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クラスメイトの現状
クラスメイトの現状④
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闇黒地帯ダリウエル王国
一日中、日の登らないこの国に黒海率いるパーティがやってきて1ヶ月が経過している。
行動の制限などはなく、基本的には自由なのだが週に2~3回ほど、国王からの命令を受け任務をこなしている。
任務内容もなんの変哲もない、モンスター退治がメインとなっている。
与えられた部屋に勇者たちは集まっていた。
リーダーである黒海に呼ばれたからである。
「急に集まって貰って悪い。大事な話があってみんなを呼び出したんだが、俺の言った通り兵士たちに後をつけられてないか?」
「全員、それなりに警戒してたし兵士の姿はなかった。『気配察知』にも引っかかってないし大丈夫だと思う。」
黒海に問い掛けに、影山が答える。
ダリウエルに向かった後も黒海率いる勇者パーティは鍛錬をしっかり行なっていた。
『気配察知』『魔力感知』などの感知系能力は既に習得済みである。
「そうか、わかった。驚かないで聞いて欲しいんだが、俺はこの国を抜けようと思っている。お前たちも着いてくるか?」
「「「「ーー!!!!」」」」」
「ちょっと待て。突然そう言われても理解が出来ない。まずはそう考えた理由を教えてくれないか?話はそれからだ。」
一同が黒海の突然の発言に驚いている中、馬渡が話を纏めようとする。
「ああ、悪かった。とは言ってもこれは前々から考えていた事なんだ。…お前ら、この国…いや、前いたリスランダ王国もだが、おかしいとは思わないか?王というか住人が勇者への関心が薄すぎる。魔王軍と戦っているというわりには、俺たちを戦場へ駆り出す気もなく、事務作業的にモンスターの討伐を命じているだけだ。これではまるで俺たちをただ国内に押し留めているだけのように思える。
それに、この国に来て最初にいなくなった音宮だが、俺は音宮がいなくなったのには何か理由があると思っていた。音宮は賢い奴だ。
召喚された時、何かを感じ取って身を隠してたんだろう。それを踏まえて考えると俺はどうしても王国の事を信用できない。
それに、これが一番の理由だが王国は俺たちに嘘をついている可能性が高い。ここに来る道中、外を見ていて思ったんだがどの村も荒らされていないどころか平和そのもののように見えた。魔王軍の影すら掴めないんだ。
これで信用しろという方が無理だ。
俺は国を抜け出して、魔王軍を探す旅に出る。本当にいるのならそのまま魔王を倒せばいいし、もしいない場合はクラスメイトを助けに各国へ向かう。もちろん、強制はしない。なんの確証もないし、俺の妄想かも知れない。それでもいいのなら、着いてきて欲しい。」
黒海の考えを聞き、一同は悩む。
みんな薄々気づいてはいたのだ。
なんせこの班のメンバーは皆頭が良い。
些細な行動で勘づいてはいたが、考えないようにしていた。あまりにも信じたくないもので、なんの確証も得られなかったからだ。
だがーー
「私は行くわ。黒海くんの考えは私も思っていた事だったし信じる価値はある。
一人で行くよりもみんなで行ったほうが生存率は高くなる筈よ。」
「そうですね。私も同行します。私がいれば追手が来ても対応できるかと。」
矢久保と加賀の女性陣が賛同してくれた。
男性陣も言葉には出していないが、目が合うと首を縦に振ってくれた。
「じゃあ、さっそく今夜21時に決行する。
準備はしっかりと行なってくれ。」
皆が話している部屋の天井裏にネズミの目が赤く光っている。
「勇者たちは今夜、脱走するそうです。」
「ご苦労。それでは出発の30分前に勇者の泊まっている宿を兵で囲め。それで逃げきれないはずだ。殺して構わん。奴らはその為にこの国へ来たのだ。ふん、下手に頭が回るからこうなるのだ。」
我が国レゼスターは勇者の危険因子を排除する国。暗殺を生業としているゆえに、日が昇らないこの地域に国を建てているのだ。
バン!っと勢いよく王の部屋の扉が開いた。
「何事だ!」
「た…大変です!勇者の姿がどこにもありません。おそらく、逃げてしまったものと思われます。」
「なんだと…探せ!まだ遠くには行ってないはずだ。」
ーーーーーー
黒海を捜索している最中。
黒海たちは既にダリウエルから抜け出した後だった。
「あ…トラップがバレちゃったみたいです。。
そろそろ追手が来ます。」
「まあ、これだけ距離があればそう簡単には捕まらない。それにしても矢久保の『罠創造《トラップクリエイト》』は凄いな。まさかあんなものまで作れるなんて。」
「知識があればなんでも作れると思います。
ただ、罠として使用しなければ無意味なものになるんですけどね。」
兵士たちが聞いていたのは矢久保が作ったスマホの録音だ。この世界にスマホはないが、『罠創造』は矢久保の知識にあるものならなんでも作れる。ただし、罠として利用できないものは不可能だ。
国王が依頼を3日に一度くらいしか言ってこない事を逆手にした作戦だったが見事に成功した。
黒海は音宮と似たような性格をしているが、決定的に違うところがある。
それは、仲間思いなところだ。
彼は決して一人では逃げきれない。
助けれる人は助ける事がポリシーだった。
そのポリシーが後々、吉とでるか凶とでるかはまだ後に話だ。
一日中、日の登らないこの国に黒海率いるパーティがやってきて1ヶ月が経過している。
行動の制限などはなく、基本的には自由なのだが週に2~3回ほど、国王からの命令を受け任務をこなしている。
任務内容もなんの変哲もない、モンスター退治がメインとなっている。
与えられた部屋に勇者たちは集まっていた。
リーダーである黒海に呼ばれたからである。
「急に集まって貰って悪い。大事な話があってみんなを呼び出したんだが、俺の言った通り兵士たちに後をつけられてないか?」
「全員、それなりに警戒してたし兵士の姿はなかった。『気配察知』にも引っかかってないし大丈夫だと思う。」
黒海に問い掛けに、影山が答える。
ダリウエルに向かった後も黒海率いる勇者パーティは鍛錬をしっかり行なっていた。
『気配察知』『魔力感知』などの感知系能力は既に習得済みである。
「そうか、わかった。驚かないで聞いて欲しいんだが、俺はこの国を抜けようと思っている。お前たちも着いてくるか?」
「「「「ーー!!!!」」」」」
「ちょっと待て。突然そう言われても理解が出来ない。まずはそう考えた理由を教えてくれないか?話はそれからだ。」
一同が黒海の突然の発言に驚いている中、馬渡が話を纏めようとする。
「ああ、悪かった。とは言ってもこれは前々から考えていた事なんだ。…お前ら、この国…いや、前いたリスランダ王国もだが、おかしいとは思わないか?王というか住人が勇者への関心が薄すぎる。魔王軍と戦っているというわりには、俺たちを戦場へ駆り出す気もなく、事務作業的にモンスターの討伐を命じているだけだ。これではまるで俺たちをただ国内に押し留めているだけのように思える。
それに、この国に来て最初にいなくなった音宮だが、俺は音宮がいなくなったのには何か理由があると思っていた。音宮は賢い奴だ。
召喚された時、何かを感じ取って身を隠してたんだろう。それを踏まえて考えると俺はどうしても王国の事を信用できない。
それに、これが一番の理由だが王国は俺たちに嘘をついている可能性が高い。ここに来る道中、外を見ていて思ったんだがどの村も荒らされていないどころか平和そのもののように見えた。魔王軍の影すら掴めないんだ。
これで信用しろという方が無理だ。
俺は国を抜け出して、魔王軍を探す旅に出る。本当にいるのならそのまま魔王を倒せばいいし、もしいない場合はクラスメイトを助けに各国へ向かう。もちろん、強制はしない。なんの確証もないし、俺の妄想かも知れない。それでもいいのなら、着いてきて欲しい。」
黒海の考えを聞き、一同は悩む。
みんな薄々気づいてはいたのだ。
なんせこの班のメンバーは皆頭が良い。
些細な行動で勘づいてはいたが、考えないようにしていた。あまりにも信じたくないもので、なんの確証も得られなかったからだ。
だがーー
「私は行くわ。黒海くんの考えは私も思っていた事だったし信じる価値はある。
一人で行くよりもみんなで行ったほうが生存率は高くなる筈よ。」
「そうですね。私も同行します。私がいれば追手が来ても対応できるかと。」
矢久保と加賀の女性陣が賛同してくれた。
男性陣も言葉には出していないが、目が合うと首を縦に振ってくれた。
「じゃあ、さっそく今夜21時に決行する。
準備はしっかりと行なってくれ。」
皆が話している部屋の天井裏にネズミの目が赤く光っている。
「勇者たちは今夜、脱走するそうです。」
「ご苦労。それでは出発の30分前に勇者の泊まっている宿を兵で囲め。それで逃げきれないはずだ。殺して構わん。奴らはその為にこの国へ来たのだ。ふん、下手に頭が回るからこうなるのだ。」
我が国レゼスターは勇者の危険因子を排除する国。暗殺を生業としているゆえに、日が昇らないこの地域に国を建てているのだ。
バン!っと勢いよく王の部屋の扉が開いた。
「何事だ!」
「た…大変です!勇者の姿がどこにもありません。おそらく、逃げてしまったものと思われます。」
「なんだと…探せ!まだ遠くには行ってないはずだ。」
ーーーーーー
黒海を捜索している最中。
黒海たちは既にダリウエルから抜け出した後だった。
「あ…トラップがバレちゃったみたいです。。
そろそろ追手が来ます。」
「まあ、これだけ距離があればそう簡単には捕まらない。それにしても矢久保の『罠創造《トラップクリエイト》』は凄いな。まさかあんなものまで作れるなんて。」
「知識があればなんでも作れると思います。
ただ、罠として使用しなければ無意味なものになるんですけどね。」
兵士たちが聞いていたのは矢久保が作ったスマホの録音だ。この世界にスマホはないが、『罠創造』は矢久保の知識にあるものならなんでも作れる。ただし、罠として利用できないものは不可能だ。
国王が依頼を3日に一度くらいしか言ってこない事を逆手にした作戦だったが見事に成功した。
黒海は音宮と似たような性格をしているが、決定的に違うところがある。
それは、仲間思いなところだ。
彼は決して一人では逃げきれない。
助けれる人は助ける事がポリシーだった。
そのポリシーが後々、吉とでるか凶とでるかはまだ後に話だ。
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