ただ平和な過ごしたいだけなのに

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Bグループが洞窟から出ると、他のグループは既に休憩場所に集まっていた。

しかし、どうにも雰囲気が悪い。
なにやら騒ぎのする方に目を向けると翠川達が兵士に掴みかかっていた。

「ふざけんじゃねえよ!あんなに強いなんて聞いてねえぞ!」

「そうよ!なんなのよあれは!私達は最強の能力だって言ってじゃない!まるで当たらないし…使えないじゃない!」

「見た目もキモいし。マジで最悪なんですけど…私もう絶対に戦わないから。」

翠川、百瀬、大黒の3名が兵士の詰め寄る。

「みんなやめろよ!」

赤崎が兵士との間に割って入った。

「聖…テメェそっちにつくのかよ。ハッお前は良いよなぁ、一人で勝てるような強い能力でよ!俺を見てみろよ!腕がなくなったんだぞ!こんなとこ連れて来られて腕まで無くなってやってられっかよ!」

「それは…」

赤崎は言い返せなくなった。

赤崎は優しい。この場合は魔物を甘く見ていて訓練をしなかった3人が悪い。ただの自業自得だ。
しかし赤崎はその事を口に出来ない。
なぜなら赤崎にとって3人は大切な友達だから。
はあ…仕方ないな

「あの…少しいいかな」
柳原は声をかけた。

「兵士の人達から聞いたけど、Aグループ酷かったんだって。でもさ、それは兵士や赤崎くんにあたるべきじゃないと思うよ。君達のスキルは確かに強い。だけど、今まで訓練しなかったから負けたんじゃないの?現に君達以外のグループは全員大きな怪我もなくミノタウロスに勝っている。訓練をしなかった君達も悪いと思うけど…」

「なんだテメェは急に…自慢かよ。自分達は無傷で勝ちました。お前らより強いぞってか?ふざけんなよ!実際の世界じゃ俺らに怯えてたクズどもが調子に乗りやがって!いい気になってんじゃねえよ。よし、決めた。前の世界に戻ったらテメェの事虐めてやんよ。死にたいって思うくらいにな!精々この世界でイキってろ。俺たちを元の世界に戻すために動きやがれ。」

「おい!そんな言い方ないだろう。」

「聖、テメェもだぞ!1人だけいい気になりやがって。言っとくが俺はもう戦わねぇ。腕がなくなったんだ、元の世界に帰るまでの面倒は見てくれるよなぁ!兵士様よお!お前らがこっちの世界に呼んだせいでこうなってるんだからよ!」

翠川に続き、百瀬と大黒も戦わない意志を示した。
最悪の空気だ。
そんな中思わぬ人物が声を上げた。

「はあ、どうでもいいよそんなやつら。放って置いてさっさとミノタウロスの討伐終わらせましょう。兵士の方々案内お願いします。」

遠藤圭介だ。クラスで頭がよく、誰とでも話してはいるが深くは関わらない。休み時間や弁当の時は必ず1人でいる。おそらく1人が好きなタイプなんだろうといった感じの生徒だ。

「遠藤。お前もなんだ急に。」

「別に。君たちは戦わないんでしょ。それならその話はもう終わりだから戦う人だけでさっさと洞窟行って早く帰りたいなって思っただけだよ。」

「なんだよ。わかってんじゃねえか。それならいい。おい!お前ら!遠藤の言う通り俺様の為にさっさと片付けて来いよ!」

一同は渋々準備を始め洞窟に入って行く。
最後尾に翠川、百瀬、大黒が付いて来ていた。
まるで自分達を守れとでも言わんばかりの態度だ。
しかし

「なんで来てるの?君たちは外にいなよ。早く王宮に帰ったら。着いて来たら危ないよ?」

遠藤がまたしても翠川達に声を掛ける。

「あはは。遠藤くんって頭良いのにちょっと抜けてるね。外にいたら魔物に襲われた時危ないじゃん。みんなに守って貰わないとね。」

百瀬がそう言うとまたしても空気は悪くなった。
当たり前だ。誰だってこんな奴ら守りたくない。

「百瀬さんも面白いこと言うね。戦わないのについて来られたら邪魔じゃん。さっき外でも言ったじゃん。戦う人だけで洞窟いくって…人の話はちゃんと聞きなよ。」

「遠藤くん冗談だよね。私達戦う力ないんだよ。だから怒ってたんじゃん。」

「大黒さんなに言ってるの?スキルがあるでしょ。みんなが訓練している間、サボってたから3人のスキルは訓練時間を補えるほど強力なスキルなんでしょ。羨ましいな。」

「テメェ。調子に乗ってんのか。この腕見てみろよ。片腕ねえんだよ。戦えない俺を守る義務はテメェらにはあるんだよ!」

「じゃあ、これで良いかしら。」

Cグループの堺がそう言うと、回復魔法を使った。
「聖女」のスキルの回復力は凄まじく、なくなっていた腕が元に戻った。

「さっきから貴方達うるさい。私も早く帰りたいんだから邪魔者は帰ってくれない?腕もあるしこれで義務とやらもなくなったでしょ。」

堺京香。頭脳明晰、運動神経抜群。その上、容姿端麗なので1年の時はクラスのマドンナ的存在だった。
しかし、少しきつい性格や人といる事を好まない所から徐々に評判は落ちていった。

「テメェら調子に乗りやがって…」

翠川の右腕が輝き、力が集まっている。
これは「竜覇拳」だ。
いち早く気付いた赤崎が叫ぶ。

「翠川のスキルだ!みんな危ない!」

みんなが岩陰に隠れる。
しかし、2人だけ翠川の前に立ったままだった。
遠藤と堺だ。

「テメェら舐めてんのか?さっきから馬鹿にしやがって!今から俺のスキル喰らわせてやるから逃げんじゃねえぞ!」

そして翠川の拳から「竜覇拳」が放たれた。
済まさじい威力だ。周囲は煙に覆われて、何者かが壁に激突していた。
(ああ…犠牲者が出てしまった。)

しかし煙がはれて現れた人物に驚いた。
なんと壁に埋もれていたには翠川だった。

「へー。凄い威力だね。これなら帰り道くらいなんとかなるでしょ。実演してくれてありがと。」

「そうね。これならそこら辺の魔物は倒せそうだし大丈夫でしょう。」

遠藤と堺はそういうと、瀕死の翠川を全開まで治した。

「なんで…俺が俺の攻撃をくらったんだ…遠藤テメェ!なにしやがった!」


「別にお前がバカ正直に攻撃してくるからお前が攻撃を放った後に俺とお前の位置入れ替えたんだよ。」

治った翠川が遠藤に殴りかかろうとしたが、一瞬で遠く離れた場所に移動させられた。

「無駄な事やめてさっさと帰れ。言っとくけど俺のスキルで洞窟の外に一瞬で出せるからな。次突っかかってきたら飛ばす。せめて自分達の意志で行け。」

遠藤にそう言われると翠川は悔しそうに歯を噛み締めながら外に向かった。百瀬と大黒もその後をついて行った。
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