彼の考えがわからない

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4人で食事をしながら会話をしていると七美がいきなり本題に入った。

「この前3人で集まった時に話してた、湊くんがちょっと性格悪いって言うの聞いてびっくりしちゃった?本当なの?」

桃華は驚いた。そんなに直球で聞くとは思っていなかったからだ。桃華は七美に小声で止めるように言ったが七美は「こう言うのは早めに聞いた方がいい」と言って引かなかった。
恐る恐る湊の方をみると湊は特に怒った様子もなく

「さあ?でも別に自分で性格いいとは思ってないから良くわかんないかな。性格がいいか悪いかなんて相手がどう思うかじゃないの?」

至極真っ当な意見を返されて、一同は納得した。しかし七美はどうしても色々聞き出したいようで湊に疑問をぶつける。

「1年生の頃の文化祭覚えてる?あの時桃華達のグループが困ってたのを助けてくれたって聞いたけどあの時って何考えてたの?」

湊はあの時に出来事を話した。

湊達のグループは主に同じ部活の新聞部のメンバーだった。そして文化祭の日は主に部室でサボっていたのだが、やる事もなくなったので何か買う事にした。
そこ際にたまたま桃華達が困っている姿が目に入った。

この時湊の頭には2つの選択肢があった。
無視して自分達が担当する時間が来るまで待つか、手伝ってクラスメイトの好感度を上げるかだ。

湊は打算的な性格をしている。常に損得勘定を考えて生きているのだ。その為、多くの人に良い人であると認識される。
良い人に見えるように行動しようと考えて動いているのだから当たり前だ。

例えば、道端で泣いている子供がいたとする。湊が子供を見つけた場合、真っ先に取る行動は周囲を確認する事だ。
人通りが多いか少ないか、周りに人はいるかいないか、子供の鳴き声は辺りに響き渡っているかどうかなどを確認する。

その後助ける場合は特に問題なく極力良く見られようとするのだが、無視をすると決める場合は、もし同級生や誰かに見られていたとして気が付かなかったと言い訳できる材料はあるかも探す。
見通しがいい場所か、近くに曲がり道はあるか、周囲は暗くなって来ていないか、これらを確認した上で無視するようにしている。

湊はかなり慎重に計算して行動しているので基本的に良い人と思われる行動を取る事が多い。

そして文化祭の時に湊が手伝う事を選んだ理由は、周囲に人の目がある事と手伝わなかった場合、自分達の番になった時に、今以上の状態になる事を考えると気が気ではなかった。
その状況を後から立て直すよりも今の状況を立て直していた方が楽だと考えたからであった。

「文化祭の時はそんなこと考えてたと思うよ。嫌なやつって思われるより、良い人って思われた方が得するからね。」

桃華はその話を聞いて納得できないところがあった

「じゃあ、最後の片付けやってたのはなんで?あれは誰からも頼まれてないし自分からやるって言ってたって聞いたけど」

桃華からそう言われ湊は答えた。

文化祭終了時、湊達が歩いていると自分達のクラスが妙に片付いていないのが目に入った。
作業をしていたグループは良く言えば明るく元気でユーモアのあるメンバーなのだが、悪く言えば適当でだらしなく不真面目な人物達だった。
そこでは「面倒くさい」だの「なんで俺たちがやるんだよ」だの言いながら全く作業をしていなかった。

湊はこのような人間が嫌いである。
というより湊は好きなタイプの人間の方が少ない。
授業中に先生を揶揄う生徒も嫌いだし、教師のあだ名をつける奴も嫌いだ。
大声で会話をする奴、特に仲良くない人にも自分達のノリでちょっかいをかける奴、昼食の時にわざわざ席を移動して他人の席を無許可で使う奴、喧嘩が強い自慢をしている奴なども嫌いだ。

そして湊はそのグループに声を掛けた。

「片付けまだ終わらないの?」

「今やってんだけどね。なかなか終わらなくて。湊達も手伝ってよ~。」

ヘラヘラと笑いながらそう言われた湊は

「もうしなくていいよ。後はやっとくから」

片付けをしていたグループは「よっしゃ」や「ラッキー」と言いながら帰ろうとしていると湊が聞こえる声で

「あいつら人に迷惑掛けてる事も理解できないのかよ。これ終わんなきゃみんな帰れないだろうが。片付けあるってわかって最後の方選んだ癖に何も出来ないんだな。」

と言った。
流石に言われたグループも湊に言い返してきた。

「文句あんなら直接言えよ、別にお前に手伝って貰わなくても終わるわ。」

「自分達が言われてるってわかったんだな。言葉理解できんじゃん。全くやってないから日本語知らないのかと思ったわ。出来んだったら最初からやれよ。
さっきも言ったけどもういいよ。お前らがやるより俺がやったほうが効率良いし。いた方が邪魔だから早く帰れよ。」

湊にそう言われたグループは口々に文句を言いながら帰って行った。
その後は桃華が見た通りだ。

「みんなの為とかじゃなくて個人的に嫌いでキレちゃったから片付けしてただけかな。」

湊から話を聞いて桃華は当時何を考えていたかを知る事が出来た。

「それでも、やっぱり私はあの時助けて貰って嬉しかったよ。ありがとう。」

桃華はそう伝えた。
湊が色々考えて打算的に行動していたとしても、桃華から見たら優しいのだからそれで良いと思ったのだ。

桃華は気になっていた事がわかりその後、解散の時間となった
桃華が外に出て帰ろうとしていると七美から呼び止められた。

「ねえ、齋藤さんと付き合ってるか聞かなくていいの?」

七美から言われて桃華は思い出した。
(気にはなるけど、なんか今聞いたら私が湊くんのこと好きみたいに思われないかな)なんて事を考えていると太樹が

「そういえば、お前と齋藤さん付き合ってんの?」

桃華と七美は内心喜んだ。
湊は付き合ってないと言う返事だった。
太樹は一緒に帰ってた事などを問い詰めたが、湊はもう慣れただのあまり気にしていない様子だったので本当に付き合ってない事がわかった。

「なんだ。面白くねえの」

なんて太樹と湊が話していると、雪菜が店から出てきて話しかけてきた。
やはり湊と帰りたい様子だった。
その会話を聞き、太樹が

「齋藤さんって湊のこと好きなの?」

と聞いた。
あまりに直球で空気が読めないなと思っっていると雪菜は少しキョトンとしたがすぐに笑顔で言った。

「はい、大好きですよ。店長も知ってる癖に相手にしてくれないんです。私が女子校出身で男の友達いないから自分の事が良く見えるだけだって言って。返事くれないなんて酷いですよね。」

「返事したでしょ。確かに仲良いし好きだけど、彼女にしたいとかじゃない。なんか妹みたいに見ちゃうって言ったじゃん。」

そんな会話を聞いた桃華は雪菜の事が羨ましく思えた。
(ああ、私もしっかり告白出来てたら違ったのかなぁ)
そんな事を考えながら自宅へと帰って行った。
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