ただ平和な過ごしたいだけなのに

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翌日、目を覚ました遠藤は堺が寝ている洞窟へ向かった。

「堺さん、起きてる?」

遠藤が声をかけるが返答が帰ってこない。
仕方なく洞窟へ入ろうとすると何かに弾かれてしまった。

(これは…結界か)

中を探ろうと「感知」を使ったが調べられない。

(凄いな、他のスキルの効果も無効に出来るのか)

暫く、堺の結界を調べてみる事にした。
洞窟の外側の岩を少しだけ別の場所に転移してみたが、そこにも結界があった。距離を離して数ヶ所で同じ作業を行なってみるが、全てが結界の範囲内だった。
推測してみる。結界の範囲は洞窟全体といったところか。
強度も知りたいが、中にいたら危険だ。調べてみるか。
「感知」で森全体を探ってみると先日魚を採った川の付近の人がいる。おそらく堺さんだろう。これなら大丈夫か。
「転移」の攻撃方法は限られてくる。
最初に思いついた方法は、上空に質量の大きい物を転移させ落とす方法だ。
威力も高いし不意打ちにも使えて便利だ。しかし、対人戦では上から落とすだけの攻撃など読み易く使い物にならない。
次に思いついたのは体の中に直接物質を転移させる方法だった。これが出来ればよかったのだが、流石に無理であった。それもそうだ。これが出来るなら視認した瞬間に相手を殺せる事になる。どこかに部位だけでも出来ないか、動物で試してみたが無理だった。どうやら生物の一部分を移動させる事や体内に直接転移させるのは不可能の様だ。
攻撃手段がないから諦める。などといった発想にはならない遠藤は、何か出来る事はないか試した。
「感知」のスキルはその過程で必要不可欠と判断した為、覚えたのだ。「感知」は範囲を狭めると大気中の成分まで調べる事が出来る。まあこんな事をしても普通は意味がないから覚えないだろうが、「転移」とは相性が良かった。
遠藤が右腕を出し、結界に触れる。すると電撃が発生した。

+の電気と-の電気。人は基本的にこれらをバランスの取れた状態で保っている。しかし、それらのバランスが摩擦によって偏ってしまう事で帯電し、導電物に触れる事で静電気が発生する。
誰しもが一度はドアノブなどで体験した事があるだろう。
静電気と聞くと大した事がない様に思える。
遠藤の転移は目に見える範囲のものを転移させる能力だが、“目に見える”とはどういう事だろうか。疑問に思ったのは、運動エネルギーは継続するのかの実験をした時だった。石を投げ転移させると投げた石はそのまま飛んでいくのか、それとも真下に落ちるのかといった実験だ。結果はそのまま投げた方向に飛んで行った。
この出来事から遠藤は目に見える範囲は自分から見えている景色であれば、実際には目に映っていない大気中の成分なども転移出来る物だと判断した。なので「感知」を覚えた。
目に映らずとも認識出来れば出来る事は広がっていく。
感知を覚えて1番驚いたのは、「転移」の距離が長くなった事だ。どうやら感知出来ている範囲は見えている物と判断される様で、感知範囲内であれば目に見えていない距離でも瞬間移動が可能となったのだ。
そして、この電撃も成果の一つだ。
感知で電気を察知し、転移で1箇所に集め強制的に+と-のバランスを崩し電気を発生させる。こうして電気を発生させる事に成功した。
ただの静電気ではなく十分な威力を持つ電撃だ。
結界と電撃が触れ合うと凄まじい衝撃が走り砂煙がまった。
煙がはれ、確認してみると結界無事だった。
防御性能も優れている。一通り調べた遠藤はようやく堺の元へ向かうべく「転移」を使った。

堺が川に来ていた理由は水浴びの為であった。
昨日は遠藤の手前、言い出せなく帰った後は寝てしまいすっかり忘れていた。
彼女も年頃の女性なのでお風呂は贅沢だとわかっているが体を洗わないのは耐えられなかったのでこうして朝から水浴びを行う事にした。
すると、堺が洞窟に張っていた結界に異変が起きた。
何者かから攻撃を受けたようだ。
堺の結界は侵入者から身を守る為に作っていた為、もしもの為に攻撃を受けたら自分が察知出来るようにしていた。
慌てて感知魔法を使うと洞窟の前に人がいる。数は1人だ。
感知魔法では人や獣の数しか分からない。堺が川から出て服を取りに行こうとしたその瞬間、洞窟の前にいた人物が消えた。
どこに行った。もう一度感知魔法を使おうとしたところ、すぐ近くに人が立っていた。身構えるとそこにいたのは遠藤だった。

「遠藤くん。よかった…今私がいた洞窟が攻撃を受けたみたいなの。どこかに敵がいるかもしれないから気を付けて。」

堺が遠藤に情報共有し注意を促すは遠藤は明後日の方向を向いている。

「ねえ!ちゃんと聞いてる!警戒してね。いつ襲ってくるかわからないから」

「あぁ…その…堺さん。服着たら」

堺は遠藤に言われ自分の服装を思い出した。
そうだった。今何も来ていないんだった。
とりあえず、遠藤の元に向かい全力でビンタをする。
恥ずかしくて、何かに当たらずにはいられなかった。
しかし、遠藤には避けられた。

森を抜けようと2人は歩いていたが、空気は最悪だ。
堺は遠藤に結界を調べていた事などの説明を受け、かなり機嫌が悪い。

「悪気はなかったんだよ。まさか裸だとは思わなくて」

「変態。やっぱりビンタくらいさせて。」

「やだよ。痛いじゃん。それにいないなら結界解除して書き置きかなんかしたら良かったのに。」

「それもそうだけど、私が不機嫌なの遠藤くんがスキルについて色々隠してる事も原因だからね。」

「流石に気付くか」

「当たり前でしょ。あの結界にヒビ入れるなんてそれなりに攻撃じゃないと出来ないし、見える範囲しか移動できないって言ってたのに一瞬で来るしさ。」

遠藤は勘弁して「感知」のスキルや効果。「転移」の使い方などを説明した。

「ねえ。なんで隠してたの?」

「言う必要はないかと思って、いつ誰に聞かれてるかもわからないし。能力バレたら不利になるからね。それに堺さんも隠してるでしょ。」

「私のは隠してるんじゃなくて出来る事が多すぎて説明するのが面倒なだけ。ってかさ、思ったんだけど感知でどこに村があるかわからないの?」

「遠すぎる距離は無理だし、それなりに集中力使うからキツイかな。」

そんな話をしながら歩みを進めていると遠くに集落らしきものが見えて来た。

「じゃあ、あれ探ってみてよ。」

堺に言われ遠藤が感知してみると確かに人の気配があった。
数は20人弱と言ったところだ。

「小さいけど村みたいだね。」

「じゃあ行こうか。地図さえ見れたらいいしね。」

2人は集落に向かって歩き始めた。
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