道草食ってスキル獲得

sou

文字の大きさ
上 下
70 / 99

好感度

しおりを挟む
 美月ちゃんは部屋に上がると慣れた手つきで料理を作り始めた。料理している彼女の後ろ姿に俺は声をかけた。

「美月ちゃんが毎日掃除してくれてたんだって。ありがとね。」

「草介さんが帰って来た時に汚い状態だと困るじゃないですか。だから私が掃除しようって思って。今日、お客さんたちが草介さんが帰って来たって噂してたので、もしかしてって思って食材を買って来たんですけど無駄にならなくて良かったです。」

 美月ちゃんは俺とキスした事など忘れているかのように普通に話している。

 もしかして気にしてるのは俺だけなのか?
 今まで碌に恋愛なんてして来なかったし、こういうのはよくわからない。美月ちゃんからしたらあのキスはただのお礼だったのかも知れない。

 俺にも年長者としてのメンツってものがある。俺の方が気にしていては、なんだか情けないので美月ちゃんには悟られない様にしたい。俺も普通に接さなければ……

 そこからは出来る限り普通を装い、会話を続けた。暫くして料理が出来上がり、二人で食事をとる事にした。彼女が作った料理はカレー。俺の大好物だ。

「「いただきます。」」

 見栄えもよく、食欲を唆られる香りが漂う。
 バッカスの遣いでは美月ちゃんは料理をしていないので腕前はわからない。父親譲りならハズレだけど、母親譲りなら大当たり。
 美月ちゃんがどちらかは食べてみなければわからない。

 意を決してカレーを一口食べてみる。

 これは——うまい!
 お母さん譲りでよかったぁ。

「どうですか?」

「うん!めちゃくちゃ美味しいよ。美月ちゃんって料理上手だったんだね。」

「えへへ、頑張って練習したんです。美味しいって言って貰えて良かったです。」

 そう言いながら微笑む彼女の指には幾つもの絆創膏が貼ってあった。

 そっか…美月ちゃん、頑張って練習してくれたんだな。

 そう思うとなんだかより一層美味しく感じる。
 俺はカレーを一気に口の中に掻き込んだ。

「ふふ、そんな急いで食べなくても。まだまだありますから一杯食べて下さいね。」




「ふう…食った食った。」

 久しぶりにちゃんとした食事にありつけた事もあり、結局3杯もおかわりしてしまった。
 洗い物までやってくれて、暫くの間一緒にテレビを見たりしているとあっという間に時刻は23時。

「美月ちゃん、もう遅いしそろそろ帰った方がいいよ。危ないし送ってあげるから。」

「……そうですね。わかりました。ありがとうございます。」

 どこか寂しげに彼女は微笑んだ。

 原付に乗ってる間、特に会話もなくバッカスの遣いに辿り着く。

「送って頂いてありがとうございます。それじゃあまた明日。」

「こっちこそありがとね。また明日。」

 そういうと彼女は家の中へと入って行った。

 ん?また明日?もしかして美月ちゃん明日も来る気なのか?

 流れで返事を返してしまったが、俺が住んでるので別に明日来る必要はないのだが…美月ちゃんもう帰っちゃったし…明日言いに来よう。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━
 よろしければお気に入り登録よろしくお願いします!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監
ファンタジー
日本のIT企業戦士であった有能な若者がある日突然に異世界に放り込まれてしまった。 異世界に転移した際に、ラノベにあるような白い世界は無かったし、神様にも会ってはいない。 但し、理由は不明だが、その身には強大な魔法の力が備わっていた。 転移した異世界の都市は、正にスタンピードで魔物の大襲撃に遭っているところであり、偶然であるにせよその場に居合わせた転移者は魔物を殲滅して街を救い、以後その異世界で大魔法師として生きることになった。 そうして、転移から200年余り後、親族や大勢の弟子が見守る中で彼は大往生を遂げた。 しかしながら、異世界で生涯を終え、あの世に行ったはずが、230年余りの知識経験と異能を持ったまま赤子になって明治時代に生まれ変わってしまったのである。 これは異世界に転移したことのある出戻り転生者の物語である。 *  あくまでもフィクションであり、登場人物や時代背景は史実とは異なります。 ** 史実に出て来る人物又は良く似た名前の人物若しくは団体名が登場する場合もありますが、広い心で御容赦願います。 *** 週1(土曜午後9時)の投稿を予定しています。 @ 「小説家になろう」様にも投稿しています。

異世界に行って転生者を助ける仕事に就きました

仙人掌(さぼてん)
ファンタジー
若くして死ぬと異世界転生する…。 まさか自分がそうなるとは思わなかった。 しかしチートはもらえなかった。 特殊な環境に生まれる事もなく、そこそこ大きな街の平民として生まれ、特殊な能力や膨大な魔力を持つことも無かった。 地球で生きた記憶のおかげで人よりは魔法は上手く使えるし特に苦労はしていない。 学校こそ行けなかったが平凡にくらしていた。 ある日、初めて同じ日本の記憶がある人とであった。 なんやかんやありその人の紹介で、異世界に転生、転移した日本人を助ける仕事につくことになりました。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...