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リスランダからの脱出

復活と復讐

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音宮とクロエが立ち去った後、ファングの死体は放置されていた。
このまま、誰にも見つかることなく腐敗していくはずだった。
しかし、首を引き裂かれたはずの死体は勝手に修復をはじめ、首の傷が塞がっていく。止まっていた筈の心臓も鼓動をはじめ、先ほどまで死んでいた筈のファングが動き出した。

ーー!!危ないところだった。
いざって時の為に奪っておいて良かったぜ。
能力の真偽は不明だし、確かめようもなかったから賭けだったが、上手くいったようで何よりだ。
まさか、一度死んでから復活するなんてな。

ファングは音宮との戦いで意識を失う直前、『復活《リ・ボーン》』のスキルを発動していた。このスキルは襲撃した村にいた勇敢な若者から奪ったスキルでどのような効果があるのかは不明だったが、名前の意味から考えると復活できるものなのだろうが、それを試すことも出来ず、いままで一度として使う事はなかった。
しかし、音宮との戦いで命を落とすと想定し一か八かこの能力に賭けてみることにしたのだ。
結果は見事成功し、今に至る。

このスキル…もう二度と使えねえな。
感覚でわかる。これはもう効力を失ったものだ。
死から一度だけ復活を遂げることが出来る能力。
それになんだか、体が軽い気がする。
復活の際に、肉体の強化でもされたのか?
身体能力強化を常に行っているみたいな感覚だ。
死んでみるのも悪くねえな。さて…これからどうするか。
仲間は全員あの野郎に殺されちまったし。今から一人ずつまた集めるってのもなあ…
まあ、当分は気の向くままに生きてみるか。今までだってそうやって生きて来た。
だが、折角の二度目の人生だ。目標くらい持たねえとなあ。
とりあえず、俺を殺したあの男とクロエ・ノストラード。
この2人はなんとしてでも殺してやる。
俺の人生はそこからだ。

ファングは2人への復讐を誓い、旅立つ。

◇◇◇◇◇◇

「ねえ~これからどこ行くの~
お腹空いたから休もうよ~、ねえ~聞いてる。」

こいつ…うるせえ

クロエと行動を共にし始めてからまだ1時間と経っていないが、音宮のストレスは最高潮に達していた。
それもそのはず、音宮は元来、静かな雰囲気を好んでいる。
その為、誰かと行動を共にすることを嫌っていた。
安藤と行動を共にすることが出来ていたのは、安藤桜が大人しい人間だったからに他ならない。
安藤とは真逆の、楽しい事が好きで常に人と話していたいクロエ。
しかも、その会話の内容には全く意味がなく生産性を感じられない。
先程の質問も、もう10回は聞いている気がする。

「さっきも答えただろう。目的地はオスヴィン。
腹が減ったなら干し肉でも食ってろ、休んでる暇はない。以上。
お前は少し大人しくしていろ。」

「え~やだ~そんなのつまんないじゃん。
それに、干し肉なんて飽きた。もっと美味しいものが食べたい。
ていうか、オスヴィンに行くなんて、なにが目的なの?
ーーハッ!まさか、奴隷を買うため。奏がそんなに溜まってたなんて
いいのよ…私で発散しても。楽しませてあげるわ。」

「お前は…ほんとに黙ってろ」

後ろであーだこーだ言っているクロエの声を無視して音宮は歩き続けた。

暫く、歩き続け辺りはもう夜になっていた。
洞窟を見つけた音宮が中へと入り、荷物を置き始める。

「ここで休むの?先を急いでそうだったからてっきり、今日中にはどこかの村まで行きたいんだと思ってたんだけど」

やはり、この女ふざけている振りをしているが頭は良いな。
常にこの調子だったらいいのに…

「そのつもりだったが、思ってた以上に消耗が激しい。
下手に先を急いでも体力が残ってない状態で戦うのは得策じゃないからな。
丁度いい洞窟も見つけたことだし、ここで休むことにするよ。」

「そうなんだ。じゃあ、私はなにか食料探して来るわね。
貴方は少し休んでていいわよ。」

意外だった。
安藤と行動をしている時は音宮が獲物を狩るのが普通だったし、クロエも戦えはするが、自ら進んで行ってくれるとは…少し休むか。
音宮は疲れからか、この世界に来て初めて熟睡した。

目を覚ますと何やらいい匂いがする。
起き上がり、においの元へと行くとそこには魚を焼いているクロエの姿があった。

「ちょっと待っててね。もうすぐ出来上がるから。
その辺に座ってていいよ。簡単だけどスープも作ってるから食べてね。」

「なにからなにまで悪いな。俺はどのくらい寝てた。
そんなにだと思うけど、まあ大体2時間くらいかな。
ご飯作るにはちょうどいい時間だったし、気にしないで…ってなあに?そんなに私の事見つめちゃって。まさか!私に惚れちゃったとか?」

「ああ…まあな。お前みたいな女と結婚した男は楽しいのかも知れないなと思っただけだ。ふざけてはいるが、それも場の空気を和ませるためだろうし、相手を立てることも出来る。いい女だよお前は…」

まあ、少し見直しただけで俺のタイプではないが。
あれ?クロエの顔が少し赤いような…
先程から顔を合わせようとしないし、こいつまさか…

「お前…もしかして照れてるのか?」

「なっ!違うし…ちょっと、熱いだけで…」

「ああ…なるほどな。
ふざけて言う事は出来るが、実際に褒められたりすると弱いタイプか。
安心しろ。別にお前は俺のタイプじゃないから。
それにしても、いい事知れたな。これに懲りたら少しは大人しくなれよ。」

「はあ!なんでそんなこと平気で言えるかな。
ほんっとにあり得ない!っていうか、別に照れてないし。
こんな女の子に優しく出来ない人のいう事なんて絶対に聞いてやんない!」

クロエがいつもの数倍のうるささでギャーギャーと騒いでいる。
結局、2人が仲直りすることはなくそのまま夜は過ぎていった。
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