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リスランダからの脱出
リスランダからの脱出
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「こっちの世界で暮らすって本気なの?」
「さっきからそう言ってるだろ。
俺は向こうに未練がある訳でもない。
帰れないなら帰れないなりにこっちの世界で暮らして行くしかないだろ。」
ギル・オーガイを倒した2人は当初の予定通りオスヴィン目指して旅を続けている。
「…正直に言うと、私知ってたよ。
魔王軍なんていないって…私だけじゃなくて各国の王とか重役はみんな知ってる。
国民や兵士はいる訳もない魔王の存在を信じ込まされてるだけ。」
「なんでそんな事してるんだ?」
「この世界は国同士の戦争が絶える事なく続いてるんだ…しかも王は誰一人として戦争を終わらせるつもりがない。勇者召喚だって戦争を盛り上げる為の手段に過ぎない。
最初は、たまたまだったらしいんだ。
偶然、異世界から勇者と名乗る人が現れて、ある国を勝利に導いた。だけど、彼は自分が勇者であるのをいい事に、強盗に強姦など様々な犯罪を仕出かしていたんだって。
それでも彼は強かった…誰も勝てるものがいなかったから野放しにされていたんだ。
ある日、いつも通り勇者が街中で好き勝手していると、一人の少年が飛び出して来て勇者の喉をナイフで掻き切った。
即死だったらしいよ。
その時に、この国の人たちは勇者を過大評価していた事を思い知り、今まで彼が行って来た悪行に対する怨みは次の勇者へと引き継がれていった。
こうして今の奏達の代まで続いてるって訳。
最初の勇者が魔王を討伐するとか意気込んでたからそういう設定にしてるだけ。
実際は戦争での捨て駒にしか過ぎないわね。
それに、戦争をした方が国は得する事もあるからね。戦いの為と言って税金上げたり食料奪ったり…数えたらキリがないわ。」
「なるほどねえ…じゃあ、結局のところ俺はどの国に行っても歓迎される事はないってことかよ…はあ…」
「そう落ち込まないで。
帰る手段はあるかも知れないし。
私も手伝ってあげるから一緒に探そ。」
「別にいいよ。なんの手掛かりもないものを探す気にもなれないし…それに、この世界から野宿でもなんとかやっていけるだろ。
てか、今更だけどクロエの家はないのか?
可哀想だと思うなら、そこで匿ってくれ。」
「う~ん。家はあるにはあるんだけど…
奏を匿う事は出来ないかなあ…」
「ああ、家族でも居るのか。悪かった。
そういえばお前、出身国って何処だ?」
「…たぶんオスヴィンだと思う。
子供の時の事、あんまり覚えてないんだ。
ゴメンね。」
そう言ったクロエの顔は、少し寂しそうに見えた。
やってしまった…
これは聞いちゃいけないやつだったな。
前々から思っていたが、彼女は何かを隠している気がする。
リスランダ王国の隊長と同等かそれ以上の力を持っている奴が無名な訳はない。
おそらくだが、何か重大な問題を抱えている事だろう。
…彼女も安藤と同じように切り捨てるか?
結論を急ぐにはまだ早い。
彼女から教わる事はまだまだ沢山ある。
それが終わってからでも遅くないだろう。
約1ヶ月間、2人は山や森を歩き、時には集落に立ち寄ったり、音宮の仙術の修行も兼ねて山籠りを行うといった生活を送りながら、地道にオスヴィン目指して旅をしていた。
そしてーー
「この谷がリスランダとオスヴィンの国境になってる。橋を渡ればもうリスランダ王国の兵は簡単には追って来れなくなるわ。
何か思い残す事はある?」
「まったく。一刻も早く向こうに行きたい気分だ。転移でも使うか?」
「こういう時は歩いて渡るものよ。
ほら、行きましょ。」
2人は並んで橋を渡る。
リスランダ王国からの脱出に成功した。
◇◇◇◇◇◇◇
リスランダ王国 騎士団長の部屋
「報告します。国境付近を警備していた兵士からです。音宮奏とクロエ・ノストラードの両名と思われる人物が国境を渡ったとの事です。」
「わかった。報告ありがとう。」
報告を終えた兵士が扉を閉めたのを確認して、セルジールは一息ついた。
音宮とクロエ…か。
ギルがやられてしまったあの日から、彼らに追手を出す余裕はこの国には無くなった。
ギルは未だに目を覚まさない。
そして、ビビアンと安藤桜の元へと送り込んだナタリーとセシリアからの連絡も途絶えている。実質、隊長格3名の不在だ。
今、他国に攻められてはひとたまりもないな…早いと思っていたが、勇者を使うか。
数日後、リスランダ王国で新任の隊長がダリウエル王国の隊長を討伐した事で名を馳せる事になった。
リスランダ王国
王国騎士団第6部隊隊長 天野光輝《あまのこうき》
「さっきからそう言ってるだろ。
俺は向こうに未練がある訳でもない。
帰れないなら帰れないなりにこっちの世界で暮らして行くしかないだろ。」
ギル・オーガイを倒した2人は当初の予定通りオスヴィン目指して旅を続けている。
「…正直に言うと、私知ってたよ。
魔王軍なんていないって…私だけじゃなくて各国の王とか重役はみんな知ってる。
国民や兵士はいる訳もない魔王の存在を信じ込まされてるだけ。」
「なんでそんな事してるんだ?」
「この世界は国同士の戦争が絶える事なく続いてるんだ…しかも王は誰一人として戦争を終わらせるつもりがない。勇者召喚だって戦争を盛り上げる為の手段に過ぎない。
最初は、たまたまだったらしいんだ。
偶然、異世界から勇者と名乗る人が現れて、ある国を勝利に導いた。だけど、彼は自分が勇者であるのをいい事に、強盗に強姦など様々な犯罪を仕出かしていたんだって。
それでも彼は強かった…誰も勝てるものがいなかったから野放しにされていたんだ。
ある日、いつも通り勇者が街中で好き勝手していると、一人の少年が飛び出して来て勇者の喉をナイフで掻き切った。
即死だったらしいよ。
その時に、この国の人たちは勇者を過大評価していた事を思い知り、今まで彼が行って来た悪行に対する怨みは次の勇者へと引き継がれていった。
こうして今の奏達の代まで続いてるって訳。
最初の勇者が魔王を討伐するとか意気込んでたからそういう設定にしてるだけ。
実際は戦争での捨て駒にしか過ぎないわね。
それに、戦争をした方が国は得する事もあるからね。戦いの為と言って税金上げたり食料奪ったり…数えたらキリがないわ。」
「なるほどねえ…じゃあ、結局のところ俺はどの国に行っても歓迎される事はないってことかよ…はあ…」
「そう落ち込まないで。
帰る手段はあるかも知れないし。
私も手伝ってあげるから一緒に探そ。」
「別にいいよ。なんの手掛かりもないものを探す気にもなれないし…それに、この世界から野宿でもなんとかやっていけるだろ。
てか、今更だけどクロエの家はないのか?
可哀想だと思うなら、そこで匿ってくれ。」
「う~ん。家はあるにはあるんだけど…
奏を匿う事は出来ないかなあ…」
「ああ、家族でも居るのか。悪かった。
そういえばお前、出身国って何処だ?」
「…たぶんオスヴィンだと思う。
子供の時の事、あんまり覚えてないんだ。
ゴメンね。」
そう言ったクロエの顔は、少し寂しそうに見えた。
やってしまった…
これは聞いちゃいけないやつだったな。
前々から思っていたが、彼女は何かを隠している気がする。
リスランダ王国の隊長と同等かそれ以上の力を持っている奴が無名な訳はない。
おそらくだが、何か重大な問題を抱えている事だろう。
…彼女も安藤と同じように切り捨てるか?
結論を急ぐにはまだ早い。
彼女から教わる事はまだまだ沢山ある。
それが終わってからでも遅くないだろう。
約1ヶ月間、2人は山や森を歩き、時には集落に立ち寄ったり、音宮の仙術の修行も兼ねて山籠りを行うといった生活を送りながら、地道にオスヴィン目指して旅をしていた。
そしてーー
「この谷がリスランダとオスヴィンの国境になってる。橋を渡ればもうリスランダ王国の兵は簡単には追って来れなくなるわ。
何か思い残す事はある?」
「まったく。一刻も早く向こうに行きたい気分だ。転移でも使うか?」
「こういう時は歩いて渡るものよ。
ほら、行きましょ。」
2人は並んで橋を渡る。
リスランダ王国からの脱出に成功した。
◇◇◇◇◇◇◇
リスランダ王国 騎士団長の部屋
「報告します。国境付近を警備していた兵士からです。音宮奏とクロエ・ノストラードの両名と思われる人物が国境を渡ったとの事です。」
「わかった。報告ありがとう。」
報告を終えた兵士が扉を閉めたのを確認して、セルジールは一息ついた。
音宮とクロエ…か。
ギルがやられてしまったあの日から、彼らに追手を出す余裕はこの国には無くなった。
ギルは未だに目を覚まさない。
そして、ビビアンと安藤桜の元へと送り込んだナタリーとセシリアからの連絡も途絶えている。実質、隊長格3名の不在だ。
今、他国に攻められてはひとたまりもないな…早いと思っていたが、勇者を使うか。
数日後、リスランダ王国で新任の隊長がダリウエル王国の隊長を討伐した事で名を馳せる事になった。
リスランダ王国
王国騎士団第6部隊隊長 天野光輝《あまのこうき》
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