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3年生
大声で
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翌朝、朝日が昇る前には目が覚めた。少ししか眠れなかったはずなのに、不思議と眠気は追ってこない。
朝日が昇るまで、しばらくずっと窓を眺めていた。空が明るくなっていくにつれ、王宮内もバタバタと騒がしくなり始める。
僕が身支度を整えていると、ルシスが部屋に入ってきた。
「おはようございます、マリス様」
「おはようございます。今日は僕も処刑を見に行きます」
「いえ、マリス様には部屋で待機していただきます」
ルシスは、紅茶を淹れてくれたり朝食の準備をしてくれたり、テキパキと朝のルーティンをこなしながら言った。
「どうして僕だけ部屋で待機なんですか?」
「マリス様の精神が不安定だからです。処刑なんてショッキングなものを見たら倒れるかもしれません」
「僕は倒れませんし、体調も良いです!」
「それでも、私にはマリス様に外出許可を出せる立場ではないのです。それでは失礼いたします」
「ちょ、ルシスさん……!」
僕の声を無視し、ルシスは30度のお辞儀をして部屋から出ていった。
(そんな……どうしよう……)
試しに部屋のドアを開けようとしたが、外鍵がかかっているようでびくともしない。
この部屋は3階にあるので、窓から脱出するのは現実的ではない。
もう1時間ほど、扉をノックして呼びかける行為を繰り返していた。諦めて、窓の外から出てしまおうか。
軟禁されているのだと自覚すると、洞窟で過ごしていた日々を思い出し涙が出そうになる。
フィオーネやルシスの言う通り、僕の心の傷はまだ少ししか癒えていないのかもしれない。
「マリス!」
扉が勢いよく開いて、グランが僕の部屋に飛び込んで来た。
「ぐ、グラン……!? どうして……」
そのままグランは、僕を抱きしめて赤子をあやすように背中をトントンと叩いた。
「よしよしマリス、よく耐えたな」
「う、ごめん……」
「俺の方こそごめんな。来るのが遅くなった。事情は終わってから話すから、とりあえず今は……第二王子の俺が許可する。マリスは処刑を止めてくれ!」
グランと共に部屋を出る。最初は小走り程度だったが、階段を降りるにつれ全力疾走していた。
なんとか処刑場まで辿り着いた。処刑場は王宮の中ではなく外に設置されている。
血が飛び散るのを防ぐためか、地面には大きなシートが敷かれていた。
イェルグとヤンは膝立ちにされ、腕を左右に伸ばされて首を垂れている状態だ。
首を切り落とすつもりなのだろうか。想像するだけで背筋がゾッとし、吐き気がする。
「マリス、大丈夫か……?」
「うん、なんとか」
グランの声を聞き、少しだけ気持ちが落ち着く。
ぐるりと辺りを見渡せば、思っていたよりも多い数の人々が処刑場を囲っていた。
「みなさん!! 聞いてください!」
僕は精一杯声を張り上げた。僕はほとんど叫び声に近い声をあげて、イェルグとヤンのところまで急いだ。
「彼らは、本当は死刑にするに値しない人間です!」
僕の声はちゃんと届いているようで、国民たちはざわめき出した。
僕を止めようとする騎士たちは、グランが堰き止めてくれている。一刻も早く、真実を国民に伝えなくてはならない。
「僕はアスムベルク伯爵家次男、マリス・アスムベルクです! 彼らはアスムベルク家により奴隷にされ、過酷な毎日を過ごしていました。
今回の誘拐事件の被害者の1人は僕です!彼らは、僕の父であるエルランド・アスムベルクに奴隷の辛さを思い知らせるために僕を誘拐したのです。この話を聞いて、情状酌量の余地があるとは思いませんか!?」
僕は精一杯、肺に詰まった空気を全て出し切るくらいの大声で叫んだ。
朝日が昇るまで、しばらくずっと窓を眺めていた。空が明るくなっていくにつれ、王宮内もバタバタと騒がしくなり始める。
僕が身支度を整えていると、ルシスが部屋に入ってきた。
「おはようございます、マリス様」
「おはようございます。今日は僕も処刑を見に行きます」
「いえ、マリス様には部屋で待機していただきます」
ルシスは、紅茶を淹れてくれたり朝食の準備をしてくれたり、テキパキと朝のルーティンをこなしながら言った。
「どうして僕だけ部屋で待機なんですか?」
「マリス様の精神が不安定だからです。処刑なんてショッキングなものを見たら倒れるかもしれません」
「僕は倒れませんし、体調も良いです!」
「それでも、私にはマリス様に外出許可を出せる立場ではないのです。それでは失礼いたします」
「ちょ、ルシスさん……!」
僕の声を無視し、ルシスは30度のお辞儀をして部屋から出ていった。
(そんな……どうしよう……)
試しに部屋のドアを開けようとしたが、外鍵がかかっているようでびくともしない。
この部屋は3階にあるので、窓から脱出するのは現実的ではない。
もう1時間ほど、扉をノックして呼びかける行為を繰り返していた。諦めて、窓の外から出てしまおうか。
軟禁されているのだと自覚すると、洞窟で過ごしていた日々を思い出し涙が出そうになる。
フィオーネやルシスの言う通り、僕の心の傷はまだ少ししか癒えていないのかもしれない。
「マリス!」
扉が勢いよく開いて、グランが僕の部屋に飛び込んで来た。
「ぐ、グラン……!? どうして……」
そのままグランは、僕を抱きしめて赤子をあやすように背中をトントンと叩いた。
「よしよしマリス、よく耐えたな」
「う、ごめん……」
「俺の方こそごめんな。来るのが遅くなった。事情は終わってから話すから、とりあえず今は……第二王子の俺が許可する。マリスは処刑を止めてくれ!」
グランと共に部屋を出る。最初は小走り程度だったが、階段を降りるにつれ全力疾走していた。
なんとか処刑場まで辿り着いた。処刑場は王宮の中ではなく外に設置されている。
血が飛び散るのを防ぐためか、地面には大きなシートが敷かれていた。
イェルグとヤンは膝立ちにされ、腕を左右に伸ばされて首を垂れている状態だ。
首を切り落とすつもりなのだろうか。想像するだけで背筋がゾッとし、吐き気がする。
「マリス、大丈夫か……?」
「うん、なんとか」
グランの声を聞き、少しだけ気持ちが落ち着く。
ぐるりと辺りを見渡せば、思っていたよりも多い数の人々が処刑場を囲っていた。
「みなさん!! 聞いてください!」
僕は精一杯声を張り上げた。僕はほとんど叫び声に近い声をあげて、イェルグとヤンのところまで急いだ。
「彼らは、本当は死刑にするに値しない人間です!」
僕の声はちゃんと届いているようで、国民たちはざわめき出した。
僕を止めようとする騎士たちは、グランが堰き止めてくれている。一刻も早く、真実を国民に伝えなくてはならない。
「僕はアスムベルク伯爵家次男、マリス・アスムベルクです! 彼らはアスムベルク家により奴隷にされ、過酷な毎日を過ごしていました。
今回の誘拐事件の被害者の1人は僕です!彼らは、僕の父であるエルランド・アスムベルクに奴隷の辛さを思い知らせるために僕を誘拐したのです。この話を聞いて、情状酌量の余地があるとは思いませんか!?」
僕は精一杯、肺に詰まった空気を全て出し切るくらいの大声で叫んだ。
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