上 下
1 / 8

1

しおりを挟む
西南学園2年生はいつも通り登校していた。もうすぐ授業が始まるので全員が教室に入っていると、突如光に覆われて気がつくと見知らぬ建物にいた。

「勇者様方、突然の事で申し訳ありません。どうかこの世界を救っては頂けませんか?」

声がする方へ目を向けるとそこには本で見た事があるような、王様や王女様、兵士などの姿があった。
その後はよくある質問のように日本に帰れるのかなどの質問があったが当然帰れない。
ここ数年で異世界転生と言うのは漫画やラノベで有名になっており、大体の生徒は状況を理解できていたし、楽しみにしている生徒もいた。

柳原剣斗もその一人だ。学校では目立つ方ではなくオタク気質であり、このような状況は何度も夢に見てきた。

(異世界転生は本当にあったんだ。よし、落ち着けまずは状況を確認しないと、この場合だと何か凄い能力がある筈だ。
セオリー通りだとクラスのリア充勢が聞いてくれるだろう。)

そんな事を考えていると、学級委員である赤﨑聖が「どうやって戦えばいいのか」と言う質問をした。
返答は1人につき1つオリジナルのスキルがあるらしくそれらを使って戦うようだ。

そしてスキルの判定が行われた。
協力なスキルを手にしたものは強気になり、逆に弱いスキルのものは怯えて行った。
そうしている間に自然とグループが分かれて行った。

赤﨑聖率いる陽キャグループ

Aグループ
赤﨑 聖 スキル「剣聖」
翠川龍二 スキル「竜覇拳」
百瀬 華 スキル「魔導」
大黒眞子 スキル「黒魔法」

大当たりのスキルだらけのグループだ。

「剣聖」攻守揃っている万能なスキルの上、回復魔法を使う事も出来る

「竜覇拳」攻撃力に全振りした能力だが、その一撃は「剣聖」の力を上回るらしい。

「魔導」魔法を高水準で使いこなせるスキルだ。攻撃だけでなく、バフ、デバフ、回復、索敵などなんでも出来る。

「黒魔法」攻撃魔法を使いこなせるスキルだ。遠距離攻撃に置いて協力な武器である事に間違いない。

次に俺たちのグループだ。

Bグループ
柳原剣斗 スキル「暗殺者」
峰 隼人 スキル「爆撃」
藤田 光 スキル「白魔法」
山岸慶次 スキル「豪拳」

「暗殺者」スピードや気配を断つ事に置いては最強のスキルだ。攻撃力はないが武器などで補えるので当たりだ。

「爆撃」手で触れた相手や箇所を爆破する事が出来る。遠くの相手にはあまり使えないのが欠点だ。

「白魔法」回復やサポート専門の魔法を使いこなせるスキルだ。

「豪拳」拳で攻撃する際の威力が上昇するらしい。山岸慶次は空手部の為、相性が良さそうだ。

俺たちのグループはAグループよりスキルでは見劣りするが何よりも知識で勝っている。
スキルは理解していく程に出来る事が増えていくらしいので、見劣りするスキルでも能力を使いこなせる方が強い。
それに他にも隠されて能力があるかもしれない。

最後のグループはクラスでもよく1人でいる奴らだ。

Cグループ
遠藤圭介 スキル「転移」
森内 明 スキル「増殖」
堺 京香 スキル「聖女」
橘 蓮香 スキル「狙撃」

「転移」移動には使えるが正直戦闘には向いていない。その上、目に見える範囲しか移動できない。一応物質の移動も出来るみたいだ。

「増殖」持ちものを増やす事が出来るスキルだ。片手で触れている物をもう片方のてから増やす事が出来るらしいが、生き物は増やせず、回復薬なども複製した方は効果はなくなる。

「聖女」これは大当たりのスキルだ。本当はAグループに誘われていたが人数のバランスでCに入る事になった。
回復は能力が凄く、鍛えたら欠損した部位なんかも一瞬で治せるらしい。

「狙撃」これだけだとそこそこ使えそうだと思えるが、この世界では遠距離攻撃は魔法が主流の為、扱い難い。
一応弓矢を使う事になっているが威力は魔法に遠く及ばないのでやはり不便だ。

残りのクラスメイトは戦う事を放棄した。
王様もその辺りは考慮していた様で、最低限の生活は保障してくれるそうだった。

その後は各グループ毎に基礎訓練などを受けたり、今度の方針について話し合う事にした。


Bグループside

「正直に言って他の2グループはあんまり当てにならないと思う。訓練を見ていて、Aはスキルは強いけど、使い方がまるでなっていなかった。Cはそもそもスキルも微妙でパーティバランスもなっていない。特に遠藤くんと堺さんは訓練に参加せず町に向かって行ったし。俺たちが魔王を倒すしかないと思う。」

剣斗がそう言うと、グループのメンバーは全員が納得した。それ程今日の訓練は酷かったのだ。

Aは赤崎は「剣聖」のスキルを使いこなす為に、剣を覚えたりしていたが、その他のメンバーは強力なスキルを得た事で天狗になっており、談笑をして過ごしていた。赤崎が訓練するように言っても「こんなに強いから大丈夫だ」と言った感じで聞く耳を持たなかった。

Cはメンバー全員兵士からスキルについての話を聞いたり、武器の使い方などの訓練をしていたが、途中で遠藤と堺が町に行くといい訓練に参加しなくなった。

Bグループは真面目訓練した。夢にまで見た異世界で元の世界では不可能な能力を使う事が出来ると言う環境が彼らにとっては楽園の様な物であったからだ。

そんな訓練を終えて今に至る。

「とりあえず、今日聞いた情報と現状の僕らの戦略を考えよう。」

まずはスキルについてだが、これは現在持っているオリジナルスキル以外にも訓練によって覚える事が出来るものがあるらしい。
例えば「索敵」を覚えると数キロ先の気配がわかる様になったり、「剣術」を覚えたら剣技の威力が上昇すると言ったものだ。

「これは結構大事だと思う。ゲームでもスキルは多い方が強いし。訓練は継続して行っていこう。」

「そうだね。スキルが多くて困る事はないし。じゃあ次に戦略だけど、どうする?」

全員のスキルを踏まえた上で考えた結果、峰と山岸は一撃の威力が高い為、前衛で敵を引きつけつつチャンスを窺う。その隙に、スピードのある柳原が相手を攻撃し弱らせたりスキを作る。その隙を見逃さず峰と山岸がトドメを指すと言った寸法だ。藤田は補助系の魔法でサポートしつつ、怪我の際の回復が役割となっている。



訓練が始まって3週間が経ったが、状況は余り良くないと思う。

Aグループは慢心が続いており、戦う事を放棄したクラスメイト達をこき使ったり、虐めたりしていた。
相変わらず、赤崎だけは真面目に訓練していたが、他のメンバーが問題を起こす度に誤りに行ったり、止めに入ったりしていたので集中して訓練する事は出来ていなかった様に思う。

Bグループはスキルの研磨やパーティの行動などを確認していた。しっかり訓練していたので、その分成果も表れていた。全員がスキルを複数身に付ける事が出来た上に、オリジナルスキルで出来る事が増えたメンバーもいた。
山岸の「豪拳」が拳が鋼の様に硬化出来る様になり、さらに拳から気の様なものが出せるようになった。これで遠距離攻撃も可能だ。
柳原の「暗殺者」も進化し、影に潜れる様になった。これは戦闘でもかなり使える便利な能力だ。

Cグループは訓練はしっかりしているが特にこれといった変化はない。
特にメンバー同士が仲良いわけでもないので会話もない。スキルは一応身についているみたいであるが、あの調子だと連携は取れないだろう。そして極め付けは、遠藤と堺の2人だ。2人とも訓練を一定時間終えると何処かに消える。
後を追った頃もあるが2人一緒にどこかに行っている訳でもなく、町を見回ったり、丘から遠くを眺めているだけだった。何がしたいのかも理解出来ないのでどうしようのなかった。


そんな状況のなか1ヶ月が経った頃、王様から呼び出された。訓練の成果を見せて欲しいとの事だ。
内容としては近くの洞窟内に牛型の魔物がいるので退治して欲しいという依頼だった。

柳原は遂に戦う時が来たと思い興奮していた。この後、何が起こるかも知らずに…


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...