異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

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第二章 商業大国オスヴィン

コルケーマ

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ここは商業大国オスヴィンの領地にある小さな港街コルケーマ
そこに新しく出来た店が人気になっていた。その店は魚屋という通常ならば大して人気の出るものではない筈なのだが、捌いてある魚があまりに奇麗なことで主婦の人気を獲得し、また看板娘である猫耳をつけた美女の存在で男性客も多く獲得している。
従業員は2人のみで、職人が捌いている姿は極秘ということで見ることは出来ないが客が持ち寄った魚を捌く事はして貰えるので不正を疑われる事もなかった。

「今日も疲れたね~。結構お金溜まったんじゃない?」

「まあ、そこそこある気はするけど…まさか、俺が働く羽目になるとはな。仮にも俺たちは王国から追われている訳だが、本当に大丈夫なのか?」

「平気だよ。オスヴィンはそんなこと気にしないからね。私たちの首に懸賞金でもかかってたら話は別だろうけど、この国の人たちはお金にならない事はしないよ。」

魚屋の職人の名前は音宮奏、看板娘はクロエ・ルメイラだった。

「この国に来た時から思っていたが、お前やけに詳しいな。過去に来たことでもあるのか」

「ずーっと昔に一度だけ。全くいい思い出がないから二度と来るもんかって思ってたけど…そろそろ昔の思い出に決着をつけるのもありかなって。」

そういったクロエの顔は、切ないような、何かを決心したかのよなとても複雑な顔をしていた。

関わるだけ野暮ってことか…こいつの事だ。俺を巻き込もうなんてことは考えないだろう。クロエとの付き合いも、もう半年を近くなる。性格もなんとなくだが理解している。普段はふざけた発言や人を揶揄ってくることが多いが、相手を思いやる気持ちは人一倍強い方だろう。他人が嫌がることは決してせず、相手が困っているなら助ける。俺と出会った時だって、彼女一人で逃げた方が手っ取り早い筈なのにわざわざ王国から追われている俺と行動を共にしている。そして、王国を抜けた今、こうやって商売を始めるきっかけをくれたのもクロエだ。彼女が猫人族で魚が好物だというのはもちろんあるだろうが、それを加味しても十分すぎる成果を上げている。これは新たに分かった事だが、どうやら俺の『空間転移』は死んでいる魚を内臓を取り出すのに使えるようだ。死んでいるからなのか。内臓が見えていたからなのか、どっちが正解かは分からないがおそらく両方の条件を達すると可能になるのだろう。別に対人戦でも対モンスター戦でも使える訳ではないが、食料を捌くときには使える。サバイバル生活をするにおいては大切な事だ。この街に来て、4カ月以上経っている。クロエの言う通り、お金はそこそこ溜まっているし、そろそろ頃合いか…

「クロエ、お前行きたい場所あるか?王都で一気に稼ぐのもいいし、このままどこかの山に籠って自堕落な生活を送るのもありだ。お前が決めろ。」

「どうしたの?人に判断を委ねるなんて…奏らしくないよ。ほら、お家に帰ろ。私お腹空いちゃった。」

クロエが音宮の背を押しながら2人の家へと帰って行く。

◇◇◇◇◇◇
王都のとある豪邸

オスヴィン一の金持ちと称される商人、ブロワス・アロイーズが複数の女性に囲まれながら座っていた。女性は皆、首輪と鎖のリードをつけられており奴隷だと言うことが一目でわかる。

「ここから少し遠くにある街に人気の魚屋があるらしい。そこにおる看板娘なんじゃがな…どうも、私が昔飼っていた奴隷に見えて仕方ないのだ。確認のため連れて来てくれ。な~に、報酬は弾むぞ。」

近くにいる従者から何かが入った袋を投げ渡される。中には100枚を超える金貨が入っていた。

「それは前金じゃ。成功報酬はさらに追加してやろう。存分に働け。評判は聞いておる。勇者をも圧倒する実力者なのだろう。頼りにしておるぞ、リムガルド殿。」

リムガルドはブロワスに頭を下げるとその場を後にした。

「リムガルド様、本当にあのようなものの依頼を受けるつもりなのですか?」

「脇谷、あなたはいつから私に意見できる立場になったのですか?それに金銭を受け取りさえすれば、どんな仕事でもこなすのが私のモットーです。この国は金が全て。私に意見を言いたいのであれば私以上の財力を手に入れてから言うことです。」

「………失礼しました。」

「わかればよろしい。それでは早速向かいますよ。行先はコルケーマです。そこに目当ての人物は必ずいる筈。」

リムガルドが音宮の前に姿を現そうとしていた。
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