異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

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ドニー村

目に映るもの

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「さあ…もう私に敵わない事くらい理解出来ただろう。大人しく捕まってくれ。」

セルジールは片手で安藤を抑え込んでいる。
もう片方の手には剣を握っていて、警戒は解いていない。万事休すか…仕方ない。

「どうやら勝ち目はないみたいだな。
降参だ。好きにしてくれ。」

「やけに素直に投降するものだな。
まだダメだ。貴様からは近づくな。
今から私が捕縛用の縄を投げる。貴様は自身で両手を縛ってからこっちにこい。」

セルジールから縄を受け取る。

「両手は無理があるだろ。
片手はお前がやってくれよ。」

「…まあ、いいだろう。
だが、その前に貴様のステータスを探査《み》させて貰うぞ。」

セルジールはスキル『力量探査《サーチ》』を発動する。このスキルはその名の通り相手のステータスとスキル名を知る事が出来るスキルだ。ただし、スキルの詳細は知る事が出来ず、使用者よりも魔力が大きい相手には効果がないスキルだ。

「成程な…『空間転移』以外に隠してるスキルも無さそうだな。この能力も先ほどの戦いとフェルトの報告で対策済みだ。問題ない。」

「へえ、スキルを見るスキルなんてのもあるのか?便利だな。ところであんたのスキルも俺と同じで瞬間移動か何かかい?」

「あれはただの『光魔法』の一種だ。
己の肉体を光化させ移動する魔法『光速《ソニック》』。光魔法使いは希少で電撃や光といった高速戦闘を得意とする。貴様の空間転移とは相性が悪かったな。」

「道理ですぐに追いつかれるわけだ。
それよりも、俺ばかり注意してていいのか?
彼女、逃げ出してるよ。」

「安藤桜であれば別に構わんよ。
彼女は全ステータスがほぼ最低値だ。
私の脅威にはなり得ない。
貴様を捕まえた後に追えばそれで済む事。」

「そっか…良かったよ。
お前の敵の居場所がわかるスキル、どうやら今は使ってないみたいだな。」

何か仕掛けてくる!
そう判断したセルジールは慌てて『空間認識』のスキルを発動した。音宮からは目を離せない。なにを仕出かすかわかったものじゃないからだ。だとすると不安要素は安藤桜の存在のみ。彼女が自ら進んで行動する事は考えにくいが、音宮が事前に指示出ししていたとなれば話は別だ。
全く油断のならない男だな。

しかし、セルジールの予想とは裏腹に安藤の居場所は何一つ変わらず、一歩たちとも動いていなかった。

安藤ではないだと⁉︎

音宮を睨むが、なにかを確信仕切った顔でただこちらを眺めている。

「一体なにをした!」

「教えると思うか?
わからない事は自分で考えないと一体何の為に人間に生まれてきたんだよ。頭を使え、頭を。」

ダメだ。奴に聞いても腹が立つだけで逆に思考回路が鈍くなる。こうなったら出来る限り、範囲を広げて人の気配を察知するしかない。

セルジールは『空間認識』の範囲を広げていく。その範囲は半径約20mまで広がっていた。

魔力はチラホラ感知できるがこれはモンスターか?どちらにせよ。すぐにこれる距離には誰もいないみたいだな。

そう思った瞬間だった。
背中に僅かだが違和感があると感じた次の瞬間、セルジールは崖下へと転落していく。

馬鹿な…安藤の動きは確認していた。
彼女はその場を一歩も動いていない筈だ。

「ちゃんと目で見なきゃわからない事だってあるんだぞ。じゃあな。」

大岩が真上に転移し、降り注いできた。
このままでは潰されてしまう…だが!

「ナメるなよ!王国騎士団長の私がこの程度で倒れる筈がなかろう!」

最初に放った飛ぶ斬撃『光剣《フォトンソード》』が大岩を蹴散らす。

着地後、直ぐに奴を『光速』で追えば間に合う。逃さんぞ!

「ナメてなんかないさ。
あんたの言う通り、俺には対応するだけの力がないんでね。力はあんたに貸して貰う事にしたんだ。この斬撃は返してやるよ。」

ーーー油断していた。
魔法すらも転移させる事が出来るのだった。
大岩は私に『光剣』を使わせる為の罠か。

自分が放った斬撃が目の前まで迫ってきている。その光はセルジールの体を覆い、大地に大きな亀裂を生み出した。

「安藤さん今のうちに。」

「う…うん。」

2人は一目散に逃げ去っていった。


◇◇◇◇◇◇◇

亀裂の中からセルジールが這い上がり、直ぐさま空間認識を発動する。

近くにはいない…か。
逃げ切られてしまうとは…恥だな。
訓練は足りなかったようだ。
それにしても、自分の攻撃をくらう羽目になるとは…改めて『騎士長の栄光』があって良かったと心から思ったよ。

セルジールの体には傷一つ付いていなかった。『騎士長の栄光』は騎士団長に代々伝わるスキルだ。その能力は単純に防御力の増加に他ならない。ただし、相手の攻撃に合わせて自動的に発動するスキルの為、かなり使い勝手のいい物なのだ。

「シャルル…帰ろうか。」

セルジールは追跡を諦め、愛馬であるシャルルの背に乗り王国へと帰還した。
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