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雪菜と湊はいつも通り、一緒に帰っていたがその日は少し違った。
なんと湊からご飯に誘われたのである。
湊からしてみればお腹が空いたから誘っただけかもしれないが、雪菜にとっては一大事だった。
(こんな事なら、もうちょっとちゃんとした服着ておくんだった。髪もボサボサだし、メイクもやり直したいなぁ)
湊の案内で入ったところは学生の雪菜からしたら少し高めのお店で、それもまた雪菜を緊張させていた。
案内された席についても雪菜は緊張していて、湊から「何食べたい?」と聞かれても選ぶ事が出来ずに結局湊は適当なコース料理を頼んでいた。
しばらく会話がない状況であったが湊がついに声をかけた。
「齋藤さんどうしたの?ご飯行くの嫌だった?」
湊にそう言われ雪菜は直ぐに否定した。
「違います!めちゃくちゃ嬉しかったです!ただ…その…あんまりこんな感じのお店来ないから緊張しちゃって…。それにせっかくだから化粧とか服もちゃんとオシャレしたかったなって思ってて、それでちょっと気持ちが落ち着かなくって」
雪菜は恥ずかしがりながら、伝えた。
すると湊はクスッと笑い出した。
それを見た雪菜はムッとした顔で
「ねぇ!なんで笑ってるんですか?私恥ずかしかったんですよ!」
と言いながら湊の横に行った。
恥ずかしい思いをしながら伝えたのに笑われてバカにされた気がしたのだ。
「ごめんごめん。バカにしてる訳じゃなくて…なんか可愛いなって思って。」
湊にそう言われ、一瞬雪菜は喜んだが
「揶揄ってるんですか?私騙されませんよ。」
「本当に思ってるよ。初々しい感じがいいなって、少し照れてる顔も可愛いよ。」
「絶対揶揄ってるか、バカにしてます。私が知ってる店長はそんな事言わないです。」
雪菜は嬉しかったが、やっぱり遊ばれてると思っていた。理由は単純だ。
湊は基本的に、人からどう見られているかを気にするのでアルバイトである雪菜にセクハラと思われる言葉をかけたり、行動を起こす事はない。これはどんなに仲が良くても変わらないと雪菜は思っている。
呼び方は常に苗字+さん付けで、料理を教えたりする時も必ず2歩分くらいの距離を空けて口頭で伝える。分かりにくいところは実際に湊がやってみせてその後もう一度やらせる。ボディタッチも絶対にしない、他のバイトの子が湊にハイタッチを求めていたが「このご時世何がセクハラになるかわかんないから嫌だ」と言い適当に断っていた。
そんな湊が「可愛い」だなんて言ってくれる訳がない。と湊に伝えた。
雪菜は自分で言いながらも少し悲しくなってきた。
「齋藤さん。ここお店の中じゃないよ。それにセクハラとか考えてるなら2人だけでご飯食べに行こうなんて言わないけどな。まあ、照れてる顔見たかったからちょっと揶揄ったのは事実だけどね」
湊にそう言われ、雪菜は嬉しくて飛び上がりそうだったがその気持ちを抑え込んだ。
「やっぱり…揶揄ってるじゃないですか?罰として頭撫でて下さい。」
雪菜は思いきって言った。
顔から火が出るかと思う程恥ずかしかった。目も閉じて頭を少し下げていると、頭に手が乗せられて優しく撫でられた。
(あぁ、やっぱり店長の事好きだなぁ)
そう思っていると急に頭が両手で掴まれ、髪の毛をわしゃわしゃされた。
「はい、これで終わり。」
「もー!髪の毛崩れたじゃないですか!意地悪した!」
雪菜が髪を崩されちょっと怒っているのに湊は笑っていた。
「うん。やっといつも通りの齋藤さんになった。緊張解けたみたいだね。」
雪菜ははハッとなった。いつの間にか普段通り話せるようになっていたからだ。
(やっぱり店長って狡い…これじゃ怒れないじゃん)
その後は出て来た料理を食べながら普段通りの調子で会話をした。
会計も湊がとっくに終わらせていて、雪菜は奢って貰った。
雪菜は今日一日嬉しかったし、楽しかった。しかし湊に良いようにやられた気がする。自分だけが恥ずかしい思いをした感じがして嫌で、どうにか湊にも恥ずかしい思いをさせれないかと考えていた。
そして、ひとつだけ思いついた。
自分も恥ずかしいが今なら出来る気がする。勇気を持って言おう!そう決心した雪菜は言った。
「湊さん!ご馳走様でした!美味しかったし楽しかったです。」
思い切って名前で呼んだ。
しかし湊はそれに気付いたが反応は淡白なものだった。
「どうも、喜んでくれて良かった。それと名前で呼んでるよ。店長でいいから。」
ちょっと距離を置く発言だった。
しかし雪菜はここで引いたら駄目だと思った。
「湊さんが言ったんですよ。ここは店の中じゃないって。だから店の外では湊さんって呼びますね。ダメですか?」
「まあ…いいけど…」
そういい湊は雪菜とは反対側を向いた。
雪菜は湊が顔を逸らしたため、一気に反撃に出た。
「あぁ、湊さん照れてますね。湊さーん。こっち向いて下さい。」
雪菜がそんな調子で暫くはしゃいでいると湊が真剣な顔で雪菜の方を向いて
「齋藤さんが可愛くてさ。ちょっと照れちゃった。さっきは言わなかったけど、そのボフヘア似合ってるよ。ふんわりした感じが俺は好きだなぁ。」
急に湊にそう言われ、雪菜は分かりやすく照れた。好きな人の可愛いと言われて嬉しくないはずがないのだ。
だが、湊がクスクス笑っている姿が見えた。
「あー!また私の事揶揄いましたね!ダメなんですよ。女の子虐めたら。よくそんな思ってもない事ペラペラ言えますね!」
「俺の事揶揄おうとするから、また恥ずかしい目に遭わされるんだよ。でもまあ、思ってもない事は言ってないからね。さっき褒めたとこは本当に思ってるよ。普段は口に出さないだけで。」
雪菜はもう何が何だかわからなかった。
でも今まで湊と過ごして来た経験でわかる事は先程のセリフに嘘はないと言う事だ。
つまり、湊は本当に自分の事を可愛いと思ってくれている。
雪菜はもうこの気持ちを我慢する事が出来なかった。
暫く歩いていると、人通りの少ない公園に着いた。疲れたと言い湊と公園のベンチに座った。
この思いを伝えることにした。
「湊さん。今日は本当にありがとうございます。ご飯本当に美味しかったし、湊さんとのおしゃべりも楽しかったです。
知ってるかもしれないですけど、私湊さんがいる日しかバイトのシフト出してないんですよ。
それくらい湊さんの事好きなんです。
店長としてではなくて男性として…
私と付き合ってくれませんか?」
雪菜は遂に伝えた。
そして少し時間を空けて湊が返事をした。
「ありがとう。俺も齋藤さんのと一緒にいると楽しいし、他のバイトの子よりも可愛がってるよ。ご飯一緒に行くのだって齋藤だから誘ったんだ。
だけどゴメンね。俺から見たら齋藤さんって妹とか後輩みたいな感じに思えちゃって…そういう可愛いなんだ。だから齋藤さんとは付き合えない。
別に彼女がいる訳でもないし、ここで良いよって言うには簡単だけどそれじゃ告白してくれた齋藤さんに悪いから…ゴメン。」
湊の答えはNOだった。
雪菜はなんとなくフラれる事がわかっていた。
だから悲しくないと言えば嘘になるがこの場で泣くのは我慢する事ができた。
「そうなんですね。残念です…。」
その後は暫く無言で帰った。
そしてとうとう雪菜の家に着いたが会話が一度もなかった。
「明日のバイトさ。無理して出なくても良いよ。気まずいだろうし、今後のシフトも俺と被らないように考慮するね。
本当にゴメンね。」
湊の言葉に雪菜は泣いてしまった。
そして思いの丈をぶつけた。
「嫌です!なんでそんな事言うんですか!私まだ湊さんの事好きなのに…一緒にいたいです。バイトも今までみたいに楽しくしたいし、おしゃべりしながら一緒に家まで帰る時間も凄く好きです。
今日で終わりなんて嫌です!」
「俺だって齋藤さんの事好きだけど、齋藤さんが思ってる好きとは違うんだよ…。それで良いの?」
「私の事絶対に好きにならないんですか?女の子として見てくれませんか?」
「女の子としては見てるんだけど。なんか護らなきゃいけないって感じに思えちゃって…」
「今はそれで良いです。彼女いないんですよね。だったら私、立候補してるんで覚えておいて下さい。ちゃんと私の事意識して下さい。言っときますけど、私より湊さんの事好きな人いないですからね!じゃあ、そういう事なんでおやすみなさい!また明日!」
そう言いながら雪菜は家の中に入って行った。
これが雪菜が湊に告白をした日の物語。
ちなみに家に帰った後雪菜は急激に恥ずかしくなりベットで悶えていた。
一方、湊は少しぽかーんとしていたが、自分も家に帰ることにした。
歩きながらも先ほどの出来事を思い出した湊の顔は少し微笑んでいた。
なんと湊からご飯に誘われたのである。
湊からしてみればお腹が空いたから誘っただけかもしれないが、雪菜にとっては一大事だった。
(こんな事なら、もうちょっとちゃんとした服着ておくんだった。髪もボサボサだし、メイクもやり直したいなぁ)
湊の案内で入ったところは学生の雪菜からしたら少し高めのお店で、それもまた雪菜を緊張させていた。
案内された席についても雪菜は緊張していて、湊から「何食べたい?」と聞かれても選ぶ事が出来ずに結局湊は適当なコース料理を頼んでいた。
しばらく会話がない状況であったが湊がついに声をかけた。
「齋藤さんどうしたの?ご飯行くの嫌だった?」
湊にそう言われ雪菜は直ぐに否定した。
「違います!めちゃくちゃ嬉しかったです!ただ…その…あんまりこんな感じのお店来ないから緊張しちゃって…。それにせっかくだから化粧とか服もちゃんとオシャレしたかったなって思ってて、それでちょっと気持ちが落ち着かなくって」
雪菜は恥ずかしがりながら、伝えた。
すると湊はクスッと笑い出した。
それを見た雪菜はムッとした顔で
「ねぇ!なんで笑ってるんですか?私恥ずかしかったんですよ!」
と言いながら湊の横に行った。
恥ずかしい思いをしながら伝えたのに笑われてバカにされた気がしたのだ。
「ごめんごめん。バカにしてる訳じゃなくて…なんか可愛いなって思って。」
湊にそう言われ、一瞬雪菜は喜んだが
「揶揄ってるんですか?私騙されませんよ。」
「本当に思ってるよ。初々しい感じがいいなって、少し照れてる顔も可愛いよ。」
「絶対揶揄ってるか、バカにしてます。私が知ってる店長はそんな事言わないです。」
雪菜は嬉しかったが、やっぱり遊ばれてると思っていた。理由は単純だ。
湊は基本的に、人からどう見られているかを気にするのでアルバイトである雪菜にセクハラと思われる言葉をかけたり、行動を起こす事はない。これはどんなに仲が良くても変わらないと雪菜は思っている。
呼び方は常に苗字+さん付けで、料理を教えたりする時も必ず2歩分くらいの距離を空けて口頭で伝える。分かりにくいところは実際に湊がやってみせてその後もう一度やらせる。ボディタッチも絶対にしない、他のバイトの子が湊にハイタッチを求めていたが「このご時世何がセクハラになるかわかんないから嫌だ」と言い適当に断っていた。
そんな湊が「可愛い」だなんて言ってくれる訳がない。と湊に伝えた。
雪菜は自分で言いながらも少し悲しくなってきた。
「齋藤さん。ここお店の中じゃないよ。それにセクハラとか考えてるなら2人だけでご飯食べに行こうなんて言わないけどな。まあ、照れてる顔見たかったからちょっと揶揄ったのは事実だけどね」
湊にそう言われ、雪菜は嬉しくて飛び上がりそうだったがその気持ちを抑え込んだ。
「やっぱり…揶揄ってるじゃないですか?罰として頭撫でて下さい。」
雪菜は思いきって言った。
顔から火が出るかと思う程恥ずかしかった。目も閉じて頭を少し下げていると、頭に手が乗せられて優しく撫でられた。
(あぁ、やっぱり店長の事好きだなぁ)
そう思っていると急に頭が両手で掴まれ、髪の毛をわしゃわしゃされた。
「はい、これで終わり。」
「もー!髪の毛崩れたじゃないですか!意地悪した!」
雪菜が髪を崩されちょっと怒っているのに湊は笑っていた。
「うん。やっといつも通りの齋藤さんになった。緊張解けたみたいだね。」
雪菜ははハッとなった。いつの間にか普段通り話せるようになっていたからだ。
(やっぱり店長って狡い…これじゃ怒れないじゃん)
その後は出て来た料理を食べながら普段通りの調子で会話をした。
会計も湊がとっくに終わらせていて、雪菜は奢って貰った。
雪菜は今日一日嬉しかったし、楽しかった。しかし湊に良いようにやられた気がする。自分だけが恥ずかしい思いをした感じがして嫌で、どうにか湊にも恥ずかしい思いをさせれないかと考えていた。
そして、ひとつだけ思いついた。
自分も恥ずかしいが今なら出来る気がする。勇気を持って言おう!そう決心した雪菜は言った。
「湊さん!ご馳走様でした!美味しかったし楽しかったです。」
思い切って名前で呼んだ。
しかし湊はそれに気付いたが反応は淡白なものだった。
「どうも、喜んでくれて良かった。それと名前で呼んでるよ。店長でいいから。」
ちょっと距離を置く発言だった。
しかし雪菜はここで引いたら駄目だと思った。
「湊さんが言ったんですよ。ここは店の中じゃないって。だから店の外では湊さんって呼びますね。ダメですか?」
「まあ…いいけど…」
そういい湊は雪菜とは反対側を向いた。
雪菜は湊が顔を逸らしたため、一気に反撃に出た。
「あぁ、湊さん照れてますね。湊さーん。こっち向いて下さい。」
雪菜がそんな調子で暫くはしゃいでいると湊が真剣な顔で雪菜の方を向いて
「齋藤さんが可愛くてさ。ちょっと照れちゃった。さっきは言わなかったけど、そのボフヘア似合ってるよ。ふんわりした感じが俺は好きだなぁ。」
急に湊にそう言われ、雪菜は分かりやすく照れた。好きな人の可愛いと言われて嬉しくないはずがないのだ。
だが、湊がクスクス笑っている姿が見えた。
「あー!また私の事揶揄いましたね!ダメなんですよ。女の子虐めたら。よくそんな思ってもない事ペラペラ言えますね!」
「俺の事揶揄おうとするから、また恥ずかしい目に遭わされるんだよ。でもまあ、思ってもない事は言ってないからね。さっき褒めたとこは本当に思ってるよ。普段は口に出さないだけで。」
雪菜はもう何が何だかわからなかった。
でも今まで湊と過ごして来た経験でわかる事は先程のセリフに嘘はないと言う事だ。
つまり、湊は本当に自分の事を可愛いと思ってくれている。
雪菜はもうこの気持ちを我慢する事が出来なかった。
暫く歩いていると、人通りの少ない公園に着いた。疲れたと言い湊と公園のベンチに座った。
この思いを伝えることにした。
「湊さん。今日は本当にありがとうございます。ご飯本当に美味しかったし、湊さんとのおしゃべりも楽しかったです。
知ってるかもしれないですけど、私湊さんがいる日しかバイトのシフト出してないんですよ。
それくらい湊さんの事好きなんです。
店長としてではなくて男性として…
私と付き合ってくれませんか?」
雪菜は遂に伝えた。
そして少し時間を空けて湊が返事をした。
「ありがとう。俺も齋藤さんのと一緒にいると楽しいし、他のバイトの子よりも可愛がってるよ。ご飯一緒に行くのだって齋藤だから誘ったんだ。
だけどゴメンね。俺から見たら齋藤さんって妹とか後輩みたいな感じに思えちゃって…そういう可愛いなんだ。だから齋藤さんとは付き合えない。
別に彼女がいる訳でもないし、ここで良いよって言うには簡単だけどそれじゃ告白してくれた齋藤さんに悪いから…ゴメン。」
湊の答えはNOだった。
雪菜はなんとなくフラれる事がわかっていた。
だから悲しくないと言えば嘘になるがこの場で泣くのは我慢する事ができた。
「そうなんですね。残念です…。」
その後は暫く無言で帰った。
そしてとうとう雪菜の家に着いたが会話が一度もなかった。
「明日のバイトさ。無理して出なくても良いよ。気まずいだろうし、今後のシフトも俺と被らないように考慮するね。
本当にゴメンね。」
湊の言葉に雪菜は泣いてしまった。
そして思いの丈をぶつけた。
「嫌です!なんでそんな事言うんですか!私まだ湊さんの事好きなのに…一緒にいたいです。バイトも今までみたいに楽しくしたいし、おしゃべりしながら一緒に家まで帰る時間も凄く好きです。
今日で終わりなんて嫌です!」
「俺だって齋藤さんの事好きだけど、齋藤さんが思ってる好きとは違うんだよ…。それで良いの?」
「私の事絶対に好きにならないんですか?女の子として見てくれませんか?」
「女の子としては見てるんだけど。なんか護らなきゃいけないって感じに思えちゃって…」
「今はそれで良いです。彼女いないんですよね。だったら私、立候補してるんで覚えておいて下さい。ちゃんと私の事意識して下さい。言っときますけど、私より湊さんの事好きな人いないですからね!じゃあ、そういう事なんでおやすみなさい!また明日!」
そう言いながら雪菜は家の中に入って行った。
これが雪菜が湊に告白をした日の物語。
ちなみに家に帰った後雪菜は急激に恥ずかしくなりベットで悶えていた。
一方、湊は少しぽかーんとしていたが、自分も家に帰ることにした。
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