55 / 68
第二章 商業大国オスヴィン
コルケーマ
しおりを挟む
ここは商業大国オスヴィンの領地にある小さな港街コルケーマ
そこに新しく出来た店が人気になっていた。その店は魚屋という通常ならば大して人気の出るものではない筈なのだが、捌いてある魚があまりに奇麗なことで主婦の人気を獲得し、また看板娘である猫耳をつけた美女の存在で男性客も多く獲得している。
従業員は2人のみで、職人が捌いている姿は極秘ということで見ることは出来ないが客が持ち寄った魚を捌く事はして貰えるので不正を疑われる事もなかった。
「今日も疲れたね~。結構お金溜まったんじゃない?」
「まあ、そこそこある気はするけど…まさか、俺が働く羽目になるとはな。仮にも俺たちは王国から追われている訳だが、本当に大丈夫なのか?」
「平気だよ。オスヴィンはそんなこと気にしないからね。私たちの首に懸賞金でもかかってたら話は別だろうけど、この国の人たちはお金にならない事はしないよ。」
魚屋の職人の名前は音宮奏、看板娘はクロエ・ルメイラだった。
「この国に来た時から思っていたが、お前やけに詳しいな。過去に来たことでもあるのか」
「ずーっと昔に一度だけ。全くいい思い出がないから二度と来るもんかって思ってたけど…そろそろ昔の思い出に決着をつけるのもありかなって。」
そういったクロエの顔は、切ないような、何かを決心したかのよなとても複雑な顔をしていた。
関わるだけ野暮ってことか…こいつの事だ。俺を巻き込もうなんてことは考えないだろう。クロエとの付き合いも、もう半年を近くなる。性格もなんとなくだが理解している。普段はふざけた発言や人を揶揄ってくることが多いが、相手を思いやる気持ちは人一倍強い方だろう。他人が嫌がることは決してせず、相手が困っているなら助ける。俺と出会った時だって、彼女一人で逃げた方が手っ取り早い筈なのにわざわざ王国から追われている俺と行動を共にしている。そして、王国を抜けた今、こうやって商売を始めるきっかけをくれたのもクロエだ。彼女が猫人族で魚が好物だというのはもちろんあるだろうが、それを加味しても十分すぎる成果を上げている。これは新たに分かった事だが、どうやら俺の『空間転移』は死んでいる魚を内臓を取り出すのに使えるようだ。死んでいるからなのか。内臓が見えていたからなのか、どっちが正解かは分からないがおそらく両方の条件を達すると可能になるのだろう。別に対人戦でも対モンスター戦でも使える訳ではないが、食料を捌くときには使える。サバイバル生活をするにおいては大切な事だ。この街に来て、4カ月以上経っている。クロエの言う通り、お金はそこそこ溜まっているし、そろそろ頃合いか…
「クロエ、お前行きたい場所あるか?王都で一気に稼ぐのもいいし、このままどこかの山に籠って自堕落な生活を送るのもありだ。お前が決めろ。」
「どうしたの?人に判断を委ねるなんて…奏らしくないよ。ほら、お家に帰ろ。私お腹空いちゃった。」
クロエが音宮の背を押しながら2人の家へと帰って行く。
◇◇◇◇◇◇
王都のとある豪邸
オスヴィン一の金持ちと称される商人、ブロワス・アロイーズが複数の女性に囲まれながら座っていた。女性は皆、首輪と鎖のリードをつけられており奴隷だと言うことが一目でわかる。
「ここから少し遠くにある街に人気の魚屋があるらしい。そこにおる看板娘なんじゃがな…どうも、私が昔飼っていた奴隷に見えて仕方ないのだ。確認のため連れて来てくれ。な~に、報酬は弾むぞ。」
近くにいる従者から何かが入った袋を投げ渡される。中には100枚を超える金貨が入っていた。
「それは前金じゃ。成功報酬はさらに追加してやろう。存分に働け。評判は聞いておる。勇者をも圧倒する実力者なのだろう。頼りにしておるぞ、リムガルド殿。」
リムガルドはブロワスに頭を下げるとその場を後にした。
「リムガルド様、本当にあのようなものの依頼を受けるつもりなのですか?」
「脇谷、あなたはいつから私に意見できる立場になったのですか?それに金銭を受け取りさえすれば、どんな仕事でもこなすのが私のモットーです。この国は金が全て。私に意見を言いたいのであれば私以上の財力を手に入れてから言うことです。」
「………失礼しました。」
「わかればよろしい。それでは早速向かいますよ。行先はコルケーマです。そこに目当ての人物は必ずいる筈。」
リムガルドが音宮の前に姿を現そうとしていた。
そこに新しく出来た店が人気になっていた。その店は魚屋という通常ならば大して人気の出るものではない筈なのだが、捌いてある魚があまりに奇麗なことで主婦の人気を獲得し、また看板娘である猫耳をつけた美女の存在で男性客も多く獲得している。
従業員は2人のみで、職人が捌いている姿は極秘ということで見ることは出来ないが客が持ち寄った魚を捌く事はして貰えるので不正を疑われる事もなかった。
「今日も疲れたね~。結構お金溜まったんじゃない?」
「まあ、そこそこある気はするけど…まさか、俺が働く羽目になるとはな。仮にも俺たちは王国から追われている訳だが、本当に大丈夫なのか?」
「平気だよ。オスヴィンはそんなこと気にしないからね。私たちの首に懸賞金でもかかってたら話は別だろうけど、この国の人たちはお金にならない事はしないよ。」
魚屋の職人の名前は音宮奏、看板娘はクロエ・ルメイラだった。
「この国に来た時から思っていたが、お前やけに詳しいな。過去に来たことでもあるのか」
「ずーっと昔に一度だけ。全くいい思い出がないから二度と来るもんかって思ってたけど…そろそろ昔の思い出に決着をつけるのもありかなって。」
そういったクロエの顔は、切ないような、何かを決心したかのよなとても複雑な顔をしていた。
関わるだけ野暮ってことか…こいつの事だ。俺を巻き込もうなんてことは考えないだろう。クロエとの付き合いも、もう半年を近くなる。性格もなんとなくだが理解している。普段はふざけた発言や人を揶揄ってくることが多いが、相手を思いやる気持ちは人一倍強い方だろう。他人が嫌がることは決してせず、相手が困っているなら助ける。俺と出会った時だって、彼女一人で逃げた方が手っ取り早い筈なのにわざわざ王国から追われている俺と行動を共にしている。そして、王国を抜けた今、こうやって商売を始めるきっかけをくれたのもクロエだ。彼女が猫人族で魚が好物だというのはもちろんあるだろうが、それを加味しても十分すぎる成果を上げている。これは新たに分かった事だが、どうやら俺の『空間転移』は死んでいる魚を内臓を取り出すのに使えるようだ。死んでいるからなのか。内臓が見えていたからなのか、どっちが正解かは分からないがおそらく両方の条件を達すると可能になるのだろう。別に対人戦でも対モンスター戦でも使える訳ではないが、食料を捌くときには使える。サバイバル生活をするにおいては大切な事だ。この街に来て、4カ月以上経っている。クロエの言う通り、お金はそこそこ溜まっているし、そろそろ頃合いか…
「クロエ、お前行きたい場所あるか?王都で一気に稼ぐのもいいし、このままどこかの山に籠って自堕落な生活を送るのもありだ。お前が決めろ。」
「どうしたの?人に判断を委ねるなんて…奏らしくないよ。ほら、お家に帰ろ。私お腹空いちゃった。」
クロエが音宮の背を押しながら2人の家へと帰って行く。
◇◇◇◇◇◇
王都のとある豪邸
オスヴィン一の金持ちと称される商人、ブロワス・アロイーズが複数の女性に囲まれながら座っていた。女性は皆、首輪と鎖のリードをつけられており奴隷だと言うことが一目でわかる。
「ここから少し遠くにある街に人気の魚屋があるらしい。そこにおる看板娘なんじゃがな…どうも、私が昔飼っていた奴隷に見えて仕方ないのだ。確認のため連れて来てくれ。な~に、報酬は弾むぞ。」
近くにいる従者から何かが入った袋を投げ渡される。中には100枚を超える金貨が入っていた。
「それは前金じゃ。成功報酬はさらに追加してやろう。存分に働け。評判は聞いておる。勇者をも圧倒する実力者なのだろう。頼りにしておるぞ、リムガルド殿。」
リムガルドはブロワスに頭を下げるとその場を後にした。
「リムガルド様、本当にあのようなものの依頼を受けるつもりなのですか?」
「脇谷、あなたはいつから私に意見できる立場になったのですか?それに金銭を受け取りさえすれば、どんな仕事でもこなすのが私のモットーです。この国は金が全て。私に意見を言いたいのであれば私以上の財力を手に入れてから言うことです。」
「………失礼しました。」
「わかればよろしい。それでは早速向かいますよ。行先はコルケーマです。そこに目当ての人物は必ずいる筈。」
リムガルドが音宮の前に姿を現そうとしていた。
57
お気に入りに追加
1,891
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる