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しおりを挟む遠藤と堺は村を目指していた。
「ねえ、そう言えばいつから王国が変だって気付いてたの?」
堺は遠藤に聞いた。
「最初からだよ。無理矢理連れて来られたんだから、誘拐犯みたいなもんじゃん。スキルなんてものを貰って喜んでる奴らもいたけど、それで懐くなんて玩具貰って喜んでる子供みたいだ。信じる方がどうかしてる。」
「辛辣だね。まあ、私も胡散臭いとは思ってたな。スキルについて説明があった時にさ、大まかな能力とかの説明があったのに、過去に使ってた人がどんな人かって言う話はなかったんだよね。勇者が使ってたとしたらそれなりにエピソードある筈だし、使い方を教えた方が効率いいのに変だなって思って。
で、その後町に出て図書館に行ってみたら、何もなかったの、勇者に関する本も魔物に関する本も…
この国は魔王と戦う気がないんだってわかってずっと警戒してたって感じかな。」
「へぇ、それは知らなかったな。さすが堺さん。」
「遠藤くんも訓練に参加しないで町に行ってたって聞いたけど何してたの?」
「町を歩いてただけだよ。後は高い場所から町の外を見たりしてた。町の人達の様子を見るだけで分かったんだ。まるで危機感がなかったから。魔王に襲撃されている世界とは思えないくらいに子どもが町の外に出て遊んでたり、武器屋が存在しなかったりそれに何より、町を囲んでいた砦に兵士がいなかったんだよ。そんなザルな警備がある筈がないからね。」
「遠藤くんも流石だね。」
2人は歩きながら今までに集めた情報を共有していた。
「誰か生き残ってると思う?私は柳原くんはもしかしたらって思ってるけど」
「柳原は無理だと思うよ。スキルを貰って1番浮かれてた。あいつは自分が主人公になった気でいるからね。確かにスキルの上達は早かったけど、それだけじゃ駄目だよ。主人公ってのはさ…基本的に逃げる事はしないんだ。特に仲間を置いては行けない。だけど、柳原が今回生き残る為には、逃げる事に全力を注ぐ必要があるからね。最後まで足掻いて、ミノタウロスくらいは全滅させるかもだけど赤崎には負けるよ。」
「そっか…ちょっと残念だなぁ。私達がいたらどうかにかなっていたかな。まあ、私はあの場にいたら最初に殺されちゃうけどね。」
「無理だよ。絶対に誰かは死ぬ。それにお互い攻撃には向いてないスキルなんだからどうにもならない。」
「そうだよね。ごめんね。嫌な事聞いちゃって…
あと他に気になってる事ある?」
「全然分からないから伝えるか迷ってたけど、一応覚えておいてほしい事がある。洞窟でも思ってたけどやっぱり変だ。今まで歩いていて魔物の一匹も見当たらない。洞窟でもミノタウロス以外の魔物は目にしなかった。そういう習性だと言われたらそれで終わる話だけど、気にして欲しいかな。」
「私も変だと思ってた。しかも付け加えるなら、最初にミノタウロス倒してから1回外に出たよね。その後、もう1度入ってからミノタウロスが現れた場所が、1回目に遭遇した場所と全く同じだったの…
数も一緒だった。あれにはすごく違和感を覚えた…」
遠藤は堺の話を聞いて驚いた。
場所と数まで一緒だなんて、まるでゲームのようだ。
この世界はなんなのだろうか…
考えながらも足を進めた。
2人が町を探し出して半日が経ったが一向に見当たらない。
辺りはもう真っ暗だ。
遠藤は正直、もう野宿をする気満々でいた。
遠藤圭介。黒髪のマシュヘアといった量産型大学生のようななんの変哲もない髪型に中の中といった顔立ち。部活は剣道部。趣味は読書・釣り・登山である。そして遠藤は両親が他界している為1人暮らしだ。故に料理が出来る。
遠藤は基本的に面倒くさがり屋で非効率的だと思った事はやりたくない。つまり、現状夜通し歩いてどこにあるかも分からない村を探すのは非効率的だと思うのでさっさと休みたかった。
しかし、野宿となると問題が発生する。
堺京香だ。頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗。黒髪のロングヘアを束ねたポニーテール。部活は吹奏楽部。身長は155cm程であり、服の上からでも分かる胸の大きさが男子生徒が釘付けにしていた。
遠藤は堺にあまり興味がない。遠藤は余りに出来すぎる人間を見ると、どうせ自分とは住む世界が違うからと思い一気に興味をなくしてしまう。
今は成り行きで一緒にいるが、堺なら何処ぞの王子様的な奴が助けて幸せに過ごすだろうくらいに考えている。
だが、一応遠藤も男だ。自分から好きになる事はないが、堺から告白されたら即決でOKするだろうし、そういう雰囲気になったら絶対に手を出す自信がある。
そうならないようにも、最低限のプライバシーは守れるようにしなければと思い、泊まれそうな建物がないか探していた。
一方堺も、もう休みたかった。
堺は運動神経は良いが運動部に所属した事がない。故に長時間歩き続ける体力はないのだ。
それに今から町を探して歩き回るのも効率が悪い事も理解しているので、野宿の覚悟は出来ていた。
だが、遠藤が問題だ。
堺は遠藤の事がずっと気になっていた。
今までその容姿故に告白され続けてきた。大抵の男子は見た目だけで私を好きになり内面を見ようとする人はおらず、女子からは男子の媚び売っていると揶揄され、堺には心を許せる友達がいなかった。
そんな中出会ったのが遠藤だ。
遠藤と会った頃には堺は視線や雰囲気で自分の事を好きになったかがわかるようになっていた。
そして遠藤と話して驚いた。
(この人私に全く興味ない。それどころか嫌われてるのかな?なんか妙に避けてるような)
気になり後を追った京香の耳に遠藤と友人の話声が聞こえた。
「お前堺さんと話してたろ。いいな~。かわいいよな、堺さん。なのにお前なんであんな逃げるような真似したんだよ。」
「確かに可愛いとは思うよ。だけど、関わると面倒くさい事しかないだろ。喋るだけで周りの男子が嫉妬して八つ当たりしてくんだからたまったもんじゃないね。」
(成程…そういう事ね。でも面白い人見つけたかも)
京香はその日以来、事ある毎に遠藤に構った。
遠藤は徐々に逃げる事は無くなってきたが京香の事を好きになる事もなかった。
(なんか悔しいな…絶対私に事好きにさせてやる!)
そう胸に誓い今日に至るまでなんの発展もなかった。そしてその間に京香の方が遠藤を意識してしまっていたのだ。
((どうしよう))
2人揃って同じ事を考えながら歩く。
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