうしたらこの森から出られるか知ってる?」

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