道草食ってスキル獲得

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戦うジジイはかっこいい

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「う~ん、お前らクラスの探索者ねぇ…
 そりゃ当然居るけどベテランばっかだぞ。
 基本的にはみんなパーティ組んじまってる。」

 パーティを組んでいる探索者は基本そのメンバーでダンジョンに潜る。
 新しいメンバーをパーティに加えるという事は連携を乱してしまう可能性があるので長年組んでいるパーティに新しいメンバーが入る事は殆どない。

「仕方ないか…多少レベルは低くてもいいから3階層程度の探索者を募集したい。」

「わかった。その条件で掲示板に貼っておこう。期限はいつまでだ。」

「3日程度で頼む。」

「よし、わかっ——「その必要はないぞ。」

 パーティ募集の掲示依頼を終えようとしたその時、何者かが割り込んできた。

 こちらに向かって歩いてくる2人の人影。
 片方は逆立てた白髪の髪に筋骨隆々の大きな肉体を誇る男性。
 もう片方は黒く艶やかな髪を靡かせ、無表情ながらも整った顔立ちの和風美女。
 どちらも見覚えがある。
 つい先日、会議で出会ったあの2人だ。

「話し声は聞こえとったぞ。パーティメンバーを探しとるなら儂らと組んでくれ。丁度お前さんを探しとったんじゃよ。」

 福岡のトップランカー、牧本虎吉《まきもととらきち》。
 そしてその横にいる無表情な女性は京都のトップランカー、西園寺玲《さいおんじれい》。
 どちらもそう簡単に拠点を離れられる身ではないのに何故2人が此処へ…

「草介さん、この人たちって偶にテレビで見る有名な探索者さんじゃ…」

「嬢ちゃんは初めましてじゃな。
 儂は牧本虎吉。横の無口なやつは西園寺玲じゃ。な~に、緊張して喋らんだけじゃから仲良くしてやってくれ。」

 豪快な笑い声をあげながら、茉央に自己紹介をしている。

「おいおい…こんな大物が2人も一体何のようでこんな所まで来たんだ?
 拠点離れていい状況じゃねえだろ。」

 俺も思っていた疑問を隆二が声に出す。
 すると今まで笑っていた虎吉が急に真剣な顔つきへと変わった。

「これには訳があるんじゃが…此処では人が多い。何処かゆっくり話せる場所はないかのう。」

「だったらギルドの会議室を使うといい。
 俺が掛け合っておくから3階に上がれ。草介が場所を知っている。」

「お前は来ないのか?」

「仕事中だ。後で聞かせろよ。」

 そういうと隆二は仕事に戻って行った。
 俺はその場に居た茉央、虎吉、玲の3人を引き連れ、会議室へ案内する。

 会議室へ着くと各々が適当な席に座ると虎吉が口を開いた。

「儂らが此処に来たのは魔人についてなんじゃが…その前に確認じゃ。お前さんたち、魔人と呼ばれる存在を本当に見たんじゃな?」

 鋭い眼光で俺たちを睨みつける。
 生半可な探索者なら、これだけで暫く動けなくなるレベルの威圧だ。

「それはどういう意味で?」

「知っとるじゃろ?魔人は実在しない、有名になりたい探索者の虚言と言われている事を。」

 元々、全員が魔人の存在を信じるなんて無理な話だった。なんせ、目撃したのは全国でも俺たちだけなのだから。
 ギルド職員が注意喚起してくれているが、やはり目撃情報が1組だけというのは疑念の声が上がってしまう。

「まさか、それを確認する為だけに此処まで?」

「いや、儂はお前さんの話を信じとるよ。
 というかあの会議に出た者は信じているから出席したと言ってもいいだろう。
 なぜ儂らが面識もないお前さんを信じたかわかるか?
 心当たりがあるからじゃよ。魔人の存在に。
 勿論、直接見たわけではない。
 じゃがな…スタンピード後、福岡では下層に潜った探索者が戻って来ないことが増えた。
 ただ死んだだけの可能性もある。
 じゃが、こうも続くと何者かの意思を感じる…そう思って確かめに来たんじゃ。」

「……京都も同じ。下層に行った探索者が帰って来ない。私も探しに行ったけど彼らの手がかりは掴めなかった。」

 福岡と京都で探索者の失踪が相次いでいるのか…だが、2人が探しに行っても見つからないという事は相手を選んで姿を現しているという訳か。厄介だな。

「別に俺たちと居るからって魔人が出る訳じゃないと思うけど…それでもいいのか?」

「構いやせん。何かしらの情報を掴めればいいと思って来ただけだしのう。
 お前さんらと行動すれば、魔人の強さも大まかにわかる。よろしくのう。」

 虎吉の大きな手が差し出される。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 俺は差し出された手を握る。
 こうして新パーティが結成した。


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