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黒牙の盗賊団
予知
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ファングがまたしても物陰に身を隠す。
なにも攻撃しないのはまずい。
やつは今、こちらのスキルを探っている段階だ。
転移系ということには気づいているだろうが、能力の条件が視認することだと言うことは、勘付かれてはいるがまだ、確証は持たれていないだろう。
身を隠すのがその証拠だ。
視認する事が条件になるスキルの場合の対処法は簡単で、見えない場所から攻撃することや見えたところで対応できない程の速度で攻撃する事などが思いつく。
奴は今、その実験をしているのだろう。
身を隠すことで俺がどう行動するかを監視している。
まったく、頭を使った戦い方をしてきやがる。
これならまだ騎士団とやり合っていた方がマシだったな。
「おいおい、どうしたよ。
なんにもしなきゃ、お前に攻撃手段はねえって言ってるようなもんだぞ。
それとも本当に出来ねえのか。」
仕方ない、挑発に乗る訳ではないがここ数日で新しい発見もあったことだ。
実験台にするか。
ーーーーーーーーーー
なにもしてこねえな。
奴は本当にこの状況ではなにも出来ないのか?
いや、ただの勘だが奴はなにかを隠し持っているに違いない。
少しの間だが見ていれば分かる。
奴は賢く計算高い人間だ。
こうして俺が戸惑うことすらも予測しているだろう。
この手の人間と戦う時に俺自身が決めている鉄則がある。
それは、直感を信じ迷わない事だ。
自分より賢い奴と戦っていると、すべて奴の計算ではないのかと自分の行動さえも疑ってしまう事がある。そうなってしまえば戦いはその時点で相手の物だ。
なにをしても敵が有利に立ち、そのままあっけなく倒されてしまう。
そうならないためにも、俺は自分の勘を信じることにしている。
奴は絶対になにか仕掛けてくる。集中しろ…。
音宮の事を見ていたが、いきなり目の前に音宮が現れた。
「かくれんぼはおしまいだな」
しまった。
まさか2つの物の位置を入れ替えれるとは。
気付いた時には既に遅く、音宮のナイフがファングの心臓を貫く
ーーはずだった。
「これは…一体」
「あーあ、バレちまっちゃあ仕方ねえ。
これが俺のスキル《《『粉砕《クラッシュ》』》》だ。効果は単純に触れたものを崩す能力。ただし生物に使用する時は10秒以上触れなければいけない。
戦闘中に10秒触れるっていうのはなかなか面倒ではあるが、いい能力だろ。気に入ってるんだ。」
ナイフがファングの肌に触れた瞬間、選択から徐々に崩れていく。
「好きだらけだぜ」
ファングのカウンターが音宮に炸裂し、音宮の体はテントのへと弾き飛ばされた。
「向こうは確か…」
ーーーーーーーー
あの野郎、なんて馬鹿力してやがる。
これはちょっとまずいかも知れないな。
こっちからの遠距離攻撃はあの『粉砕』で全て無効になってしまう。だからと言って体術での直接戦闘に繋げても今の俺と奴ではあまりにも力量が違い過ぎる。
やっぱり逃げるしかねえな。
「ねえ、そこのお兄さん」
ーー人の声?何処からだ。
「こっちこっち、こっちだよ~」
声のする方へ歩いて行くと檻の前へ辿り着いた。
声の主はこの中か。
「あ~来てくれた!
お兄さん、お願いなんだけどちょっとこの手錠と首輪の鍵探してくれないかな?少しヘマしちゃって…盗賊の人に捕まって困ってるんだよね。」
美しい黒髪に見るものを引き寄せる圧倒的なプロポーション。更に和服という日本人を思わせる服装をしている彼女だが、その中でも一際目立っているものがあった。
頭だ。正確には彼女の頭には人間にはない筈の耳が生えていた。耳と言っても大きい猫耳だ。これが噂に聞く亜人というやつか。
「あれ、あれれ?お~い、お兄さん?
どうしたの?そんなに私を見つめて。
さては、私の美貌に惚れたなあ。仕方ない。
助けてくれたらお礼にいい事してア・ゲ・ル♡」
放っておこう。
こいつは人をイラつかせる天才だ。
話すだけで俺に害を与えてくる。
全てを無視しろ。なかった事にするんだ。
ーーよしっ!逃げるか。
「そこ、危ないよ。3歩後ろに下がって。」
不意に告げられた言葉に何故か体は従ってしまった。
なんの根拠もないはずなのに彼女の目には俺には見えない何かが映っている様に思えたからだ。
そして次の瞬間、先程まで俺がいた場所にファングが突撃して来た。
「ちっ!気づかれたか。」
「左に5歩進んだ所で攻撃して。」
女性の言葉に従い蹴りを放つと、ファングはその位置へ吸い込まれる様に現れた。
「お前は…一体?」
「言ったでしょ。いい事してあげるって。
ここまではサービス…どう?私の事助ける気になったかな?」
なにも攻撃しないのはまずい。
やつは今、こちらのスキルを探っている段階だ。
転移系ということには気づいているだろうが、能力の条件が視認することだと言うことは、勘付かれてはいるがまだ、確証は持たれていないだろう。
身を隠すのがその証拠だ。
視認する事が条件になるスキルの場合の対処法は簡単で、見えない場所から攻撃することや見えたところで対応できない程の速度で攻撃する事などが思いつく。
奴は今、その実験をしているのだろう。
身を隠すことで俺がどう行動するかを監視している。
まったく、頭を使った戦い方をしてきやがる。
これならまだ騎士団とやり合っていた方がマシだったな。
「おいおい、どうしたよ。
なんにもしなきゃ、お前に攻撃手段はねえって言ってるようなもんだぞ。
それとも本当に出来ねえのか。」
仕方ない、挑発に乗る訳ではないがここ数日で新しい発見もあったことだ。
実験台にするか。
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なにもしてこねえな。
奴は本当にこの状況ではなにも出来ないのか?
いや、ただの勘だが奴はなにかを隠し持っているに違いない。
少しの間だが見ていれば分かる。
奴は賢く計算高い人間だ。
こうして俺が戸惑うことすらも予測しているだろう。
この手の人間と戦う時に俺自身が決めている鉄則がある。
それは、直感を信じ迷わない事だ。
自分より賢い奴と戦っていると、すべて奴の計算ではないのかと自分の行動さえも疑ってしまう事がある。そうなってしまえば戦いはその時点で相手の物だ。
なにをしても敵が有利に立ち、そのままあっけなく倒されてしまう。
そうならないためにも、俺は自分の勘を信じることにしている。
奴は絶対になにか仕掛けてくる。集中しろ…。
音宮の事を見ていたが、いきなり目の前に音宮が現れた。
「かくれんぼはおしまいだな」
しまった。
まさか2つの物の位置を入れ替えれるとは。
気付いた時には既に遅く、音宮のナイフがファングの心臓を貫く
ーーはずだった。
「これは…一体」
「あーあ、バレちまっちゃあ仕方ねえ。
これが俺のスキル《《『粉砕《クラッシュ》』》》だ。効果は単純に触れたものを崩す能力。ただし生物に使用する時は10秒以上触れなければいけない。
戦闘中に10秒触れるっていうのはなかなか面倒ではあるが、いい能力だろ。気に入ってるんだ。」
ナイフがファングの肌に触れた瞬間、選択から徐々に崩れていく。
「好きだらけだぜ」
ファングのカウンターが音宮に炸裂し、音宮の体はテントのへと弾き飛ばされた。
「向こうは確か…」
ーーーーーーーー
あの野郎、なんて馬鹿力してやがる。
これはちょっとまずいかも知れないな。
こっちからの遠距離攻撃はあの『粉砕』で全て無効になってしまう。だからと言って体術での直接戦闘に繋げても今の俺と奴ではあまりにも力量が違い過ぎる。
やっぱり逃げるしかねえな。
「ねえ、そこのお兄さん」
ーー人の声?何処からだ。
「こっちこっち、こっちだよ~」
声のする方へ歩いて行くと檻の前へ辿り着いた。
声の主はこの中か。
「あ~来てくれた!
お兄さん、お願いなんだけどちょっとこの手錠と首輪の鍵探してくれないかな?少しヘマしちゃって…盗賊の人に捕まって困ってるんだよね。」
美しい黒髪に見るものを引き寄せる圧倒的なプロポーション。更に和服という日本人を思わせる服装をしている彼女だが、その中でも一際目立っているものがあった。
頭だ。正確には彼女の頭には人間にはない筈の耳が生えていた。耳と言っても大きい猫耳だ。これが噂に聞く亜人というやつか。
「あれ、あれれ?お~い、お兄さん?
どうしたの?そんなに私を見つめて。
さては、私の美貌に惚れたなあ。仕方ない。
助けてくれたらお礼にいい事してア・ゲ・ル♡」
放っておこう。
こいつは人をイラつかせる天才だ。
話すだけで俺に害を与えてくる。
全てを無視しろ。なかった事にするんだ。
ーーよしっ!逃げるか。
「そこ、危ないよ。3歩後ろに下がって。」
不意に告げられた言葉に何故か体は従ってしまった。
なんの根拠もないはずなのに彼女の目には俺には見えない何かが映っている様に思えたからだ。
そして次の瞬間、先程まで俺がいた場所にファングが突撃して来た。
「ちっ!気づかれたか。」
「左に5歩進んだ所で攻撃して。」
女性の言葉に従い蹴りを放つと、ファングはその位置へ吸い込まれる様に現れた。
「お前は…一体?」
「言ったでしょ。いい事してあげるって。
ここまではサービス…どう?私の事助ける気になったかな?」
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