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魔人戦10
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「時間が来たみたいだね。君との戦いは面白かったよ。出来れば僕自身の手で殺してあげたかったんだけど…仕方ない。甚大もこの有様だし。」
余裕の表情で話しかける透吾の横には、爛れ落ちた皮膚で、血に伏せている甚大の姿があった。
「仲間を盾にして時間稼ぎかよ…狡い奴だよ。お前は。」
「だってそれに触れたら甚大みたいになっちゃうし。そろそろ君も湖に沈む。早くそのスキル解いた方がいいんじゃない?
そのまま水に入ったら全員無事じゃ済まないでしょ。」
この男の言う通り、この状態で水に落ちると毒が浸透してしまう。
多少薄まるとはいえ、毒は毒に変わりない。
草介は大人しくスキルを解いた。
「よかった~。君が茉央ちゃんまで巻き込んで死ぬなんて言ったら困ったからさ。
彼女には魔獣の子を産むっていう役割があるんだ。だから安心しなよ。君が死んでも茉央ちゃんだけは助けてあげるから…まあ、用済みになったら殺すけどね♪」
「ヤケにこだわるが彼女である必要があるのか?」
「ううん、別に。女なら誰でもいい。
ただあの子には恨みがあるから苦しめたいだけ。ただそれだけだよ。」
逆恨みでそんなことをしようと思えるとは…性根が腐ってるとしか思えないな。
「おっと…そろそろ茉央ちゃんを迎えに行く時間かな。」
足元が崩れ始め、俺はそのまま湖へと落下したその時——
「草介さん!掴まって下さい!」
巨大な炎の鳥が此方へ向かって飛んで来る姿が見えた。
鳥の背中から伸ばされた彼女の手を俺は掴んだ。
「新しいスキル出たんだ。」
「はい!炎鳥《ファイアバード》の進化系、炎鳥神《フェニックス》です。ギリギリだけど、間に合いました。このまま逃げます。」
炎鳥神《フェニックス》が4階層に向かって飛ぶが目の前に巨大な体が立ち塞がった。
あれは——桑原甚大《くわばらじんだい》!
相当な深傷を与えた筈だが…
息が荒い…相当無理をしているな。
あいつに無理矢理やらされたって訳か。
甚大の肩には透吾が乗っている。
「逃すと思った♪」
笑みを浮かべてはいるが、怒りが隠せていない。相当苛立ってるようだ。
「そんな…あいつが居たんじゃ逃げられない…」
「大丈夫だ。あいつの魔法系統は土。空中じゃ何も出来ない。怒りのあまり、冷静さを欠けたな。」
透吾の存在は俺たちを威嚇する為だけの見掛け倒しだ。この場において相手の戦力は桑原甚大ただ一人。立ち塞がるあいつを倒れさせばそれで事足りる。
「勢いを落とすな!そのまま進め!」
毒邪龍《ヒュドラ》を上空に出し、勢いそのままに甚大へと突撃させる。
これで倒れてくれよ
重症だった甚大は後退するものの、毒邪龍《ヒュドラ》の巨体を受け止めていた。
「残念♪この程度じゃ倒れないよ。
甚大、奴らを地に落とせ。後は僕がやる。」
「それじゃあ、これも追加でどうですか。」
海面が沈み込み、甚大の体に巨大な重力が襲い掛かる。
「な!?このスキルは…女!お前かぁ!!」
常にこちらを馬鹿にするような、余裕のある表情で飄々としていた透吾の口調も顔も荒々しく変化していた。
恐らく、あちらが本性なのだろう。
血走った目で飛び去ろうとする俺たちを睨みつけている。
「女ぁ、覚えたからな。お前も俺たちのターゲットに加えてやる。次ダンジョンに来た時こそ…必ず——」
重力で押し潰されていた海面が元に戻り、湖の底に倒れた2人は水に呑まれ消えて行った。
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余裕の表情で話しかける透吾の横には、爛れ落ちた皮膚で、血に伏せている甚大の姿があった。
「仲間を盾にして時間稼ぎかよ…狡い奴だよ。お前は。」
「だってそれに触れたら甚大みたいになっちゃうし。そろそろ君も湖に沈む。早くそのスキル解いた方がいいんじゃない?
そのまま水に入ったら全員無事じゃ済まないでしょ。」
この男の言う通り、この状態で水に落ちると毒が浸透してしまう。
多少薄まるとはいえ、毒は毒に変わりない。
草介は大人しくスキルを解いた。
「よかった~。君が茉央ちゃんまで巻き込んで死ぬなんて言ったら困ったからさ。
彼女には魔獣の子を産むっていう役割があるんだ。だから安心しなよ。君が死んでも茉央ちゃんだけは助けてあげるから…まあ、用済みになったら殺すけどね♪」
「ヤケにこだわるが彼女である必要があるのか?」
「ううん、別に。女なら誰でもいい。
ただあの子には恨みがあるから苦しめたいだけ。ただそれだけだよ。」
逆恨みでそんなことをしようと思えるとは…性根が腐ってるとしか思えないな。
「おっと…そろそろ茉央ちゃんを迎えに行く時間かな。」
足元が崩れ始め、俺はそのまま湖へと落下したその時——
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巨大な炎の鳥が此方へ向かって飛んで来る姿が見えた。
鳥の背中から伸ばされた彼女の手を俺は掴んだ。
「新しいスキル出たんだ。」
「はい!炎鳥《ファイアバード》の進化系、炎鳥神《フェニックス》です。ギリギリだけど、間に合いました。このまま逃げます。」
炎鳥神《フェニックス》が4階層に向かって飛ぶが目の前に巨大な体が立ち塞がった。
あれは——桑原甚大《くわばらじんだい》!
相当な深傷を与えた筈だが…
息が荒い…相当無理をしているな。
あいつに無理矢理やらされたって訳か。
甚大の肩には透吾が乗っている。
「逃すと思った♪」
笑みを浮かべてはいるが、怒りが隠せていない。相当苛立ってるようだ。
「そんな…あいつが居たんじゃ逃げられない…」
「大丈夫だ。あいつの魔法系統は土。空中じゃ何も出来ない。怒りのあまり、冷静さを欠けたな。」
透吾の存在は俺たちを威嚇する為だけの見掛け倒しだ。この場において相手の戦力は桑原甚大ただ一人。立ち塞がるあいつを倒れさせばそれで事足りる。
「勢いを落とすな!そのまま進め!」
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これで倒れてくれよ
重症だった甚大は後退するものの、毒邪龍《ヒュドラ》の巨体を受け止めていた。
「残念♪この程度じゃ倒れないよ。
甚大、奴らを地に落とせ。後は僕がやる。」
「それじゃあ、これも追加でどうですか。」
海面が沈み込み、甚大の体に巨大な重力が襲い掛かる。
「な!?このスキルは…女!お前かぁ!!」
常にこちらを馬鹿にするような、余裕のある表情で飄々としていた透吾の口調も顔も荒々しく変化していた。
恐らく、あちらが本性なのだろう。
血走った目で飛び去ろうとする俺たちを睨みつけている。
「女ぁ、覚えたからな。お前も俺たちのターゲットに加えてやる。次ダンジョンに来た時こそ…必ず——」
重力で押し潰されていた海面が元に戻り、湖の底に倒れた2人は水に呑まれ消えて行った。
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